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「高齢の両親が少しずつ歩けなくなってきている気がする」
「歩けなくなったらどうしたらいいの?」
高齢のご家族が歩けなくなったとき、どう対応すればいいのか不安に思っている方はいませんか。
高齢者が歩けなくなると、希望に沿った生活が遠ざかり、生活の質(QOL:Quality Of Life)も低下します。
ただ、身体機能が低下しているサインを早めに察知して正しく対処すると、歩けなくなることを予防できたり、歩行状態を改善できたりすることがあります。
この記事では、高齢者が歩けなくなる原因や予防方法について紹介します。歩くのが難しい高齢者における介護サービスの選び方のポイントも詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
高齢者が歩けなくなる原因はさまざまありますが「筋力の低下」や「慢性疾患の既往」「骨や関節の疾患」などが挙げられます。
私たちの身体の機能は加齢とともに少しずつ衰えるのが事実です。ただ、放っておくと最終的に歩けなくなってしまう可能性があります。そのため、家族や周囲の人たちが歩けなくなるサインを早めにキャッチし、正しく対応することが大切です。
ここでは「年齢と筋力低下の関係」「疾病が歩行能力に与える影響」について詳しくみていきましょう。
加齢にともなう筋力の低下は、高齢者が歩けなくなる主な原因のひとつです。
ある研究の結果では、下肢の筋肉量が20歳代から大きく減少することが報告されています。また、全身の筋肉量では、40~50歳代を目安に減少していくといわれています。
歩行困難は高齢者の課題だと思われがちですが、その予防は40歳を過ぎたら始めることが大切であるともいえるでしょう。
下肢の筋力低下が進むと、やがて歩行が難しくなります。筋力が衰え、つまずいたり転倒したりするリスクが高くなることも…。
参考:日本人筋肉量の加齢による特徴|日本老年医学会雑誌 47巻1号
厚生労働省のH28年国民生活調査の結果では、高齢者における要支援・要介護者の介護が必要になったおもな原因のひとつが「運動器の障害」です。「運動器の障害」とは関節や骨、筋肉、神経が障害を受けているものをさします。
高齢者が歩けなくなる背景には「運動器の障害」のほかにも、次のような疾患があります。
これらの疾病は、早めに発見して適切な治療やリハビリテーションで悪化を防ぐことが可能です。定期的な健康診断や周囲からの「ちょっといつもと違う」という違和感が異変の早期発見につながるでしょう。
フレイルの高齢者は、健康寿命(※)を失いやすく、健康を保つための配慮がより重要な人々です。フレイルは、筋力の低下や体重の減少などさまざまな要因が合わさって起こります。
「食べられない」「動けない」といったことが互いに身体面・精神面などに影響し、身体機能が低下していくサイクルが繰り返されると、歩けなくなってしまうことも…。
ここからは「フレイルの定義」や「早期発見するためのサイン」について詳しく解説します。
※健康寿命:健康上の問題で日常生活が制限されることなく過ごせる期間
平成28年の国民生活調査によると、高齢者が要介護になる原因の第1位は「認知症」、第2位は「脳卒中」となっています。
第3位における「高齢による衰弱」は、要介護状態に関連する明らかな原因となる疾患が加齢以外に見つけることが難しいものです。そこで「フレイル」や「サルコペニア」といった病態が関連していることが明らかになっています。
フレイルとは、加齢に伴う身体的・精神的な衰えを指します。加齢とともに運動機能や認知機能などが低下し、複数の慢性疾患が合わさっている影響から生活機能が障害された状態です。「健康」と「要介護状態」中間段階とされており「筋力の低下」「体重の減少」「歩行速度の低下」などがみられます。ただし、適切な介入な支援により、生活機能の維持や向上が可能な状態であり、この点がフレイルの特徴であるともいえるでしょう。
フレイルと関連が深い「サルコペニア」は、加齢にともなって骨格筋の量が低下し、筋力や身体機能が低下した状態をいいます。
サルコペニアが骨格筋の低下に焦点をおいたものであるのに対し、フレイルは身体的・精神的、社会的な要素がそれぞれ関連し合いながら要介護状態を引き起こすと考えられています。このことから、サルコペニアはフレイルの原因のひとつとしてとらえることもできるでしょう。
フレイルの状態が進行すると、転倒や骨折のリスクが増大し、生活の自立が難しくなるだけでなく、最終的に歩行困難につながる可能性があります。
参考
フレイル・サルコペニアと理学療法|理学療法の科学と研究 Vol.8 No.1 2017
フレイルを早期に発見し、正しく対応することが歩行能力を維持するためのポイントです。以下の5つのサインに注目しましょう。
これら5つのチェック項目のうち、3つ以上当てはまる場合を「フレイル」、1つまたは2つ当てはまる場合に「フレイル予備軍」と判断されます。
チェック項目の兆候が見られる場合、かかりつけ医や専門医に相談し、早めに適切な介入を行うことが重要です。
「歩けなくなったら、余命はどのくらいなの?」と気になる方もいるかもしれません。
歩行困難と余命に関係するデータのひとつに「平均余命」というものが挙げられます。「平均余命」は、ある年齢の人々が「あと何年生きるか」の平均を示すもので、令和5年の厚生労働省の簡易生命表による各年齢と平均余命は以下のとおりです。
年齢 | 男性の平均余命 | 女性の平均余命 |
65歳 | 19.52歳 | 24.38歳 |
75歳 | 12.13歳 | 15.74歳 |
85歳 | 6.29歳 | 8.33歳 |
データにおいては年齢を重ねるとともに平均余命も短くなっていることがわかります。ただ、高齢者の身体面や精神面の健康状態や病状によって、個人差があることは事実です。
たとえば「歩行困難になって余命1年と医師から言われたけど、1年以上介護サービスを利用しながら自宅で過ごせた」という方もいます。
歩行困難が原因で身体機能や生活の質(QOL)が低下しないよう、高齢者の状態や希望に合わせて、日常生活のケアやリハビリテーションを行うことが大切です。
歩行困難になると、外出が難しくなったり、思うような生活ができなくなったりして、生活の質(QOL)が大幅に低下します。行動の制限がかかるとさらに筋力が衰え、他の健康問題につながることも否定できません。
歩行困難が進むと、次のような健康リスクにつながる可能性があります。
これらの健康リスクが大きくなると、高齢者の余命にも関わるでしょう。
歩行困難は、外出や人との交流が制限される原因のひとつです。歩行困難により自宅に閉じこもってしまうと、高齢者の社会的孤立を招き、孤独感や抑うつ状態が進行する可能性があります。
家族や地域のサポートを活用し、社会的なつながりを維持することが大切です。たとえば、地域のイベントや健康教室、ボランティア活動などは自分の興味や得意分野を活かしつつ、他者との交流も図れます。さまざまな人と関わる時間は、気分転換やストレスの軽減、心の安定につながるでしょう。
高齢者のご家族のなかには「家族でサポートできることはないの?」と思う方もいるかもしれません。実は、高齢者の歩行能力を維持したり改善したりするために、家庭でできる工夫やリハビリテーションがあります。
ここからは「家庭でできる予防と改善方法」「歩行補助具やリハビリの活用」について詳しくみていきましょう。
家庭でできる歩行能力の維持や改善方法には、次のようなものがあります。
ウォーキングや筋力トレーニング、インターバル速歩(※)など
※ インターバル速歩:速歩きとゆっくり歩きを交互にくり返すウォーキング法。普通のウォーキングでは得られにくい筋力・持久力の向上が望める。
たんぱく質(筋肉を作る)・ビタミンD(筋肉と骨の健康を保つ)・カルシウム(骨の材料となる)を意識して摂取する
床の段差をなくす・手すりを設置する・生活動線に物を置かない など
かかりつけ医で定期的に健康診断を受ける・地域の健康教室に参加する など
このような取り組みにより、良好な筋力や栄養状態を維持し、歩行困難のリスクを軽減することができます。また、家族も高齢者と一緒に取り組むことが大切です。一緒に取り組んでくれる家族の存在は、高齢者が歩行困難の予防や改善に前向きに臨むために重要なものとなるでしょう。
参考
歩行困難を改善するための歩行補助具は、高齢者が安全に移動するための有効な方法のひとつです。また、専門的なリハビリテーションは、筋力やバランス能力を向上させ、歩行困難を改善させる効果が期待できます。
医師やリハビリスタッフなどから専門的なアドバイスを受け、最適な補助具やリハビリテーションを取り入れてみましょう。
下記の記事では、歩行の補助具について詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
歩行困難な高齢者が自宅で穏やかな生活を送るためには、介護サービスを利用することが欠かせません。
なかには「自分たちだけで介護を頑張らなくては」という思いを抱えるご家族もいるかもしれませんが、介護の負担は日々積み重なっていくものです。高齢者にとってかけがえのない存在であるご家族が倒れてしまうと、高齢者にとって大きな悲しみとなるでしょう。
高齢者とご家族がお互いに負担の少ない日常を過ごすためにも、最適な介護サービスを選択することがおすすめです。
ここからは「在宅介護サービスの種類と特徴」「施設介護の選択肢とポイント」についてお伝えします。
在宅介護サービスにはさまざまな選択肢があり、たとえば、次のようなサービスが挙げられます。
このようなサービスは、高齢者やご家族のニーズに合わせて利用が可能です。
在宅介護サービスは、家族の負担を軽減するだけでなく、高齢者の生活の質を維持するためにも重要な存在です。家族のライフスタイルや高齢者の希望に合わせて、適切なサービスを選びましょう。
在宅介護が難しくなった場合、施設介護の利用を検討することも重要です。介護施設にはさまざまな種類があり「特別養護老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」「グループホーム」などがあります。
施設 | 対象者 | 主なサービス内容 |
特別養護老人ホーム | 原則 要介護3以上の方 | ・介護サービス (食事・入浴・排泄など) ・健康管理 ・レクリエーションや リハビリテーション |
介護付き有料老人ホーム | 要支援・要介護認定を 受けた方 | ・介護サービス (食事・入浴・排泄など) ・生活支援 ・レクリエーション活動 ・医療的ケア |
グループホーム | 認知症かつ 要支援2以上の方 | ・9人程度での共同生活 ・介護サービス (食事・入浴。排泄など) ・認知症の進行を 緩やかにするためのケア |
施設を選ぶときには、次のようなポイントを押さえておくことも大切です。
これらの項目を比較しながら見学や体験利用を行い、高齢者や家族にとって最適な環境を選択しましょう。
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