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認知症予防|今日からできる食べ物や運動の具体例を紹介

2024年9月7日
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
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認知症予防の3つのポイント

認知症は、生活習慣病と密接に関係していることをご存じでしょうか。認知症は、脳血管障害や糖尿病など、生活習慣から引き起こされることが多いといわれているため、生活習慣の見直しが認知症予防につながります。

1.食べ物

乱れた食生活は、生活習慣病の原因になってしまいます。普段から栄養の偏った食事をとっている方は、注意が必要です。認知症予防の基本は、栄養バランスの整った食事をとることです。食事をするときはしっかりと咀嚼することを心がけ、きちんと1日3食とることも忘れずに。

2.運動・トレーニング

運動不足も生活習慣病の原因になるため、日ごろから適度な運動を心がけましょう。運動やトレーニングといっても、激しいものは禁物です。ケガをしてしまっては元も子もないため、体に負担のかからない運動に取り組みましょう。

3.社会交流・知的刺激

年齢を重ねるにつれ、自宅に閉じこもってしまう方は少なくありません。他人との交流がなくなってしまうと、脳が刺激を受けなくなり、認知症につながるおそれがあります。認知症予防のために、自宅に引きこもらず、積極的に外出して他人と交流しましょう。

食べ物を見直す

高齢者の生活習慣病や認知症を予防するため、まずは食べ物から見直してみましょう。人間は、食事からとりこんだ栄養をもとにエネルギーを作り出しています。食べたものが体を作るため、食事はとても重要です。認知症予防を考えた場合、認知力のアップにつながるような食事をとる必要があります。

認知症予防に効果的な食材

普段の食生活を極端に変えようとしても長続きはしません。認知症予防に効果的な食材を知り、今までの食生活の中に意識して少しでも取り入れるようにするなど、心がけることが大切です。認知症予防に効果的な食材は、魚や果物、野菜などです。魚の油には、脂質の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれています。これは脳に多く含まれている脂肪酸で、特にDHAは神経細胞同士のスムーズな情報伝達に欠かせないものとして知られています。

DHA,EPAが多い魚介類(生/可食部100gあたり)

魚介類DHA(mg)EPA(mg)
クロマグロ(トロ)32001400
サンマ1700890
ブリ1700940
タチウオ1400970
サケ(アトランティックサーモン/銀ザケ)1400/1200850/740
マイワシ13001200
サバ(マサバ/ノルウェーサバ)700/2300500/1600
イクラ(白ザケの卵)20001600

(五訂増補日本食品標準成分表脂肪酸成分表編による)

野菜や果物にはビタミン類や色素成分のポリフェノールが多く含まれており、認知症の発症リスクを下げる効果があるといわれています。また、ポリフェノールを多く含む飲み物は、緑茶や赤ワインなどがあります。ただし、赤ワインはアルコール飲料な為、とりすぎてしまうと逆に認知機能を低下させるリスクがある成分です。飲みすぎないように注意しましょう。

地中海式ダイエット

さまざまな健康効果が期待できると注目を集めている、地中海式ダイエット。日本でも紹介され、近年ブームになっているダイエット方法です。ギリシャやイタリア南部などに住む方は、古くから慢性疾患がなく長寿でした。これらのエリアに住む方は、野菜や果物、魚、ナッツ、オリーブオイル、赤ワインなどを食事でとっていたため、これが健康の秘訣と考えられています。地中海ダイエットでは、肉より魚をメインに食べ、オリーブオイルやアボカドなど良質な脂肪分も摂取します。

サプリメントを使う時の注意点

高齢になると、以前に比べて食欲がなくなってしまい、食事が喉を通らなくなることも珍しくありません。そのため、食事で十分な栄養を摂取できず、サプリメントに頼ってしまう方も多いようです。サプリメントは、あくまで健康を補助するものです。たしかにサプリメントでも栄養はとれますが、基本は食事から栄養を摂取しましょう。その補助として、足りない分をサプリメントで補うようなイメージです。

運動が認知機能をアップさせる

認知機能の向上には、運動が大きく関わっています。なぜ、運動をすると認知機能がアップするのか、また、どのような運動が効果的なのかを紹介していきます。

なぜ運動すると認知機能がアップするのか

運動不足は、身体機能を低下させ、身体機能が低下していると認知機能も低下しやすい傾向が見られます。一方、多くの人を対象とした大規模調査で、認知症の予防として運動は効果的であるということが分かっています。運動をすると脳も刺激されるため、認知力アップに効果的です。さらに、認知症のリスクを高める、生活習慣病の改善にもつながります。有酸素運動、筋力トレーニング、バランスアップなど様々な運動を行いましょう。

有酸素運動

有酸素運動とは、ゆっくりと体を動かし、全身の血行を改善する効果が高い運動です。わずかに息がはずみ、軽く汗ばむくらいの運動で、具体的にはランニングや速足のウォーキング、縄跳び、水泳などが挙げられます。普段運動をしていない方が、いきなりランニングをしてしまうと膝や腰を傷めるおそれがあります。そのため、運動の初心者は、まず速足のウォーキングから始めてみましょう。速足のウォーキングは、買い物に行く際や駅まで行く際など、普段の生活の中で出来る手軽な運動です。週に3回以上、1回20分以上を目安にウォーキングをしましょう。また、水泳は膝や腰などへの負担が少ないため、高齢者の運動に最適です。しかし、天候があまり良くない日や外での運動に勇気の必要な方には、室内で手軽に行えるチェアウォーキングやステップエクササイズがおすすめです。チェアウォーキングとは、椅子に腰を掛けたまま、足踏みを繰り返す運動です。両手を大きく振り、好きな曲に合わせてリズムよく足踏みを繰り返します。ステップエクササイズとは、踏み台の上にのぼったり、降りたりを繰り返す運動です。意外にも、運動量が多いため、息が上がりすぎない程度に挑戦してみるのも良いでしょう。

筋力トレーニング

人間の筋力は、加齢とともに減少する傾向があります。年齢を重ねると体を動かすことが少なくなるため、筋力低下を招いてしまうのです。その結果、足が上がらなくなり転倒する、重いものを持てなくなる、といったことが起こります。筋力トレーニングを行うと、筋肉に力をこめる→動かす→痛みを感じます。しかし、普段から筋力トレーニングを行っていない人は、この感覚が鈍くなり、動きの微調整がしにくかったり痛みを感じにくくなります。認知機能の低下は、感覚が鈍くなるという形で現れます。筋力トレーニングを続けて神経系の働きを整えていくことで、感覚を鋭敏化させることが大切です。健康な肉体と認知力アップのため、筋トレにチャレンジしてみましょう。自宅で簡単にできる筋力トレーニングは、速足での階段上りや立ち仕事中のかかとの上げ下ろしなどが挙げられます。 その他にも、椅子を使った筋力トレーニングやスクワットなど難易度も様々なため、自分に合った筋トレ方法を選ぶと良いでしょう。認知力アップのための筋力トレーニングは、脳と筋肉とのつながりが改善されることを目的としています。日常生活の中で、筋肉の動きを意識しながら行動することも、つながりの改善に役立ちます。生活の中で、ちょっとした筋力トレーニングを実施していきましょう。

バランスアップ

体のバランスをとるのに、脳の働きは欠かせません。耳の奥の器官や目、筋肉などから伝わる情報を整理し、バランスを保つためにどうすればよいか、脳が指示を出しているからです。そのため、認知機能が低下しているとバランスも、とりくにになります。バランスを改善するためには、1直線歩行がおすすめです。まず、バランスが取れているかを確認するために、片足立ちをしましょう。片足を挙げた姿勢を何秒間続けられるか測り、目安として60秒以上続けられれば合格です。ふらついてしまう人は、バランス改善が必要なため、1直線歩行を行いましょう。

開眼片足立ちの年齢別平均値

年齢男性女性
65~69歳82.9秒67.1秒
70~74歳60.0秒48.7秒
75~79歳56.7秒36.5秒
80歳以上47.6秒34.7秒

文部科学省新体力テストに関する高齢者の体力・ADL・QOLと日常生活実態の関連

1直線歩行とは、両足を一直線上に並ぶようにして歩くものです。バランス感覚が衰えていると、上体がふらついて長く歩くことができません。この状態でスタスタと20mほど歩けるようになったら、目を閉じて行うなどさらに難易度を挙げると、トレーニング効果が高まります。ただし、バランスボールは慣れない人が使うと落ちてしまい、ケガをするおそれがあります。そのため、トレーニングを行うときは、家族にサポートしてもらうことをおすすめします。

知的刺激で認知機能をアップさせる

脳に刺激を与えることで、認知力アップの効果が期待できます。デュアルタスクを実行する、ゲームで脳を活性化する、スポーツクラブを利用するなどの方法があるので、自分に向いている方法を見つけてみましょう。

デュアルタスクが脳を刺激する

デュアルタスクとは、頭と体を同時に使い、認知力をアップさせるものです。例えば、会話をしながら歩いたり、電話をしながらメモを取ったり、お湯を沸かしている間に食材を刻むなど複数のことを同時に行う料理などが挙げられます。認知機能が低下すると、脳に伝わった様々な情報を正しく理解できず、目的に沿った行動がうまく取れないということが起こりがちです。そこで、注目されているのが、デュアルタスクトレーニングです。デュアルタスクトレーニングの例として、指先を動かして頭の体操になるぐるぐる指回しや足ふみをしながらクイズをするなどが挙げられます。ぐるぐる指回しは、両手の指先を合わせてドームの形を作り、1~2本の指だけ離してぐるぐる回転させます。2本以上の指を同時に動かすことができれば、デュアルタスクになります。足踏みクイズでは、頭ではクイズのことを考えながら足踏みを止めないようにします。考え込むと足の動きが止まりがちですが、動きを止めないようにするのがポイントです。このように、2つの課題を同時にこなすトレーニングにより、脳が活性化され、認知力のアップにつながると考えられています。

国立長寿医療研究センターの研究によれば、頭と体を同時に使うデュアルタスクは、認知症のリスクが低減するといわれているのです。普段何気なくしてきた行動の中にも、デュアルタスクは沢山あります。認知症予防のためにも、意識してデュアルタスクトレーニングを行うようにしましょう。

ゲームで脳の活性化を図る

ゲームは一人でも楽しめるものが沢山ありますが、誰かと一緒に取り組むことが重要なポイントとなります。家族や仲間とゲームを行うことで、コミュニケーションや競い合いによる刺激、問題解決による活性化など、脳を活発に動かすことができます。みんなで遊べるゲームとして、豆つまみゲームや、後出しじゃんけん、トランプ・かるたなどのカードゲームなどがあります。 豆つまみゲームでは、お皿に入れた大豆を1粒ずつ、橋でつまんで空のお皿に移していきます。制限時間を決めて、何粒移せるか競い合ったり時間を図って練習したりするのも良いでしょう。後出しじゃんけんは、一斉にグー・チョキ・パーを出して勝敗を決めるのではなく、わざと後出しで勝つ手をだす、あるいは負ける手を出すゲームです。負ける手と決めていたのに、あいこの手や勝つ手を出したら、後出しの人が負けです。ただし、数字や感じが苦手だったり、できなくなっていることが自覚されてつらいなどという人には、無理強いしないで、ルールは簡単でも楽しめるゲームをしましょう。ゲームでの脳の活性化では、頭を使いながら誰かと一緒に楽しむことが大切です。

スポーツクラブで認知力をアップする

スポーツクラブへの加入は費用を要しますが、入会すれば運動を続けるモチベーションを高めることができたり、さまざまなアプローチで認知力アップが実現します。認知機能向上に良いとされる中高年向けの独自のプログラムを取り入れてるスポーツクラブやフィットネスクラブも少なくありません。また、スポーツクラブはさまざまな人が利用しており、社会交流もできます。トレーニング器具を使ったり、インストラクターの指示をもらいながら体を鍛えることが可能で、運動と社会交流、知的刺激を一度にクリアできる場所であるのです。高齢の方でスポーツクラブに通っている方もたくさんいるので、交流が広がり人生の楽しみも増えるでしょう。

著者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

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