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家族が介護を必要とする状態になったが、介護サービスについてよくわからない……という方は多いのではないでしょうか。最初は自宅での介護を検討するために、在宅介護サービスの利用から始めるのが良いでしょう。
そこで今回は、在宅介護サービスの種類や、メリット・デメリットなどについて解説します。また本記事では、在宅介護サービスの利用手順も紹介しているので、家族に合ったサービスを検討しながら、実際に利用する流れまで参考にしてみてください。
目次
在宅介護とは、自宅で家族や介護の専門職などから介護サービスを受けながら生活することです。在宅介護とは逆に、老人ホームのような施設で介護を受けながら生活することを施設介護と言います。
在宅介護は、介護を受ける本人にとっては住み慣れた場所で生活できる魅力がある反面、一緒に暮らす家族にとっては、介護負担が大きくなりやすい特徴があります。
平均寿命が伸びている現代において、介護の長期化は避けられないでしょう。そのため、安定した在宅介護を続けるためには、適切な介護サービスを選択し、本人と家族双方の負担が増えすぎない工夫が必要と言えるでしょう。
在宅介護で受けられるサービスの種類には5つあります。
それぞれのサービスには、利用できる内容や時間が異なります。各サービスについて理解を深め、介護者の負担を考えた上で要介護者に合ったサービスを利用しましょう。
訪問型介護サービスは、「訪問介護サービス」「訪問看護サービス」「訪問リハビリテーションサービス」「訪問入浴サービス」の4種類あります。
訪問サービスは、「身体介護」と「生活援助」に分かれ、自宅にそれぞれの専門家がきてサービスをしてくれます。身体介護は、入浴介助や通院介助がほとんどです。生活援助は、掃除や洗濯、料理などで、同居家族がいる場合には利用が出来ません。
通所型介護サービスは、「デイサービス」「デイケア」の2種類あります。
デイサービスは、事業者によってサービス内容が異なりますが、一般的な施設では、利用者がチームワークでちぎり絵の作品を仕上げる等、残存能力を生かす工夫がされています。その他にも、一人で編み物を楽しんだり、数人で将棋やマージャンなどの娯楽を数人で楽しんだり、独自の特色あるデイサービスも沢山あります。
デイケアは、理学療法士が指導に当たり、時間内でリハビリを受けることが出来ます。
宿泊型介護サービスは、「短期入所生活介護(ショートステイ)」と「短期入所療養介護(医療型ショートステイ)の2種類あります。
短期入所生活介護は、各施設に併設されている福祉系のショートステイです。1泊2日から月30日まで利用できます。入所中は、食事や排せつ、入浴などの日常生活の世話やレクレーションが受けられます。
短期入所療養介護は、介護老人保健施設や療養病床、診療所に併設されている医療系のショートステイです。利用日数は短期入所生活介護と同じですが、看護やリハビリテーション等の医療的なケアを受けられるのが特徴です。
訪問・通所・宿泊を組み合わせた介護サービスは、「小規模多機能型居宅介護」と「看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)」の2種類あります。
小規模多機能型居宅介護は、住み慣れた地域にある小規模な施設に通所することを中心に、状況に応じて自宅に訪問を受けたり、ショートステイを受けたりすることが出来ます。
看護小規模多機能型居宅介護は、訪問看護を組み合わせたサービスで、医療的ニーズが高い在宅療養者が対象になります。要介護1~要介護5の人が対象となっています。
生活環境をハード面で整えるサービスには、「福祉用具貸与」「特定福祉用具販売」「住宅改修」があります。
「福祉用具貸与」とは、在宅介護を行う上で必要な福祉用具をレンタルして利用することができる月額制のサービスです。対象となる品目は以下の通りです。
※は原則要介護2以上の人がレンタル可能
購入しようとすると高額な福祉用具を利用することができるだけでなく、心身状態の変化や生活状況によって今使っている用具が合わなくなった場合は必要に応じて商品を変更することが出来る点が最大の利点です。
「特定福祉用具販売」とは、在宅介護を行う上で必要な福祉用具のうち直接体に触れるためレンタルに馴染まないものについて、年間10万円を上限に購入費の7~9割をキャッシュバックする制度です。
対象となる品目は以下の通りです。
購入時はいったん全額を支払う必要があるものの、レンタルの対象になっていない高価な福祉用具を実質1~3割の料金で購入することができる点が魅力です。特定福祉用具販売では年間10万円分までキャッシュバックを受けることができますが、壊れた場合を除いて同じ品目の商品を買っても給付の対象にならないこと、使用後の返品はできないこと、都道府県から指定を受けている店舗で購入した物しか対象にならないことには注意が必要です。
「住宅改修」とは、自宅内をバリアフリーにするための工事を行った場合に1人20万円分までを上限に費用の7~9割をキャッシュバックする制度です。対象となる工事は、以下のように定められています。
福祉用具のレンタルや購入によっても解消できない生活環境の不都合を改善することが出来ることが住宅改修の魅力です。例えば「車いすのままでも家屋内に進入できるよう、スロープを作る」「下肢筋力が低下して和式便器を使えなくなったので、洋式便器に取り換える」といった工事が対象となります。
20万円の上限に達するまでは何度でも利用することができ、一旦上限まで利用した人でも引っ越した場合や前回着工日から要介護度が3段階以上上がった場合は20万円の枠が復活します。基本的には「特定福祉用具販売」と同様にいったん全額を支払った後にキャッシュバックされる仕組みですが、市町村によっては初めから1~3割の自己負担分のみの支払いで工事できる仕組みもあります。
なお「特定福祉用具販売」とは異なり、どの施工業者が工事をしても支給の対象になります。ただしキャッシュバックを受けるための手続きが複雑で、手順を誤ると対象から外れてしまう恐れがあるだけでなく、工事内容についても介護に関する一定程度の知識が必要になることから、専門業者を地域包括支援センターや担当のケアマネジャーから紹介してもらった方が安全です。
関連記事:訪問介護で介護ヘルパーに頼めること、頼めないこと|掃除・洗濯・身だしなみ編
在宅介護には、住み慣れた自宅で生活できることや費用が抑えられるなどのメリットがある反面、冒頭でも触れたように家族の介護負担が大きくなるといったデメリットもあります。
ここでは、在宅介護のメリットとデメリットについて詳しく解説しているので、サービスを選択する際の参考にしてみてください。
在宅介護の最大のメリットは、介護を受ける本人が「住み慣れた自宅で暮らすことができること」です。親しい家族と一緒に生活ができ、住み慣れた地域で過ごせる環境は、介護を受ける本人の精神的な安定につながります。また、介護をする家族にとっても、介護を受ける本人が近くにいることで安心して過ごせます。「最期までそばにいてあげたい」という家族の思いを実現できることは、在宅介護の大きなメリットと言えるでしょう。
施設に入所して介護を受けるのには多額の費用が掛かります。公益財団法人生命保険文化センターが実施した「2021年度 生命保険に関する全国実態調査」によれば、介護を行った場所別の介護費用を比較すると施設入所者の平均が12.2万円/月だったのに対し、在宅介護の場合は4.8万円/月に抑えられていたという結果でした。このことから、在宅介護は施設入所と比べて費用を抑えることができる点がメリットであることが分かります。
在宅介護は家族の介護と介護サービスを組み合わせて、介護を受ける本人の生活を支えます。そのため、必要な介護サービスだけを選択できるというメリットがあります。1日を通じて生活全般を介護してくれる施設介護よりも、自由度の高い生活が可能です。また不要なサービスを選択しなくていいため、前述のとおり費用を抑えられる効果も期待できるでしょう。
在宅介護は家族の支えがあってこそ実現可能なため、家族の負担が大きくなるというデメリットがあります。食事や排泄、入浴などの身体介助による体力的負担、介助に時間を取られ自分の時間を確保できない時間的負担、終わりの見えない介護に対する精神的負担など、さまざまな負担が生じます。だからこそ、適切な介護サービスを選択し、家族の負担を軽減することが重要になってくるでしょう。
在宅介護は施設介護とは違い、常に専門のスタッフがいるわけではありません。そのため、緊急時に適切に対応できない可能性があります。急な体調不良や転倒による骨折など、緊急事態が家族負担のさらなる増加にもつながります。
最近では「老老介護」という言葉のとおり、介護をする家族の高齢化も問題になっているため、緊急事態は家族を受ける本人だけの問題ではありません。在宅介護サービスでは、24時間体制で対応してくれるサービスもあるため、緊急事態に備えて事前に調べておきましょう。
在宅介護サービスを利用するためには、まず要介護(要支援)の認定を受ける必要があります。認定の申請は、住民票がある市町村の介護保険担当窓口にて行います。自分で窓口に行くことが難しい場合や手続きに自信がない場合は、最寄りの地域包括支援センターに相談してみましょう。介護保険を必要とする理由や生活状況の聞き取りを行い、本人に代わって代行申請をしてもらうことができます。
申請が受理されたら、次は「認定調査」です。市町村役場に属する認定調査員が自宅を訪問し、身体の状態や日頃の生活状況・認知症状の有無など全74項目について確認します。その後市町村役場では、申請時に申告したかかりつけ医に対しても介護に関する意見を記した「主治医意見書」の作成を依頼します。
「認定調査」と「主治医意見書」が揃った時点で、市町村は「認定審査会」を開いて申請者が【非該当(自立)】【要支援1~2】【要介護1~5】のどれに該当するかを審査するという流れになっています。
認定結果に応じ、要支援2までの人は居住地を担当する地域包括支援センターと、要介護1以上の人は任意の居宅介護支援事業所と契約を交わします。これにより、担当のケアマネジャーが決まります。
相談しながらケアマネージャーがケアプランを作成してサービス担当者会議を開催し、利用するサービス提要事業所との契約が済むと、ようやくサービスの利用開始となります。
在宅介護が限界と感じるタイミングは人それぞれです。認知症がなくても身体介護の割合が高く要介護者との性格が合わなければストレスを感じる場面が増えますし、身体介護が不要な場合でも認知症の症状がひどく対応が困難な場合は、介護を苦痛に感じることが多くなるでしょう。
ひとつの目安となるのが、「要介護3と認定された場合」です。なぜなら、厚生労働省が発表した「2019年 国民生活基礎調査」にて、要介護3の認定を受けている人のうち50.1%が1日の半分以上を介護に割かなければならない状況になっているからです。
この章では、在宅介護が限界と感じたときはどうすればいいのか、具体的な対策を4つご紹介していきます。
まず、在宅介護に困ったときは他の家族やケアマネジャーなどに相談してみましょう。同居する他の家族や近くの親戚、近隣住民から協力を得られれば介護の負担が軽減される可能性があります。また、ケアマネジャーは介護保険サービスの事業所以外にも介護保険外の福祉サービスやボランティアなどの社会資源に関する情報を多数持っています。思いもよらない方法で問題が解決することもあるかもしれません。
家族やケアマネジャー等に相談するときは、漠然と困っていると訴えるのではなく、何がどのように困っているのかを明確に説明することが重要です。「○○するときにこういう問題が起きている」「□□が改善できれば、本人も楽になると思っている」「誰かから△△を手伝ってもらえれば自分は××ができる」など具体的に言葉にして説明するようにしましょう。
介護サービスを利用しているのにうまくいかない、介護負担が多いと感じる場合は、ケアプランが現状に即した内容になっていないのかもしれません。ケアプランを作成している担当のケアマネジャーに相談し、ケアプランの内容を見直してもらうことを検討しましょう。
ケアプランを見直してもらう時は単に「デイサービスを増やしてください」等と依頼するのではなく、なぜデイサービスを増やしてもらいたいのか、どのような状況を解決したいのかといった理由も含めて説明するようにしましょう。ケアプランがうまくいっていない原因を探るヒントや、よりよいプランへとつながる根拠となるからです。
厚生労働省では、介護離職を防止するために介護休業制度や介護休業中に賃金の67%を給付する介護休業給付金の制度の利用を推進しています。在宅介護に行き詰ったときは退職を考えるのではなく、まずは職場の上司や労務担当者に相談して職場の介護制度を活用することを検討しましょう。
職場の介介護休業制度を活用すれば介護のためにまとまった期間の休みを取ることができ、元々の給料に応じた保証を給付金として受け取ることも可能です。ただし法定の介護休業は対象となる家族1人に対し3回まで、合計93日間までという上限があります。数日間の休みで間に合うならば有給休暇で対応するなど、状況に応じて臨機応変に制度を活用すると効果的です。
介護施設は最後の手段です。まずは訪問系・通所系・短期入所などの在宅サービスを利用し、それでも在宅での介護は困難だと判断した場合に介護施設の利用を検討しましょう。費用が安い特別養護老人ホームを始めとして、介護老人保健施設・介護医療院・グループホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など入所系の介護施設は多岐に渡ります。本人の状態や目的に応じて選定することはもちろんですが、何よりも入所に関する本人の意思を重視する必要があります。
施設の検討は本人や担当のケアマネジャーとよく相談し、見学や体験入所などを行って慎重に行いましょう。
在宅介護で悩んでいる方にとって、介護施設への入居は大切な選択肢です。愛する家族を自宅で介護したいという思いは自然なものですが、介護の負担が大きくなると、心身ともに疲れてしまうこともあります。介護施設では、専門のスタッフが24時間体制で利用者をサポートし、健康管理や日常生活の援助を行います。これにより、家族は安心して自分の生活を取り戻すことができ、利用者も安全で快適な環境での生活を楽しむことができます。
施設では他の入居者との交流を通じて新しい友情を築くことができ、孤独感を和らげることが可能です。また、施設内では様々なアクティビティやイベントが開催され、利用者の生活に楽しみや刺激を与えてくれます。大切なのは、利用者が自分らしく過ごせる場所を見つけることです。介護施設の入居は、利用者とその家族に新たな安心と希望をもたらす一歩となります。ぜひ、前向きにご検討ください。
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