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「最近、物忘れをすることが増えたな…」と、認知の衰えを感じていませんか。認知症は、高齢者だけがなる病気ではありません。18歳~64歳の人に生じる認知症として、「若年性アルツハイマー」と呼ばれる病気があります。65歳以上に見られる老年性のアルツハイマーに比べて、症状の進行スピードが速いのが特徴です。こちらの記事では、若年性アルツハイマーの症状や原因、なりやすい人について解説します。
目次
若年性アルツハイマーとは、18歳~64歳の人に生じる認知症です。原因は、明確にはわかっていませんが、脳が萎縮し、脳に異常な蛋白質が蓄積することが原因 と考えられています。若年性アルツハイマーは、65歳以上に見られる老年性のアルツハイマーに比べて、症状の進行スピードが速いのが特徴です。
「若年性アルツハイマーになりやすい人、なりにくい人ってどんな人?」と気になる方も多いのではないでしょうか。ここからは若年性アルツハイマーになりやすい人、なりにくい人を解説していきます。
若年性アルツハイマーになりやすい人とはどのような人なのでしょうか?以下にまとめました。
ここからは、上記の「若年性アルツハイマーになりやすい人」について詳しく解説していきます。
食事に偏りがある人、好き嫌いが多い人は若年性アルツハイマーになりやすいと考えられています。特に、甘いものばかり食べている人や塩辛いものばかり食べている人は、糖尿病や高血圧になりやすく、脳血管に障害がでるリスクが高まるため危険です。
お酒を多飲している人、喫煙者は若年性アルツハイマーのリスクが高いと考えられています。アルコールは脳を萎縮させる作用があります。また、お酒と共に摂る食事には塩辛いものや高カロリーのものが多く、高血圧や高コレステロール血症のリスクを上げるため危険です。たばこに入っているニコチンは、カテコールアミンという体を緊張させる物質の分泌を増やし、脳血管に悪影響を与えるため、若年性アルツハイマーの発症リスクを上げると考えられています。
ストレスを発散する方法を持っていない人は、若年性アルツハイマーのリスクがあります。人は、ストレスに晒されると、緊張状態になり、交感神経が優位になります。交感神経が優位になり、血圧が上昇し、脈が増え過ぎると脳に十分な血液を送り込むことができなくなり若年性アルツハイマーの発症リスクが上がると考えられています。
若年性アルツハイマーになりにくい人とはどのような人なのでしょうか?以下にまとめました。
ここからは、上記について詳しく解説していきます。
体に必要なミネラル、蛋白、ビタミンなど必要な栄養を摂取できていると、体は正常に機能することができ、若年性アルツハイマーを発症するリスクは下がります。「若年性アルツハイマーにならないように対策したい」と考える方はバランスの良い食事を心がけましょう。
決まった時間に起きて、決まった時間に寝るなどして規則正しい生活を送ると、体内時計が整い、熟睡できるようになります。十分な睡眠時間が取れると脳が休息する時間を確保できるため、若年性アルツハイマーの発症リスクは下がります。規則正しい睡眠は、若年性アルツハイマーの予防につながります。
ストレス発散が上手な人は、若年性アルツハイマーになりにくいと考えられています。ストレスをため込んでしまうと、抑うつ状態になってしまい、セロトニンという幸せホルモンの分泌が減ってしまいます。また、血圧が上がり、脳への血流が悪くなる為、若年性アルツハイマーを発症するリスクが高まります。一方、ストレスを上手に発散できている人は脳機能が低下する状態に陥りにくく、若年性アルツハイマー発症リスクが下がると考えられています。
若年性アルツハイマーの原因にはどのようなものがあるのでしょうか?以下にまとめました。
上記、詳しく解説していきます。
若年性アルツハイマーは、老年性のアルツハイマーに比べて「遺伝」による家族性アルツハイマーが多いと言われています。家族性アルツハイマーは、遺伝子が原因な為、個人の力で防ぐのは難しい現状があります。家族にアルツハイマーの方がいる場合は、できるだけ健康的な生活を送るようにしましょう。
生活習慣の乱れは、若年性アルツハイマーの発症につながると考えられています。塩分の高い食事や甘いものばかりの摂取していると、高血圧や糖尿病を引き起こし、脳に悪影響を与えます。また、睡眠不足やストレスの多い生活も血圧を上げ、脳に悪影響を与えるため、アルツハイマーの発症率を上げると言われています。
外的外傷は、若年性アルツハイマーの発症の要因となります。交通事故やスポーツによる頭部強打は、脳の血液循環を悪くしたり、脳出血を引き起こしたりするため、脳障害の原因となり、若年性アルツハイマーを引き起こす要因となります。日常生活で、頭をよくぶつける人は、若年性アルツハイマーの発症リスクが高いので注意が必要です。(近年ではヘディングを多用するサッカー選手のアルツハイマー発症リスクの高さが指摘されています)
お酒やタバコは、若年性アルツハイマーの発症に大きく関与すると考えられています。アルコールを過剰に摂取すると、記憶を整理して蓄積する役割を持つ海馬が萎縮するためです。また、喫煙によって、大脳皮質という認知機能において重要な役割を担う部分が薄くなることがわかっています。このように、お酒やタバコは脳に悪影響を与え、若年性アルツハイマーのリスクを高める要因となります。
若年性アルツハイマーの症状としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここからは若年性アルツハイマーに見られる症状を「中核症状」と「周辺症状」の2つの項目に分けて紹介していきます。
中核症状とは、脳がアルツハイマーによって影響を受け生じる直接的な症状のことを指します。では、中核症状としては具体的にどのようなものがあるのでしょうか?以下にまとめました。
上記、詳しく解説していきます。
若年性アルツハイマーになると、中核症状として「記憶障害」が現れることが多いです。記憶障害が生じると、若年性アルツハイマーの人は新しい記憶を中心に忘れることが増えていきます。初期段階では、1週間前の話や約束を覚えていないなどの症状が見られます。進行が進むと、5分前のことも覚えていられなくなります。「大事な会議を忘れる」「取引先との約束を忘れる」「子どもを保育園に預けたのを忘れる」など日常生活に大きな支障をきたすことが増えます。
若年性アルツハイマーになり、「見当識障害」という中核症状が現れる方は多いです。見当識障害とは、日付、時間、場所などを把握する力のことです。見当識障害になると、今日が何月何日で、何時なのか、自分がどこにいるのかが分からなくなります。土日に仕事に行こうとしたり、夜中に仕事に行く準備をしたりと他人から見ると理解できない行動を繰り返すことも増えます。見当識障害が起こった若年性アルツハイマーの人は、周りに理解されずトラブルが増え苦しむことが多いです。
若年性アルツハイマーになり「判断力の低下」で困る方も多いです。若年性アルツハイマーに伴う「判断力の低下」の例を以下にまとめました。
上記のように若年性アルツハイマーの人は、日常生活で求められる基本的な判断力が欠如し、社会に適応できず困難に陥ることが増えます。
BPSD(周辺症状)は、認知機能の低下で困難が生じることによって起こる行動やメンタル症状のことです。周辺症状は、多様なものがありますがここでは、若年性アルツハイマーの人によく見られる代表的な症状「妄想」「幻覚・幻聴」「抑うつ」について解説していきます。
若年性アルツハイマーになり、認知機能の低下が起こること、日常生活での困難が増えることで「妄想」が生じる方は多いです。例えば、以下のような妄想が現れる方がいます。
物が紛失したときに、自分が無くした記憶がないため、「誰かに財布を盗まれた」などと思いこむ
近所の人が立ち話をしているのを見て、「悪口を言われている」と思い込む
夫が自分以外の人と話しているのを見て、「浮気されている」と思い込む
若年性アルツハイマーになると、何もないところで何かが見える幻覚や何もないところで何が聞こえる幻聴が生じる方も多いです。見えない、聞こえないはずのものに、気を取られ睡眠不足や注意障害が起こることも多く、本人にとって辛い状況になります。
若年性アルツハイマーになると、今まで当たり前に出来ていたことができなくなり、抑うつ状態になる方も多いです。若年性アルツハイマーの方は、働き盛りで周りの期待も大きく、役割も多い状況でできないことが増えるため、老年性アルツハイマーの方より抑うつ状態になりやすい現状があるようです。
「若年性アルツハイマーってどうやって診断するの?治療法はあるの?」と若年性アルツハイマーの診断と治療について様々な疑問を抱える方も多いのではないでしょうか。そこでここからは、若年性アルツハイマーの診断方法と治療方法について解説していきます。
若年性アルツハイマーの診断は、診察を経た後に医師から下されます。認知症の診療科としては、「もの忘れ外来」「認知症外来」「神経内科」「脳神経内科」「精神科」などがあります。診断は、問診、神経心理検査、画像検査の流れで行われることが多いです。神経心理検査においては、簡単な計算や記憶力の測定を行い、認知機能を精査することが多いです。画像検査では、脳をCTやMRIで検査することが多いです。最近では、脳血流SPCTという脳の血の流れや働きを見る画像検査を行うこともあります。その後、医師が最終的に診断を下します。
若年性アルツハイマーの治療法としては、薬を用いて治療する「薬物療法」と薬以外の方向から認知機能の低下にアプローチする「非薬物療法」があります。以下では、「薬物療法」、「非薬物療法」について詳しく説明します。
薬物療法としては、認知力、記憶力を維持する中で大切な役割を担うアセチルコリンを増やす薬の利用、物忘れや短期記憶障害、長期記憶障害など記憶の障害を抑えることができる「NMDA受容体拮抗剤」の投与を行うことが多いです。認知機能低下に伴う抑うつに対しては「非定型抗精神病薬」、怒りっぽさに対しては「漢方薬(抑肝散)」を利用することもあります。
若年性アルツハイマーの治療法の1つとして非薬物療法があります。非薬物療法は、薬物療法ほどの即効性は見られませんが長期的に見ると高い効果がでることも多い治療法です。
作業療法では、本人が慣れ親しんでいた作業(洗濯や料理、手先を使用した細かい作業など)を通して作業能力の向上を目指す。
音楽を通して精神的なサポートを行い、本人がリラックスできるようにする。
認知機能の低下にあり、見当識障害がある方に対し、場所や日付、本人の名前、家族関係などの確認を行い、現状を理解できるようにサポートする。
若年性アルツハイマーは、18歳から65歳の働き盛りの人々に影響を及ぼし、認知機能を低下させる病気です。しかし、早期に発見することができれば、進行を抑える薬を使用し、周辺症状を和らげる非薬物療法を受けることができます。「若年性アルツハイマーかもしれない」と感じたとき、不安や恐怖で診断を受けるのをためらうかもしれませんが、早期発見が早期対処につながります。もし身近な人や自分自身に若年性アルツハイマーの兆候が見られる場合は、かかりつけの医師やもの忘れ外来、認知症外来などに相談することをお勧めします。
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