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「認知症の人への対応方法が分からない」「認知症の症状について知りたい」と考えておられるかもしれません。認知症は、認知機能や記憶力が低下してしまう病気です。進行すると、「今日が何月何日か分からない」「ご飯を食べたばかりなのに忘れてしまう」などの症状が見られることがあります。そんな時に「しっかりして!」「さっき食べたでしょう!」などと対応し相手のプライドを傷つけてしまうと、認知症を悪化させてしまうこともあるのです。
適切に対応できれば症状が安定し、穏やかに過ごすことも期待できます。そこで今回は、認知症の接し方のポイントについて解説します。
目次
認知症の人は、認知機能や記憶力が低下しているため、言葉や周囲の状況をうまく理解できません。約束を忘れてしまったり、できていたことが急にできなくなったりすることもあります。
認知症は、脳の病気や障害などが原因で、日常生活に支障が出てくる病気です。本人は、「自分の思いを伝えられない」「つい最近まで普通にしていたことが、できなくなっていく」などの不安や混乱、いら立ちを抱えて生活しています。
認知症の人と接する際に、最も大切なのは「信頼関係」です。相手を尊重し、気持ちに寄り添い接することで、「お互いに何でも言い合える」信頼関係を築けます。
認知症は、認知機能や記憶力が低下してしまう病気です。これまでより動作に時間が掛かる場合があります。決して急かさないようにしましょう。また、もの忘れがあっても、感情やプライドは今までと同じように残っています。ストレスを与えないように、相手を尊重する態度で接することが重要です。ここでは、認知症の方への接し方のポイントを4つ紹介します。
認知症の方と接する時は、相手のペースに合わせることを心掛けましょう。認知症の方は、考えたり情報を処理したりする力が低下しており、時間を必要とするからです。
以下は、相手のペースに合わせる具体的な接し方です。
・時間が掛かっても、急かさない
・間違いに気づいても相手を否定せず「そうなんだね」と受け入れる
・話した内容を理解しているか確認する
認知症の方は情報を処理するのに時間が必要です。相手のペースに合わせて接しましょう。
認知症の方は記憶力が低下するため、もの忘れの症状がよくみられます。しかし、できごと自体を忘れても「うれしい、悲しい」などの感情は残ると考えられています。
良い感情を持ってもらえば、認知症の人は穏やかに過ごせるのです。反対に嫌な気持ちになると、機嫌の悪い状態が続き、対応が大変になります。
以下は、良い感情を残すための接し方です。
・相手をほめる
・感謝を伝える、お礼を言う
・尊重する など
できごとやストーリー自体を忘れても、感情は残ります。こちらが相手を尊重し接することで認知症の人も穏やかに過ごせるのです。
認知症になったとしても、プライドは残っています。人は誰でも、尊重されたい気持ちを持ち続けているのです。認知症の方は、できないことが増えてきて不安な気持ちを抱えています。そんな時に、周囲の人から大きな声で叱られたらどんな気持ちになるでしょうか。
その場面では、怒ったり言い訳をするなどの反応がみられます。しかし後で激しく落ち込み、さらに自信を無くしてしまうことも多いのです。その結果、症状は進行し悪化するかもしれません。
以下は、プライドを傷つけないための接し方です。
・否定しない
・強要しない
・急かさない
嫌な感情は、本人の中に残ります。穏やかに過ごしてもらうためにも、プライドを傷つけないように接することが大切なのです。
認知症の人は、「自分が自分でない」ような感覚を持ちストレスを抱えています。さらに周囲からストレスを加えられると、症状が悪化してしまう可能性もあります。感情が不安定になり、何でもないことに怒ったり暴力を振るったりする恐れもあります。
以下は、ストレスを与えないための接し方です。
・非難をしない
・無視をしない
・叱らない
症状が悪化すると、対応がさらに大変になります。ストレスを与えないように接することが重要です。
認知症の方は、理解力や判断力が低下している場合があります。コミュニケーションをとる場合には、大きな声でゆっくりと話します。また長い文章で話すことや話題を頻繁に変えるのは、なるべく避けましょう。
家族全員で共通の言葉を使うなど、本人の負担を軽くすると会話をしやすくなります。ここでは、認知症の方への話し方のコツ3つを紹介します。
高齢者は、聴力が低下している場合があります。少し聞こえにくいと感じたら、大きな声でゆっくりと話しかけましょう。また高齢者は高音が聞き取りにくい傾向にあるので、少し低い声で話すとよいでしょう。
認知症の方は、言葉を理解するために時間が必要です。うなずきなど、理解しているのを確認してから次の言葉を話します。大きな声でゆっくりと話しかけると、コミュニケーションをとりやすくなるでしょう。
認知症の方と話す際には、長い言葉や複雑な言い回しは避けましょう。理解力が低下しているため、分かりやすい表現や短い言葉を使うと理解してもらいやすくなります。
また、話題を頻繁に変えるのも相手に負担を掛けてしまいます。ひとつの話題について、ゆっくりと話すことが有効です。分かりやすい表現を使い、相手が理解しているかを確認しながら話しましょう。
物の呼び方について、家族全員で共通の言葉を使いましょう。認知症の症状には判断力や記憶力の低下があります。色んな呼び方をされると、何のことか理解できない場合があるのです。
例えば、「ズボン」や「パンツ」など、同じものを違う名前で呼ぶのは避けた方が良いでしょう。また症状が進行した場合、本人への呼び方も統一する必要があるかもしれません。「おふくろ」「ママ」「花子」など、別々の名前で呼ばれると認識されにくいからです。「お母さん」など同じ言葉に統一した方が、本人の負担は少なくて済みます。
認知症で出現する症状は人それぞれです。誤った対応をすると本人は混乱し、さらなる症状の悪化を招いてしまいます。ここでは適切な対応方法を、症状別に紹介していきます。
財布などをしまい込んで見つけられず、「誰かに盗まれた!」などの妄想が起きることがあります。対応のポイントは、「話を受け入れて一緒に探し、本人に見つけてもらうこと」です。
まずは相手の話をじっくり聞きます。「誰も盗んでいない!」などと否定してはいけません。不安な気持ちを受け止めた上で、一緒に財布を探してあげましょう。「この人は頼りになる」と安心感を与えることにもつながります。
そして、本人に財布を見つけてもらうことが重要です。家族が見つけると、「あなたが盗んでいたのか」とあらぬ疑いを掛けられる可能性があります。
今日の日付が分からなくなるのは、認知症の「見当識障害」と呼ばれる症状です。日付を伝えても忘れてしまい、同じ質問をする場合もあります。
対応のポイントは、分かりやすいカレンダーを設置することです。効果のあるカレンダーには、アナログとデジタルの2種類があります。
アナログのものでは、日めくりカレンダーが有効です。朝起きたら、めくることを日課にするとよいでしょう。ただし、認知症が進行すると、カレンダーをめくったかどうかが分からなくなる場合もあります。
その点デジタルのカレンダーは、日付が自動で更新されるので、めくる必要はありません。日付に加えて、曜日や気温、湿度が表示されるものも販売されています。
症状の進行に合わせてカレンダーを利用しましょう。
認知症の人には、尿意がなくてもトイレに行こうとするケースがみられます。原因の一つには、「トイレに行ったことを忘れてしまっている」ことが考えられます。本人は「おしっこを漏らしてしまったら困る」と不安に感じ、何度もトイレに行くのです。
対応のポイントは、以下3つです。
1. 夕方以降は水分を控える
2. 膀胱トレーニングをする
3. 内服治療をする
コーヒーやお茶、アルコールには利尿作用があるので、夜間の頻尿の原因となります。夕方以降に飲むのは避けた方がよいでしょう。また、おしっこに行きたくなったら少し我慢する「膀胱トレーニング」も有効です。我慢する時間を徐々に時間を伸ばしていくと、効果が現れます。
認知症の人にとって、水分制限や膀胱トレーニングは難しいかもしれません。そんな時は、主治医へ相談されることをお勧めします。膀胱の活動を抑える「抗コリン薬」などの服薬で対応できる場合もあります。
家族間でも、誰か分からなくなってしまうこともあります。認知症の見当識障害と呼ばれる症状です。介護施設に入所しているなど、久しぶりに会った時にみられることが多くあります。本当は息子なのに、本人の弟と間違われるといったケースもあります。
対応のポイントは、以下の3つです。
1. 穏やかに話す
2. 誰かと間違われても、否定しない
3. 体調などによって、また認識できることもある
認知症の人にとって、間違いを直したり、新しいことを覚えたりするのは難しいことです。まずは穏やかに話すことを心掛けましょう。本人の言うことを否定してしまうと、会話を続けることが難しくなります。相手の話を受け入れて、否定せずに話しましょう。
その日の体調によって、また思い出してくれる可能性もあります。できるだけ話を受け入れてコミュニケーションをとりましょう。
食事をしたばかりなのに、催促されることもよくあります。認知症の記憶力低下によるものです。
対応のポイントは、以下の3つです。
1. 否定しない
2. 食事を用意するフリをする
3. (それでも要求されたら)おやつなどを提供する
認知症の人に「さっき食べたでしょう!」と話しても、分かってもらえません。「遅くなってごめんなさい。お茶でも飲んで、しばらく待ってください」などと、食事を用意するフリをします。
認知症の人は、そのまま食事を要求していること自体を忘れることもあるのです。それでも食事がほしいと言われたら、おやつなどを出すのがよいでしょう。
認知症の方は、記憶力などが低下しているため、一人で外出して帰ってこられなくなることがあります。家族としては、行動を制限したり、間違いを正したりしたくなるかもしれません。
しかし、認知症の人の行動を制限することや間違いを指摘することは、本人の自尊心を傷つけてしまい、症状の悪化を招く恐れがあります。ここでは、認知症の人へしてはいけないことについて紹介します。
認知症の症状として、家族が知らない内に外出してしまうこともあります。ひとりで帰ってこられないことや、転倒してしまう可能性もあります。しかし、外に出るのが危ないからといって、認知症の人を閉じ込めるのは絶対にやめましょう。
外に出られない状況が続くと、本人は大きなストレスを感じてしまいます。無理やり外へ出ようとして、大事故につながることもあります。
どうしても外出してしまう場合は、GPSを身につける方法もあります。地方自治体によっては、行方不明に備えて顔写真を登録しておくサービスもあるので、利用を検討してみてください。
物忘れを指摘するのも控えましょう。認知症の人は記憶力が低下しているため、約束を思い出すことが難しいのです。もの忘れの症状がみられても、「なんで忘れたの?」などの言葉は絶対に使用しないでください。
認知症の人は、もの忘れがあっても感情は残ります。「叱られた」という感情が残り、その後の対応が難しくなるかもしれません。もの忘れがあっても、指摘せずに対応しましょう。
認知症の人にも、プライドは残っています。「自分のことは、自分で決定したい」という意志を持っているのです。周囲の人に何かを強要されたり、「しっかりして!」などと責められたりしては、さらに自信を無くしてしまいます。
認知症の人は記憶力や判断力が低下する恐怖や悲しさを感じています。強要や責める言葉は本人を追い込み、暴言や暴力などの症状を起こしてしまうかもしれないのです。
認知症の家族が言うことを聞いてくれないときの対処法は、まずはこちらが本人の言うことに耳を傾けることです。内容がどんなことであっても、しっかりと聞きます。相手を否定しては、信頼関係を築けません。「私は何があっても、あなたの味方だよ」と伝えることが重要です。
認知症は脳の病気であり、症状によっては暴言や暴力などがみられることもあります。その時は、かかりつけ医や最寄りの地域包括支援センターへ相談しましょう。一番いけないのは、ひとりで全てを抱え込んでしまうことです。
認知症は、治療開始が早ければ早いほど、効果が期待できると言われています。ひとりで悩まずに、医療や介護の専門家に相談しましょう。
今回は、認知症の人への接し方について解説しました。認知症の人は認知機能や記憶力が低下するため、もの忘れがあったり、できていたことができなくなったりします。
認知症になって、一番つらい思いをしているのは本人です。相手の気持ちに寄り添い、これまでと同じように尊重することで信頼関係を築けます。相手のプライドを傷つけたり行動を制限したりすると、症状を悪化させてしまうかもしれません。介護拒否や暴言・暴力につながる事例もあります。
認知症の症状は、人によって様々です。どうしても家族では対応できないケースもあります。介護をする方に余裕がなくては、認知症の方に寄り添った介護はできません。一人で介護をしようとせず、家族と協力しながら介護をする必要があります。また、介護の限界を迎える前に、専門家や専門の施設(グループホーム)などに相談をすることも重要です。
グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら、専門スタッフのケアを受ける施設です。家庭的な雰囲気の中で、自立を支援し認知症の進行を緩やかにします。24時間体制で安心して生活できる環境が整っています。入居条件は65歳以上で要支援2以上の認定を受けている方。見学や相談も随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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