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バイタルサインは、医療や介護の世界で用いられる用語のひとつです。体の状態を示すサインのことを指し、脈拍や血圧、体温、意識、呼吸、表情などのサインから本人の状態を把握します。バイタルサインの正常値を把握しておけば、変化が起きたときすぐに気づけ、適切な対処をとれます。高齢者の不調に発見するために、バイタルサインの概要を解説します。
血管を流れる血液が、血管の内壁を押す力を血圧と呼びます。血圧もバイタルサインのひとつであり、計測により体がどのような状態なのか把握できます。なお、最高血圧のことを上、最低血圧のことを下と呼ぶことが多く、医療や介護の現場でも耳にすることが少なくありません。最高血圧は、血管にもっとも圧力がかかっている状態を指し、最低血圧は圧力がもっとも低くなっている状態です。
血圧が変化する要因は多岐にわたります。たとえば、運動したあとには血圧が上がりますが、これは血流がよくなり大量の血液が血管を流れるからです。また、緊張したときも一時的に血圧が上がります。これらのケースは、あくまで一時的な血圧の上昇であり、しばらくすればすぐに下がります。血圧が下がる原因としては、心拍出量の低下が考えられます。不整脈や心機能障害などで、心臓の働きが低下してしまうと、血圧が低くなってしまうのです。また、血管の拡張や血液そのものの減少なども、低血圧を引き起こす原因です。
老化により、人の体はさまざまな変化を生じますが、血管もそのひとつです。老化は筋力や内臓機能の低下を引き起こしますが、血管にまで影響をおよぼします。具体的には、老化により血管が硬くなります。血管が弾力を失い硬くなってしまうと、大量に血液が通るときの衝撃を受け止めきれません。その結果、血圧が高くなってしまうのです。また、血管の老化は動脈硬化を引き起こすおそれもあるため、注意が必要です。
人生で一度も脈拍を計ったことのない方はおそらくいないでしょう。バイタルサインのひとつである脈拍も、身体の状態を把握するために計ります。脈拍とは、心臓が鼓動するときの拍です。手首や首筋など、大きな動脈が通っている場所を指で触ると、ドクンドクンと波打っているのがわかるでしょう。これが脈拍です。
血圧と同様に、脈拍も一定ではありません。さまざまな要因により、脈拍は変化します。基本的に、心臓の鼓動と連動しているため、鼓動が速くなればそれに伴い脈拍が変化します。たとえば、運動をしているときや、した直後に脈を計ると、速くなっていることがほとんどです。一時的に心臓へ負担がかかり、心拍数が上がるためそれに合わせて脈拍も上がります。ほかにも、心因性のストレスや薬物の影響により、心拍数が上昇した結果脈拍が速くなることがあります。
老化によって、心臓の働きも低下します。その結果、徐脈や頻脈、不整脈などの症状が現れるケースが少なくありません。中でも、不整脈は命に関わるケースもあるため、注意が必要です。不整脈とは、通常の状態に比べ脈拍が乱れることを指します。心臓の動きが不安定となり、血管へ送り込まれる血液量も少なくなることから、めまいや失禁、けいれんなどさまざまな症状を引き起こしてしまうのです。徐脈と呼ばれる、心臓が速く拍動する状態では、めまい後に失神してしまうこともあるため、注意が必要です。
バイタルサインのひとつである体温は、読んで字のごとく、体の温度を指します。人間の体温は個人差があるものの、一般的には35~37度くらいです。これを大きく外れていると、体に何かしらの異常が生じていると判断できるのです。体温測定するのも、体温の変化を把握するためです。また、体温は年齢によっても異なります。生まれたばかりの赤ちゃんが37~37.5度前後の体温なのに対し、高齢者は35度前後と低くなるケースがほとんどです。
体温が上がるのは、主に発熱が原因です。風邪をひいたときに体温計で計測しますが、あれも発熱しているかどうかを確認するためです。病気以外にも、ストレスによって発熱してしまうケースもあります。発熱により体温が急激に上がることはありますが、その逆はほとんどありません。平熱36度の方が、突然35度や34度になるといったことは考えにくいです。ただ、筋肉量が低下し基礎代謝が下がると、平熱は下がってしまいます。また、内臓の機能低下や食生活の乱れも、低体温になる原因として挙げられるため注意が必要です。
老化に伴い、体温は低くなる傾向があります。高齢者が、あたたかい日でも「寒い」と口にするのを耳にしたことがありませんか?高齢者は、体温の調整機能や基礎代謝が低下しているため、体温が低くなってしまうのです。体温の調整機能が低下した高齢者は、暑さや寒さに対応する力も少なくなっています。そのため、屋内で過ごしていても低体温症になってしまうケースが少なくありません。また、ときに命に関わる無熱性肺炎を発症するおそれもあるため、注意が必要です。
呼吸もバイタルサインのひとつです。人は、空気中の酸素を体内に取りこみ、代わりに口から二酸化炭素を吐き出します。この一連の行為を呼吸と呼んでいます。口や鼻から取りこまれた空気は、気道から気管へと移動し、その後肺に到達します。肺から肺胞へと送り込まれた酸素は二酸化炭素に交換され、口や鼻から外へ吐き出されます。
呼吸が速くなることはあっても、突如極端に遅くなることはほとんどありません。では、どのような要因で呼吸は速くなるのでしょうか。たとえば、運動をしているときは呼吸が速くなります。激しい運動をしたあと、息切れを起こしたことはありませんか?運動により体温が上昇し、血液に含まれる酸素の濃度が下がると、呼吸中枢の興奮が生じます。これが、激しく体を動かしたときに呼吸が荒くなる、速くなる理由です。
老化により、肺活量は低下します。肺活量が低下してしまうと、それほど激しい運動をしたわけでもないのに、呼吸が速くなる、息切れするといった症状が現れます。高齢者は、階段を少し上っただけで息切れしてしまうケースがありますが、これも肺活量の低下が主な原因です。また、老化は横隔膜の筋力低下も引き起こします。横隔膜が老化してしまうと、これまでのように肺を膨らませることが困難となってしまうのです。その結果、呼吸が浅くなる、息切れしやすくなるといった症状を生じます。
医療系のドラマで耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。意識レベルもバイタルサインの一種で、数値により表されます。意識レベルは、意識の状態を把握するための数値です。意識がはっきりしているのか、ほとんどないのかなど、状態を数値で表します。
原因は多岐にわたりますが、ひとつには脱水症状が挙げられます。脱水症状が生じると、血液の循環量が少なくなり、突如意識を失うことがあります。ほかにも、一酸化炭素中毒やアルコールの過剰摂取などが原因で、意識障害を引き起こすケースも少なくありません。意識障害に伴い、てんかんや低血糖症、脳梗塞などの病気を誘発するおそれもあるため注意が必要です。
意識障害は、高齢者にもよく見られます。たとえば、意識精神障害のひとつであるせん妄が代表的です。突如発症するケースが多く、症状が数週間にわたり続くことも珍しくありません。症状が認知症と似ているため、間違われることも多いようです。また、傾眠傾向も高齢者によく見られる症状です。軽度の意識障害ですが、認知症や慢性硬膜下血腫などの予兆であることも少なくありません。
高齢者のバイタルサインに大きな変化があった場合には、何かしら異常が起きていると考えましょう。健常者なら問題ないことでも、高齢者なら大変な事態を招くおそれがあります。バイタルサインとともに本人の状況をチェックし、必要に応じて医療機関で診察を受けてください。
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