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家族が要介護認定を受けたとき、同じ家で暮らし続けるなら移動介助がしやすい家づくりが必要になります。手すりを設置する目的は家の中を安全に移動しやすくすること。また本人が手すりを使って自分で移動できれば、自立心を保つことに貢献できるでしょう。手すりを設置することで、介護する側の負担が軽くなります。廊下や階段、トイレ内に手すりを設置すると手すりを支えにできるので、移動介助の負担が格段に少なくなります。
移動介助を楽にしてくれる手すりですが、どんなものでも良いわけではありません。あまりよくない手すりの設置の方法について紹介します。
L字型の手すりは、水平の手すりと縦の手すりが一体化したLの形になった手すりです。車椅子からの移乗や座位の安定のためにトイレにもよく使われています。しかし、トイレは狭いのに複雑な動作が多くなる場所です。そのためL字手すりは取り付け位置が重要です。縦手すりは便器先端から200~300mm、横手すりは便器上端から230~300mmがちょうど良いと言われています。トイレの構造を見ながら最適な位置を探しましょう。
手すりはつける場所にも注意が必要です。高すぎる手すりや近すぎる手すりは力を入れにくく、体勢を保つことが難しくなります。力が上手く入らないとバランスを失って、転倒の恐れもあります。また半身まひなどがある場合には、どちらの手で手すりを握るかも確認しなければいけません。
手すりをつける位置はマニュアルで決めるものではありません。手すりをつけることでどのようなことができるようになりたいのか、どういう方法で立ち上がりたいのかといった要望に合わせて、最適な設置場所を見つけなければいけません。手すりの場所を考えるときは、日常生活で無意識に手を付いている場所を考えます。いつも手を付ける場所は汚れていたり、手あかがついていたりするのでチェックしてみましょう。また手すりをつける位置は太ももの大転子、太もも上部の一番上にある飛び出した部分を基準にします。人によって手の長さや足の長さも違うため、手すりを付けた場合をイメージしながら最適な位置を探しましょう。
玄関は段差の上り下りや、立ち上がったり座ったりと上下動作が必要になります。そのため、上下運動には縦手すりが効果的です。しかし、土間から廊下へと続くのであれば、縦手すりと連続して横手すりを持てるようにすると、使いやすくなります。縦手すりは段差より家側に100mmから200mm、廊下に上がった状態で肩の高さかそれよりも少し上まで伸ばすようにします。家の間取りによって玄関の形状や廊下へのつながりも違います。手すりを連結したり、斜めにつなげたりと手すりを組み合わせてみてください。段差が少ない場合は、横に一本の手すりでも問題ないでしょう。
階段の手すりは階段と平行になるように斜めに取り付けます。階段の段の先から垂直に750mm程度が一般的な高さです。また上がった先では手すりが水平になるようにします。水平部分は廊下と同じ高さで考えるため、800mm程度。手すりは高い位置にあると体の重心が後方にかかってしまいます。お年寄りの中には膝が硬く、階段での踏み込みが難しい場合や背中が丸くなっている場合もあります。後方重心になると大きな事故につながるので、実際に高さを確かめてから設置してください。
浴室では、浴槽に体を入れて腰掛ける動作をおこなうために手すりが必要になります。また浴槽に寄りかかった状態から状態を起こすための横手すりと、立ち上がるための縦手すりを設置すると使いやすくなります。手すりの高さは浴槽の深さに合わせて変えるようにしてください。浴槽が深くて狭い場合は手すりが近すぎると体を引き上げにくくなります。体から少し離れた前方や向かった正面に手すりを設置すると、重心移動させながら自然に立ち上がることができます。
トイレの立ち座りは上下運動なので、縦手すりやL字手すりが使いやすいでしょう。縦手すりは便器の先端から200~300mm程度前方が使いやすい位置。
便器に近いと立ち上がった時に、手が後ろになってしまって、そのままバランスを崩します。立ち上がった時にも手すりが体の前方に位置するように設置します。また便器から手すりが遠いと体の重心移動を利用して立てるので、立ちやすくなります。トイレは広さやペーパーホルダーに位置によっても適した手すりの位置が違います。無理な姿勢で使うことがないように手すりを取り付けましょう。
手すりは設置する場所の問題もあり、そもそも手すりをつけられない可能性もあります。また据え置き式の手すりも場所を取るため、設置できないケースがあるでしょう。そんなときには手すりの代わりに家具を設置してみてください。手すりの代わりに、棚や低めの腰かけなどを置くことで、手すりの代わりにして体重を支えることができます。手すりの代わりにする場合は必ず固定して動かないようにしてください。また手すりを設置する前に家具で試すことで、手すりがあった場合のシミュレーションにもなります。
片麻痺の人は手すりを設置するにも、特別な配慮が必要です。片麻痺の場合、方向転換した時にバランスを崩しやすいので、手すりは通常よりも高めに設置します。また手すりは麻痺がない手で持つようにします。片麻痺の人が手すりを使う場合、片手で体を強く引き上げるので、手すりと壁両方に十分な強度が必要です。病院でリハビリをおこなってから退院に合わせて手すりを設置するような場合は、病院や理学療法士、作業療法士と相談して手すりの設置や住宅改修をおこなってください。
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