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不満ばかり言う認知症の方への対応方法を紹介③

2024年10月9日
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
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「認知症の家族が不満ばかり言ってつらい」

「円満なコミュニケーションがとれなくなってしまった」

認知症の家族を介護していると、そのような悩みを抱えることもあるのではないでしょうか。認知症の方へ対応するには、病気を正しく理解したうえで本人の存在を受け止めることが大切です。こちらでは、認知症の方に共通する特徴と合わせ、介護負担を軽減する対応方法を紹介していきます。

不満ばかり言う認知症の方に共通する特徴と対応方法

さまざまな原因で脳細胞が減少すると、日常生活が困難となる認知症の症状が現れます。脳細胞の減少は人の記憶や行動、判断力へと影響を及ぼし、問題行動となって現れることもあるのです。会話が攻撃的になり、性格が変わってしまったように思われる症状もそのひとつです。長年ともに暮らしてきた家族にとっては、変化を受け入れることは容易ではありません。繰り返される文句や不満に対応するためには、認知症を正しく理解することがポイントです。認知症の特徴と合わせ、心がけておきたい対応方法を確認していきましょう。

怒りは怒り、優しさは優しさで反映される

認知症の方への対応は、強いものは強く、優しいものは優しい反応として返ってきます。意思疎通が難しくなってくると、ついつい強い言葉で言い返してしまいがちですが、穏やかな言葉がけが重要です。例えば、食事や入浴を拒否する場合には「お風呂で気持ち良くなりませんか」「今日のごはんはおしくできましたよ」など、良いイメージを与える言葉で訴えかけます。「昨日もお風呂に入ってなかったでしょう」「食べてくれないと困ります」のように、責められているような印象を与える声かけは適していません。認知症の方の問題行動には、症状に対処しようという本人の自尊心が影響しているとも考えられます。責め立てるような声かけをされると、「自分は世話をしてもらう必要はない」というような反発心へとつながってしまうのです。また、記憶障害により物事が記憶できなくなった方でも、「良い」「悪い」といった感情は残りやすいと言われています。認知症の方の不安を取り除き、安心感を与えるためにも日頃から優しい言葉でコミュニケーションをとるように心がけましょう。

認知症の方の立場に立てば理解できる

認知症の方の問題行動に、「なんでそんなことをするんだろう」と困惑してしまうこともあるのではないでしょうか。問題行動の裏側には、本人なりの理由が隠れているのです。例えば、深夜に家の中を歩き回るような行為は、症状のひとつである「見当識障害」が関係していると考えられます。見当識障害とは、日付や居場所が分からなくなってしまう症状のことです。健康な方も、旅先で目が覚めると一瞬どこにいるか分からなくなった経験があるのではないでしょうか。同様に、認知症の方も、自分の居場所が分からない不安が深夜の行動となって現れているのです。このような時には、居場所や日付を確認できる目印を作るのがポイントです。部屋の中に時計やカレンダーを置いたり、家族の写真を置いたりするなど、安心できる環境づくりを工夫しましょう。

性的異常行動は、若いころに戻っている状態

認知症が進行すると、性的な異常行動が見られる場合もあります。下半身を露出したり、他者の身体を触ったりする原因となっているのが、「記憶の逆行性喪失」です。記憶が過去に引き戻されることにより、行動自体も若いころに戻ってしまうと考えられます。このような問題行動には、他者への愛情を求める心理が関係するとも言われています。そのため、手を握ったり、同じ目線でゆっくり話しかけたりしながら冷静に対応することが効果的です。こちらが動揺し嫌な反応を見せると、本人は混乱し、さらに症状が悪化することもあるため気を付けましょう。また、食べ物や趣味など、性的なもの以外へ関心を向けることもポイントです。散歩やリハビリで身体を動かすことが効果的なケースもあります。症状がひどく、対応が困難な場合には、薬の処方が必要なケースもあるでしょう。暴力や暴言だけでなく、性的行動も介護者にとっては負担の大きな問題です。ケアマネジャーや医師、看護師などに相談しながら対応策を検討していきましょう。

認知症の人は、想像以上に早く老いる

認知症の方の老化スピードは、認知症でない方の3倍近くになると言われています。つまり、衰弱の進行も早く、健康な方に比べると死亡率も高いと考えられるのです。衰弱は急速に進行することもあり、食事がとれなくなってから数週間で亡くなられるケースも見受けられます。暴言や暴力、徘徊などに悩む時期は長年続くわけではなく、次第に身体が衰え、寝たきりの状態へと移行していくこともあるのです。ただし、アルツハイマー型認知症の中には、20年ほどの年数をかけてゆっくりと進行するものもあります。疾患の原因や環境、介護によっても進行度合いが異なるため、すべての方が早く老いるとは言い切れません。

一方で、認知症の方の症状には変動があり、活動的な時期が何年も続かないと考えられます。「家族の徘徊に気が休まらない」「文句ばかり言われて精神的につらい」といった問題を抱える時期も、長期的なものではないと言えるでしょう。しかし、家族にとって認知症の方の介護は簡単なものではありません。「今後何年も同じ状況が続くわけではない」ということを意識しながら、周囲のサポートを活用することが大切です。医療や介護、地域のサービスを活用しながら、認知症の方との時間を過ごしていきましょう。

認知症の人の世界を理解して大切にする

認知症の方の行動には、症状に対応しようとする本人なりの理由が関係していると考えられます。介護する側にとっては問題だと思えるものにも、何かしらの原因が隠れているのです。認知症の方の介護は、まずは症状を理解し、本人の世界観を受け入れる必要があります。「自分は家族から認められている」「安心できる場所に居る」という安心感が、問題行動の緩和につながることもあるのです。身近な家族から文句ばかり言われることはつらいですが、決して本人そのものが変わってしまったわけではありません。「認知症症状のひとつ」として受け入れながら、無理のない介護を心がけていきましょう。

とはいえ、認知症の症状が進行すると、日常のケアがさらに難しく感じられることが増えるかもしれません。ご家族が安全で安心して過ごせる場所を選ぶことは、介護者にとっても大切な選択です。認知症の方が入居できるグループホームでは、専門的なケアが提供され、少人数の家庭的な環境で生活することができます。家族だけで抱え込まず、プロの支援を受けることで、介護者自身も心身の負担を軽減できるでしょう。

介護者が限界を迎える前に、グループホームの詳細をご覧ください。ご家族にとって最適な施設を見つけ、安心してサポートを受けられる環境を整えましょう。

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著者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

監修者プロフィール

花井 敦由奈(介護福祉士)
花井 敦由奈(介護福祉士)
静岡市駿河区生まれ。大学卒業後、地元の介護事業会社に就職。小規模多機能型居宅介護、デイサービス、訪問介護の現場に従事し、介護福祉士の資格を取得する。訪問介護ではサービス提供責任者として様々な在宅介護の現場を経験。お客様やご家族様とコミュニケーションを図りながらニーズを探り、ケアマネジャーと連携を取りながら様々なケースに対応してきた。

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