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認知症高齢者による徘徊で、身体的・精神的な負担を強いられているご家族は少なくありません。徘徊によってご本人がケガをしたり、事故に遭ったり、また他の人へ迷惑をかけたり、と心配は尽きません。
この記事では、認知症高齢者の徘徊が起きないように未然に防ぐ方法や、実際に徘徊が起きた際の対処法、行方不明になった場合にしなければならないことを解説します。
目次
徘徊とは、認知症の周辺症状により現れる症状の1つで、「あてもなく、うろうろと歩きまわること」です。
認知症の方の徘徊は、記憶障害や時間・場所・人間関係の感覚が失われ、自分の状況を把握できなくなることで起こります。たとえ家の中でも、行き先がわからなくなり、また探しているうちに目的を忘れてしまうことがあります。徘徊はいつ起こるかわからないため、介護者にとって大きな不安の要因です。特に屋外での徘徊は、事故や熱中症、低体温症、転倒といった危険があり、命に関わる可能性があるため、多くの介護者が頭を悩ませています。
警察庁は「令和3年における行方不明者の状況」において、2021年の1年間における行方不明者は約7.9万人であり、そのうち認知症の疑いのある行方不明者は1.7万人だったと発表しました。割合として約22%を占め、認知症高齢者の徘徊が行方不明となっています。
認知症の徘徊には、本人にとっての理由や意味があります。例えば、自宅にいるにもかかわらず「家に帰りたい」と言って外出することがあります。目的があっても、道に迷ってしまうことがあり、その結果、周囲からは「徘徊」と見なされてしまうのです。
徘徊の理由を探ると、本人なりの背景があり、その結果として外出という行動に至ることがわかります。しかし、家族にとっては大きな悩みの種であることは変わりません。
徘徊の根本的な原因は、記憶障害、見当識障害、その他の要因から起きるものとされています。以下、それぞれの具体的な症状を説明します。
ここからは、事例を取り上げて詳しく見ていきましょう。
道に迷ってしまう症状は、場所の見当識障害によって引き起こされる症状です。自宅から外出したあとに帰り道が分からなくなって道に迷ってしまいます。家を探して歩き回っているうちに更に方向感覚も見失って混乱し、結果として徘徊に至るというケースです。
認知症の方が、そわそわして落ち着きがなくなり「家に帰らせてもらいます」と帰宅行動を取る場合があります。この症状は、「帰宅願望」といいます。記憶障害によって「なぜここにいるのか」を忘れてしまったり、見当識障害によって「今いる場所がどこなのか」が分からなくなったりして引き起こされます。
このような帰宅行動は、本人の自宅にいても出る場合があります。本人の自宅、自室にいたとしても、「今いるのが自宅だ」という理解ができず「家に帰る」との想いに至ってしまい、周囲を困らせてしまう結果となるのです。
なぜここにいるのか忘れてしまい、不安な気持ちになって家に帰ろうとした結果、徘徊に結びついてしまうケースです。この症状は、記憶障害によって引き起こされます。自分が今どこにいるのか、これまでの経緯や、前後関係を理解できない(思い出せない)ため、このような症状が出てしまいます。
長らく習慣化していた過去の出来事を、再現してしまい、結果として徘徊に至ってしまうケースです。例えば、若い頃に専業主婦だった女性が、夕方前になると「主人の夕食を準備しないといけない」とそわそわし始め、「魚屋に行って酒の肴を買わなきゃ」と考えるようになって、外出の必要性を訴えます。記憶障害と時間の見当識障害が原因となり引き起こされます。
前述の帰宅行動と関連しますが、徘徊する認知症高齢者のなかには、「ここは自分のいる所ではない」と自分の居場所を探す人がいます。本人に帰宅願望があって悩んだ家族が「若い時に住んでいた家に行きたいのかな」と推測して以前の住宅へ連れて行っても、「家に帰る」との訴えを繰り返してしまうような言動です。本人は「家」という表現を使いますが、結局は、より安心できる環境を探しているのでしょう。これは、場所の見当識障害が原因で引き起こされます。
ご自身の抱える不安やストレス等の精神的要因から徘徊に繋がるケースがあります。以前していたことが能力的にできなくなったり、環境的にできなくなったりしたことで不安になり、焦燥感に駆られ外へ出掛けてしまう例です。
高齢期になると、これまで担っていた役割を代替わりなどによって失い、自信をなくして塞ぎ込むことがあります。これが認知症の進行に影響を与えている場合があります。
この対策としては、穏やかな表情での声かけや、配慮によって、できるだけ本人がストレスを感じないようにします。また、例えば「みそ汁はお義母さんに作ってもらう」「朝の玄関掃除を続けてもらう」など、家庭内での何らかの役割を継続して担ってもらえるようにすることが重要です。
前頭側頭型認知症とは、脳の中で「人格・社会性・言語」をつかさどる前頭葉と、「記憶・聴覚・言語」をつかさどる側頭葉の機能が低下してしまう認知症です。具体的な症状には、以下のようなものがあります。
なお、「何度も同じことを繰り返してしまう」という行動(常同行動)は、他者から途中で遮られると興奮してしまうことがあるので注意しましょう。また、上記のとおり徘徊に繋がる恐れがあるため、寄り添いながら見守ることが大切です。
ここからは、認知症高齢者の徘徊を予防するための対策法を4つ紹介します。
良好な生活習慣を送り、体調を整えストレスがたまらないようにすることで、徘徊を予防することに繋がります。具体的には、早寝早起きを心がける、三食しっかり食べる、適度に水分補給する、お通じを良くする(運動する・食物繊維を取る など)ことです。
特に早寝早起きは重要です。なぜならば、早寝早起きによって睡眠の量と質を確保することによって生活リズムが整うからです。睡眠時間をしっかり確保することは、認知症の予防や進行抑制にも効果があると言われています。
また、早寝早起きを始め生活リズムを整えるのは徘徊を予防するだけでなく、日常生活上の動作能力(ADL: Activity of Daily Living)を維持する効果も期待できます。
日中に適度な運動をすることで、夜間徘徊を抑えることができます。日中活動で適度に疲労すると夜間ぐっすり眠れるようになり、睡眠の質向上につながるからです。言い換えれば、日中に運動不足が続くと、身体の筋肉・関節を使わないためカロリーを消費できず、夜になっても眠くならなくなってしまい、結果的に徘徊へと結びついてしまいます。
NHKが放送しているラジオ体操やテレビ体操だけでも、しっかり行えば適度な運動となります。すぐにでも実践できる方法なので、放送時間を確認して試してみて下さい。
楽しめる趣味や役割がなく刺激のない日々をおくることは、認知症の進行や徘徊に繋がってしまいます。
畑いじりを日課にしたり、孫の登校時間に玄関までお見送りをしたり、洗濯物を畳んだり、日常の他愛もない作業でもいいので、家庭内での役割を担ってもらいましょう。そうすることで自己肯定感が満たされ、「自分の居場所はここだ」と認知して落ち着いていられることが多いです。
特に趣味を持たない人は新たに趣味を見つけることが必要となりますが、高齢になってからでも始められる趣味としては、ウォーキング、ジョギング、水泳、写真撮影、家庭菜園などがあります。
地域の社会福祉協議会や地域包括支援センターなどでシニア向けの趣味発見の場を提供していることがあり、体験教室を開催している場合もあります。勇気を出して参加してみるのも一つの方法です。本人の新たな楽しみが見つかるだけでなく、同じような課題を抱える当事者や家族との交友関係を広げるきっかけにもなるでしょう。
デイサービスを利用すると、日中の運動量・活動量が増え、生活にリズムが出ます。また、交友関係が広がったり、新たな役割ができたりと本人にとってよい刺激となるでしょう。
このように、デイサービスを始めとした介護サービスを適切に利用すれば見守りのある環境の中で過ごすことができるので、結果として本人のみならず、家族の身体的・精神的負担の軽減にもつながります。
なお、介護サービス利用を希望する場合には、申請が必要です。お住まいの市町村窓口または最寄りの地域包括支援センターへ相談してみると良いでしょう。専門家が相談に応じ、適切なサービスを紹介してくれるでしょう。
認知症の徘徊を予防または早期発見するためには、徘徊対策グッズを活用する方法があります。効果的に使うことで徘徊によるトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。ここからは、認知症高齢者の徘徊を予防するためのグッズや、徘徊対策に一役買うグッズを紹介します。
認知症による徘徊行動を防ぐためには、実際に徘徊に至る前のタイミングで家族が気づくことができる仕組みを作ることが大切です。例えば、以下のようなタイミングで気づける環境を作ると徘徊を予防できます。
具体的な方法としては、玄関に人感センサー(人を感じると自動的にアラームが鳴る)や、ドアが開いた際に音が鳴るドアベルの設置、ベッドには離床センサー(ベッドから離れたら感知して音で知らせてくれる等)を敷いておくなど様々な方法があります。なお、原則要介護2以上の方であれば「認知症老人徘徊感知器」という名称のセンサーを介護保険で安くレンタルすることが可能です。
万が一徘徊に至って行方不明になってしまった場合も想定し、早期発見につながる対策も行っておきましょう。以下のようなグッズを使って、あらかじめ対策しておくことが有効です。
GPS端末には、高齢者向けのスマートフォンやポケットに入る大きさの機器等、様々な種類があります。このようなグッズを使う場合、ご本人の自尊心が傷つかないように、本人には分からないように工夫することが大切です。次のような工夫や配慮をすると良いでしょう。
なお、認知症対策グッズ以外にも各自治体ごとの取り組みとして認知症の人のための見守り・SOSネットワーク事業が展開されています。具体的な事業内容や申し込み方法は自治体ごとに異なります。興味がある方は担当のケアマネジャーや最寄りの地域包括支援センターに問い合わせてみるとよいでしょう。
徘徊対策として玄関に人感センサーを設置したり、鍵を二重にしたりすることはよくあります。しかし、意外と盲点になるのが窓です。
窓から外へ出て行ってしまったということにならないよう、窓用の鍵を新たに設置し、施錠しておくと良いでしょう。
また、窓用の人感センサー(窓から外へ出る時にアラームで知らせてくれる)もありますので、有効な場合は活用しましょう。
なお、徘徊を防ぐためとはいえ、全てのドアや窓に鍵をかけて本人が自分の意思で部屋から出られないようにすることは「身体拘束」や「身体的虐待」に該当します。例え認知症による物忘れがあっても、不快感や恐怖心といった感覚は最後まで残っています。すべて鍵をかけるような方法では、かえって本人を興奮させてしまって逆効果です。どのように対策をしたらいいか分からない場合、まずは気軽にお近くの地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
ここからは、実際に認知症高齢者の徘徊が発生した際の対処法を紹介します。「徘徊をしようとしているのを見かけた場合」と「行方不明になってしまった場合」の、それぞれに対処法があるので、整理して説明します。
徘徊しようとしているのを見かけた場合、どのような対処をすれば良いのでしょうか。方法は2つあります。
まずは穏やかな表情で落ち着いたトーンで、ご本人に声をかけます。それに対し、認知症高齢者が「家に帰らないといけない」と言った場合には、「お迎えが来るまでお茶を飲んで待ちましょうか」などと別の行動に誘導したり、「外は寒いのでもう一枚上着を着ましょう」と声をかけたりして、他のことに気が向くように工夫しましょう。
お茶を飲んだり上着を着たりしている間に「家に帰りたい」と思っていたことを忘れてしまい、結果として徘徊を防ぐことができます。
明確な理由や目的が無いまま、ご本人が外へ出ていこうとする場合があります。「とにかくここを出たい」という漠然とした不安やストレスから徘徊に結びつく例です。
このようなケースでは、無理に止めると興奮して態度が強硬になったり、なぜ止められるのか理解できず自身の身を守るために暴力行為に発展したりする可能性があります。状況によっては止めずに一緒に歩くことも有効な対処法です。一緒になってしばらく外を歩けば気分が落ち着き、本人はなぜ歩いているのか忘れたり、疲れて歩くのをやめたいと思うようになったりします。その後、そっと帰宅できるように促すのが良いでしょう。
ただし、ご本人を一人で歩かせてしまうのは事故やケガに遭ったり、迷子になったりしてしまう恐れがあるため、必ず誰かが付き添うようにしましょう。
もし万が一、認知症高齢者が徘徊によって行方不明になった場合、私たちはどのように対応すれば良いのでしょうか。考えられる対処法を3つご紹介します。
認知症高齢者が徘徊する際、よく起こるのがご本人にとって馴染みのある場所へ行っているということです。日頃から散歩する公園や自身の生まれ育った場所、馴染みのある親戚の家などが代表例で、こういった場所をあらかじめ把握しておき、いざという時に重点的に探すようにしましょう。
認知症高齢者が行方不明になった際には、自力での捜索だけでなく、迅速に警察に届け出ましょう。家族のなかには大きな出来事にしたくないので、警察への通報をためらう人がいますが、これは誤りです。本人が遠くに行ってしまう前にたくさんの人の目で探すことができるので、対応が早ければ早いほど発見される可能性が上がります。
警察に通報して、結果として早く見つかった場合は、それはとても良いことです。例え大事(おおごと)になったとしても、本人の生命の安全には変えられません。万が一行方不明になってしまった場合、躊躇せず警察へ通報しましょう。
地域包括支援センターへの連絡も忘れないようにしましょう。
地域包括支援センターとは、高齢者の介護や、生活上の相談にのってくれる機関です。介護支援専門員(ケアマネジャー)や、社会福祉士が常駐しており、高齢者が住み慣れた地域で生活を送ることができるように、日常生活上の相談、介護サービス・介護予防サービスの利用に関して相談に応じています。
彼らは専門職として、認知症高齢者の対応に慣れているばかりでなく、人的ネットワーク(介護支援専門員や民生委員との繋がり)を持っているため、これらを活用することができれば、効果的な行方不明者の捜索をすることに繋がります。また、地域包括支援センターから本人を担当するケアマネジャーに連絡してもらえば、普段利用している介護サービス事業所からも捜索を手伝ってもらえる可能性もあります。
できる限り早く警察へ通報するとともに、担当する介護支援専門員(ケアマネジャー)や、所轄の地域包括支援センターへの連絡を忘れないようにしましょう。
介護において、人による見守りには限界があります。常時の見守りは家族にとって身体的・精神的な負担が大きく、現実的には不可能です。そのため、徘徊対策用のグッズや見守りネットワークサービスを活用することが効果的です。これにより、徘徊を未然に防ぎ、家族の負担を軽減し、万が一の場合も速やかに対応できます。商品選びに不安がある場合は、福祉用具専門相談員がいる専門店で相談し、専門家のアドバイスを受けながら導入を検討してください。
とはいえ、介護を続ける中で疲れを感じることもあるでしょう。その際には、周囲のサポートを積極的に求めることが重要です。ご家族だけでなく、友人や地域の支援も頼りにして、安心できる環境を整えることが大切です。介護の限界を感じる前に、専門家や専門施設に相談することも考えてみてください。
例えば、グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら、専門スタッフのケアを受けられる施設です。家庭的な雰囲気の中で自立を支援し、認知症の進行を緩やかにします。24時間体制で安心して生活できる環境が整っています。入居条件は65歳以上で要支援2以上の認定を受けている方です。
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