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公的な介護保険の存在は知っているものの、会社勤めやパートで働いていると、介護サービスをじっくりと調べる時間がない人は多いと思います。そんな忙しい日々の中で、テレビCMや生命保険会社のダイレクトメールなどで、民間の介護保険に興味を持つ人は増えています。しかし、公的な介護保険があるのに、さらに民間の介護保険まで契約する必要があるのでしょうか。
そこで本記事では「民間の介護保険」について、以下を中心にご紹介します。
今回の記事では、多くの人が悩みがちな保険会社の選びかたから、保障期間・給付条件などを中心に解説します。
目次
民間の介護保険は、生命保険や自動車保険と同じように、保険会社と任意で契約する保険です。
社会保険や自賠責保険のように加入義務がある保険はあるものの、最低限の保障だったりカバーできない事象があったり万全とはいえません。介護保険も公的な保険制度はありますが、各家庭の事情や要介護状態により、制度の枠内で必要なサービスを賄えない可能性はあります。
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、主な介護者は50代以上が90%以上を占めており、介護サービスの知識不足・準備不足のまま親の介護をしなければならない家庭が増えています。公的な介護サービスで足りない部分を補うために、仕事に影響が出たり体力的な問題があったりします。そのため、不測の事態に備えられるものが民間の介護保険です。
民間の介護保険は、各保険会社が提供する保険商品を選んで契約します。一方で、公的な介護保険の仕組みは全国共通ですが、市町村ごとに独自の介護サービスが存在します。
公的介護保険は主に65歳以上の要介護者・要支援者に対して現物給付(介護サービスそのものを給付)ですが、民間の介護保険は65歳未満でも契約できます。また、現金給付のため生活費など幅広く活用できます。
項目 | 民間介護保険 | 公的介護保険 |
加入 | 任意で加入 | 40歳以上は強制加入 |
給付対象者 | 保険契約者 | 【第1号被保険者】 65歳以上で要支援・要介護に認定された人 【第2号被保険者】 40歳以上64歳未満で特定疾患(末期がん・難病など)により介護が必要な人 |
給付方法 | 現金給付 | 現物給付 |
給付額 | 保険商品による | 要支援度・要介護度による |
保険料(設定・徴収方法) | ・保険料の設定:有期払いと終身払いの選択ができる ・徴収方法:振り込み払いなど | 【第1号被保険者】 ・保険料の設定:市町村ごと ・徴収方法:主に年金から差し引かれる 【第2号被保険者】 ・保険料の設定 健康保険加入者:給料や所得に応じて計算(介護保険料率×標準月額報酬) 国民健康保険加入者:市町村により計算方法が異なる ・徴収方法 加入している公的医療保険の保険料と一括徴収する |
保険料支払い免除 | 保険商品により異なる | なし |
手続き・支払い先 | 保険会社 | 市町村 |
親の介護は、先の見えない介護費用の支払いから、不安に思う人は少なくありません。そのため、将来の備えとして民間の介護保険を契約する人が増えています。ここでは、民間の介護保険に加入したときのメリットとデメリットを紹介します。
民間の介護保険に加入したときの一番のメリットは安心感です。ケガや病気に備えて民間の医療保険に加入するのと同じく、民間の介護保険を契約すると、親の介護による自己資金の持ち出しを大幅に減らせます。
保険料の支払いはあるものの、少ない費用で大きな安心につながります。
公益財団法人生命保険文化センターが発表している2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護の一時的な費用の合計額が69.2万円、毎月の費用が7.8万円、平均介護日数は54.5カ月(4年7カ月)です。
毎月の費用と平均日数をかけて一時費用を足すと、約500万円が必要です。人生100年時代の日本では、今後さらに介護期間は伸びるでしょう。そうした莫大な費用を賄える民間の介護保険は、介護者の精神的な安心にもつながります。
公的な介護保険は介護サービス自体を現物給付される一方で、民間の介護保険は現金給付のため、広い用途で活用できます。
さきほど介護の一時費用は約62万円とお伝えしましたが、自宅の改修費や介護用ベッドの購入費などの介護用品だけではなく、おむつ代や通院費にも充てられます。
保険会社が定める条件を満たせば、第2号被保険者ではない40歳以下や、要介護認定を受けていない65歳以上も給付対象になります。
例えば病気以外が原因(交通災害・不慮の事故など)で介護が必要になるかもしれません。
民間の介護保険は保険会社ごとに商品に違いがあるため、各家庭に適したサービスを選んでください。
民間の介護保険は、生命保険などと同じく審査が必要です。加入条件を満たせない場合や、給付条件によっては保障を受けられない可能性があります。
経済的な負担があるため、保障内容と保険料のバランスが大切です。格安な掛け捨て型や、割高なものの貯蓄性のある保険商品があるため、長期的な視点で選んでください。
保障は契約の範囲内のため、設定された条件を満たさないと給付は受けられません。契約条件によっては、要介護認定を受けたとしても給付対象にならない場合もあります。
保険会社の商品ごとに特徴があるため、保障内容と給付条件をよく確認してください。
民間の介護保険を検討する人は、知り合いや同僚などから親の介護の話を見聞きしている、50代から60代の人が多いようです。ここまで「介護は身近な問題」「大きな費用負担がある」などの内容をお伝えしてきたことを踏まえて、民間の介護保険が必要な人と不要な人をまとめました。
公的な介護保険を受けつつ、自費でも介護サービスを受けられる人は、民間の介護保険は不要です。
具体的には平均的な介護費用である約500万円の貯蓄がある場合や、親の年金だけでヘルパーや在宅介護を不足なく受けられる人です。
また、在宅介護を受けている親に、ヘルパーが来ない日も問題なく排泄・入浴などの介護を家族ができるのであれば、民間の介護保険は必要ないかもしれません。
民間の介護保険が必要な人は、主に以下が当てはまります。
介護は先の見通しが立たないため、民間の介護保険に加入するとコスト面の不安はなくなります。
親の介護に対して、おぼろげな想像しかつかない人や、すでに介護が始まっているものの相談相手がいない人は、コミュニティサービス「介護の広場」をチェックしてみてください。介護の疑問や困りごとの投稿に対して、介護経験者や専門家が回答してくれるので、孤独に悩む必要がなくなります。
ここでは多種多様な保険会社と、販売している商品を解説します。民間の介護保険は、自分で保険会社を選んで契約しなければなりません。販売員から不要なサービスを付けられたり、勧められるがまま契約をしたりしないように、保険会社を見極めましょう。
保険会社の選びかたで大事なポイントは「信頼性」です。
健全な保険会社かつ知識が豊富な担当者だと、安心して商品を選べるでしょう。
逆に避けるべき保険会社は以下の通りです。
1社だけではサービスの良し悪しが分かりにくいため、相見積もりを取って価格やサービスがかけ離れていないか確認すると、保険会社の信頼性が分かります。
介護保険は給付条件を満たすと特約も付いてくる商品など、保険会社ごとに特色があります。
たとえば自動車保険は、車両保険の有無やロードサービスの特約など、同じ「車の保険」でも「保険の中身」は保険会社や商品の選びかたによって異なります。そのため、保険期間や給付条件を確認しないと、保険がムダになるかもしれません。
保険期間は一生涯保障が続く「終身型」と、契約から10年または80歳までなどの一定期間(一定年齢)まで保障期間がある「定期型」があります。
終身型は一定の保険料で一生涯保障が続きますが、保険内容を見直すときに以前より保険料が高くなる可能性があります。
定期型は終身型より割安なものの、更新ごとに保険料は高くなる傾向です。
終身型と定期型を選ぶポイントは「65歳を超えるかどうか」です。
65歳を超えるのであれば、一定の保険料の「終身型」をおすすめします。保険加入後に保障内容の変更を検討しても、年齢や健康状態で審査が通らないケースがあるため、最初の保険契約で必要な内容を盛り込んだほうがいいからです。
65歳以下であれば保険の内容を見直しやすい「定期型」がおすすめです。健康状態や介護状態が変わる可能性があるため、満期ごとに最適な保険を見直せます。
給付金の受け取り方法は以下の3種類があります。
「介護年金」は年に1回、定期的に受給できるタイプで、長期間の介護生活を想定した人に向いています。毎月の在宅介護のサービス費や介護施設の入所費用に充てやすいのもポイントです。
「介護一時金」は給付条件を満たしたときに、まとまった保険金を受け取れます。介護の平均的な一時費用である69.2万円を民間の介護保険でカバーしつつ、公的な介護保険で毎月の介護費用に対応できます。一方で、介護年金タイプと違い給付は1度だけなので、長期間の保障はありません。
「併用型」は一時金を受け取りつつ、定期的な給付を受けられるタイプで、高額な初期費用にも継続的な出費にも備えられます。しかし「介護年金タイプ」と「介護一時金タイプ」のいいところ取りのため、保険料は高い傾向にあります。
どのタイプも一長一短があるため、毎月の保険料と想定される介護費用を想像しながら、受給方法を検討してください。
保険商品には貯蓄型と掛け捨て型があり、積立の有無を選べます。
貯蓄型は死亡保険などがセットされており、要介護状態以外でも幅広く保険金が受け取れます。ほかにも解約時に払戻金が設定されており、支払っていた保険料を相殺できるためムダがありません。しかし、貯蓄性があるため、掛け捨て型と比較して保険料は割高です。
掛け捨て型は貯蓄型に比べて保険料を抑えられますが、死亡保険などが含まれないため、シンプルに「介護のみ」に特化した保険になります。解約払戻金が設定されていないため、元気高齢者で給付条件を満たさなかった場合、払い込んだ保険料は戻ってきません。
医療保険に加入していない人が、保障範囲が幅広くなる貯蓄型を選択したり、高くなった保険料を調整するために掛け捨て型を選択したりできます。
給付条件は2種類あり、公的介護保険の要介護認定と連動して給付される「公的介護保険連動型」と、保険会社ごとに給付条件を定める「独自基準型」があります。
公的介護保険連動型は、市町村から要介護認定を受けたあと、介護度に応じた保険金が受け取れます。給付条件が介護度ごとで分かりやすいのがメリットといえますが、要介護認定されるまでに一定期間が必要なため、すぐに保険金が支払われない場合があります。
独自基準型は、保険会社が各々に給付基準や条件を設定しているため、もし公的な介護保険を受けられなくても保障を受けられます。裏を返すと「要介護認定=給付基準を満たしたとは限らない」ため、給付条件をよく把握しておいてください。
保険商品に付加できる特約は2種類あります。
1つめが「認知症特約」です。認知症と診断され要介護認定を受けると、一時金を受け取れる特約です。
2つめに「保険料払込免除特約」があり、要介護認定や保険会社が定めた基準を満たすと、保険料の支払いを免除される特約があります。
どちらの特約も保険料の上乗せは必要ですが、認知症の心配や介護状態の不安のある人に、より手厚い保険になるでしょう。
今回の記事では、民間の介護保険のメリットや保険会社の選びかたなど、幅広くお伝えしてきました。
忙しく周りに気を回せない日常を過ごしていると、親はいつの間にか年齢を重ねています。数年後を見据えて、親子で介護の話し合いをしてきた人は、おそらく少数派だと思います。親の将来に漠然とした不安がある人もいるでしょう。すでに介護が始まっている人は、介護費用や必要な介護サービスが分からず悩んでいると思います。今後、公的な介護保険だけではカバーできないかもしれません。
そこで、民間の介護保険に加入しておくと、介護面・費用面で大きな安心につながり、手厚い介護は親孝行にもなります。今回紹介した記事を参考に、民間の介護保険を探すヒントにしてください。
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