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福祉用具の種類についてレンタル前に知っておこう!床ずれ防止用具とは

2024年10月21日
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
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床ずれ(褥瘡)とは

床ずれは褥瘡(じょくそう)とも呼ばれます。床ずれは皮膚の一部に長時間体重がかかることで皮膚組織が圧迫されて血液の流れが悪くなり、皮膚や皮膚の内側の組織が壊死してしまうことによって発生します。

人間は長時間同じ姿勢でいることはできません。本人は同じ姿勢でいるつもりでも、実は無意識のうちに身体の向きを変えたりお尻を浮かせたりして圧迫やズレを防止しています。しかし、病気や老化によって身体の動きが悪くなったり、認知症によって体の異常に気付くのが遅くなったりすると、体の一部にかかっている圧迫やズレを防止することが難しくなってしまいます。さらに皮膚が不潔だったり乾燥していたりするところに栄養不足が重なってしまうことによって、皮膚に血液や栄養が十分に行き渡らくなり、床ずれの状態になってしまいます。

症状としては、皮膚の表面が赤くなっているだけの軽いもの(発赤やただれ、水ぶくれ)から、皮膚の表面が壊れて中の脂肪や筋肉、場合によっては骨まで露出してしまう重度のものまでさまざまです。重度なものほど治癒しにくく、再発することもあります。床ずれは放置すると壊死が進行し、傷口から雑菌やばい菌が侵入してしまいます。悪化すると手術によって壊死した部分を切除する治療が必要になります。最悪の場合は敗血症などによって死に至ることもあります。

床ずれができやすい人とは

床ずれができやすい人には、主に以下の5つの特徴があります。

  1. 1日の大半をベッドや車椅子で過ごし、自分の力で寝返りをうったり姿勢を変えたりすることができない人
  2. 食事を十分に摂れない状態が続いている人
  3. 関節の動きに制限があり、伸びたり曲がったりした状態で固まっている人
  4. 浮腫(むくみ)がある人
  5. 尿や便失禁によって皮膚がいつも湿っている人

これらの特徴に1つでも当てはまる人は、どれも褥瘡の原因である“体の一部分への長時間の圧迫やズレ”“血液や栄養の循環が不十分”に直結する状態になっています。床ずれ予防のためには、実際に皮膚に異常が生じる前から対策を講じることが大切です。

床ずれ(褥瘡)ができやすい身体の部分

床ずれができやすい身体の部分について、仰臥位(仰向けに寝ている時)・側臥位(横向きに寝ている時)・座位(座っている時)の3つの姿勢に分けてご紹介します。

1)仰臥位(仰向けに寝ている時)で床ずれ(褥瘡)ができやすい部分

上記の図の通り、後頭部・肩甲骨部・ひじ、仙骨部、かかとにできやすくなっています。円背(背中が曲がっている人)の場合は、背骨が曲がって突出している部分も同様に床ずれの危険があります。

2)側臥位(横向きに寝ている時)で床ずれ(褥瘡)ができやすい部分

上記の図の通り、耳・肩・肋骨・腸骨部・大転子部・膝・くるぶしに出来やすくなっています。また、図にはありませんが肘関節や足の側面なども骨が出ていたり皮膚が薄くなったりしている部分なので、床ずれの危険があります。

3)座位(座っている時)で床ずれ(褥瘡)ができやすい部分

座骨部・尾骨部・肘関節・背骨の突出部(円背時)

特に圧迫力とズレ力は骨が突出している部分に集中するため、床ずれができやすくなってしまいます。

床ずれと腫瘍の進行について

床ずれの進行状態は、通常傷口の深さ(深達度)によって分類されます。に浅い床ずれは短期間で治癒も可能ですが、筋肉や骨にまで傷の深さが及ぶような床ずれは治癒までに1年以上かかります。床ずれの進行状態を客観的に示す方法として最もポピュラーな方法は、NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)が提唱する「ステージ分類」です。進行度によって、4段階のステージに分けて深刻度を表現しています。ここでは、床ずれの進行状態を表す「ステージ分類」を元に症状悪化の過程をご紹介紹介します。

床ずれの進行状態・ステージ1

骨が突出している部分が赤くなり、皮膚を圧迫状態から解放しても赤みが消えない状態のことを言います。この時点では、皮膚はまだ赤くなっているだけです。皮がむけたり皮膚の内側の壊死が始まったりしているような状態ではありません。褥瘡の悪化予防のためには、ステージ1の時点で気付き、適切な対応を取ることが重要です。

床ずれの進行状態・ステージ2

赤くなった部分の皮が剥けて体液が出ていたり出血していたりする状態です。皮がむけていなくても水ぶくれができている場合もステージ2に含みます。体の表面にある表皮だけでなく、その内側にある真皮にも影響が及び、傷口がジュクジュクした状態になります。この時点で適切に治療すれば、1カ月以内に治癒する可能性があります。

床ずれの進行状態・ステージ3

皮膚の壊死が皮下組織まで及んでいる状態です。傷口が皮膚の壊死によって「ポケット」と呼ばれるクレーターのようなものが出現した状態になります。ただし、ステージ3の時点ではまだ筋肉や骨に達するまでの深さには至っていません。ジュクジュクした潰瘍がさらに悪化しており、直ちに専門医から適切な治療を受けなければならない状態です。治癒までにはうまくいっても3カ月〜5カ月程度かかります。

床ずれの進行状態・ステージ4

傷口がどんどん深くなり、筋肉も壊死して骨が目で確認できるほど傷が深くなっている状態です。治療のためには手術が必要なる場合が多く、放置すると敗血症を引き起こして死亡する危険性もあります。患者さんの命を守るためには、このステージ4に至る前に治療をすることが非常に大切です。

床ずれ予防用具とは

床ずれ予防用具とは、体を支える面を変化させたり、より広い面で体を支えたりすることで身体の一部に長時間の圧力がかかることを抑える機能を持つ福祉用具です。ベッドのマットレスの形をしており、ベッドフレームの上に敷いて使用します。電動ベッドと組み合わせて利用することで、最大限の効果を発揮できます。

床ずれ防止用具は自費で購入しようとすると数万~数十万円と非常に高価です。しかし介護保険制度を利用すれば、「床ずれ防止用具」や「体位変換器」の品目でレンタル利用することができます。月800~1,500円程度でレンタルすることができます(自己負担割合が1割の場合)。

介護保険法制度における「床ずれ防止用具」とは普通のマットレスの代わり使用する福祉用具の事をいいますが、マットレス以外にも車椅子のクッションとして使用するタイプもあります。車椅子用の床ずれ防止クッションは“車椅子付属品”という品目で介護保険レンタルすることができます。床ずれ防止用具は、床ずれが発生している人・床ずれが発生する恐れがある人が使用することで床ずれケアの助けになる福祉用具です。床ずれの予防や改善を図るために床ずれ防止用具を使用することにより、要介護者自身の安全な生活だけでなく、世話をする側の負担軽減にも多大な効果が期待できます。

床ずれ予防用マットレス

床ずれ予防用マットレスには、静止型マットレス(低反発マットレス)と圧切替型マットレス(エアマットレス・流動体型マットレス)があります。さらに静止型マットレスには、オーバーレイ(既存のマットレスの上に敷くタイプ)とリブレイスメント(既存のマットレスを外し1枚で使うタイプ)があります。床ずれ予防用マットレスを選ぶ際は、使用者の身体能力や体格、栄養状態などを考慮して総合的に判断することが大切です。ここからは、2種類のマットレスについて選定のポイントや注意点をご紹介していきます。

静止型マットレス

静止型マットレスは、自力で寝返りをうてる人に適したマットレスです。後述する圧切換型マットレスと比較すると、身体を起こしたり足を下したりしたときに姿勢を保ちやすいメリットがあります。横になったときにマットレスが体に沈み込むことで体が触れる面積が広くなり、体圧を分散する効果があります。

材質はウレタン、ウレタン+エアーセル、ウレタン+ゲル等があります。ウレタン製の場合は、使用する人の体重を目安にいくつかの種類から選択できます。またリプレイスメント(既存のマットレスを外し1枚で使うタイプ)には、マットレスの表と裏で柔らかさを変えたタイプがあります。いろいろなタイプを試したい人にはおすすめです。しかし、圧切換型マットレスと比較すると体圧分散能力は高くありません。ずっと寝ているとどうしても皮膚に負担がかかるとともに、皮膚が蒸れて床ずれ悪化の原因となってしまう場合もあるので注意が必要です。

圧切換型マットレス

圧切換型マットレス(エアマットレス・流動体型マットレス)は、自力で寝返りをうつことができない人に適したマットレスです。体圧分散性能が静止型マットレスよりも高くなっています。体重に合わせて空気圧(エア)を調整できるものや、自動でマットレス内の空気の量を変化させて寝返りをうったときのように体圧を逃がす機能が付いているものもあります(自動体位変換機能)。寝たきりでのおむつの使用や食事摂取が不十分で栄養状態が悪く痩せている方等に使用すると、高い床ずれ予防効果が期待できます。もちろん、すでに床ずれができてしまっている方にも高い効果を発揮します。

しかし、圧切換型マットレスは電気で動作する福祉用具なので、電源の確保が必要です。動作制御はマットレスに備え付けられた制御ユニットによって行われますので、停電や制御ユニットの故障が原因で適切な効果が得られなくなってしまう場合があるので注意が必要です。また、初めて圧切換型マットレスを導入するときは使用者に合わせた設定が必要になります。設置の際は必ず担当のケアマネジャーや福祉用品のショップにいる福祉用具専門相談員に相談しましょう。

定期的に身体のチェックをしよう

床ずれは早期発見、予防が大切です。除圧はもちろんですが、皮膚を清潔に保つスキンケアや栄養管理も合わせて行うことが重要です。また床ずれ防止用具は、大半が介護保険を利用してレンタルすることができます。要介護2以上の認定が付いていれば原則1割(所得に応じて2〜3割)の自己負担でレンタルが可能です。基本的に要支援1~要介護1の人は介護保険レンタルの対象外となってしまいますが、一定の条件を満たせば特例的に介護保険適用でレンタルすることも可能です。床ずれが心配な方は一度担当のケアマネジャーや福祉用具のお店に相談してみるとよいでしょう。

床ずれ防止用具を導入したからといって、それで床ずれケアが終わるわけではありません。定期的に本人の心身状態や栄養管理・用具のメンテナンスや見直しを行い、その時々に応じた支援を心掛けることが重要なポイントになります。

著者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

監修者プロフィール

奥川 敦史(認知症介護実践者研修修了)
奥川 敦史(認知症介護実践者研修修了)
静岡市駿河区生まれ。2003年より介護事業運営会社にて訪問入浴の現場業務に関わる傍ら、新規事業所開設の申請や品質管理業務といった運営本部の業務に関わる。その後もグループホーム、デイサービス、サ高住の施設長といった現場業務の他、人事、総務など老人ホーム運営業務全般に携わってきた。また、運営本部の入居相談窓口担当としてのキャリアも長く、様々なケースの相談事例に対応してきた。趣味は家族での動物園巡り。

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