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高齢者が食事を食べない・食が細くなった時の対策と食事内容

2024年10月9日
奥川 敦史(認知症介護実践者研修修了)
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高齢者の食事量が減る原因

高齢により食事が減る原因は、いくつかあります。原因として考えられるのは、食べる能力の低下や活動量の減少です。食べられない原因があるため、どのような問題を抱えているのか詳しく紹介します。

歯が悪い等、咀嚼能力の低下

食べる能力の低下として、歯が悪い・咀嚼能力の低下があげられます。高齢者の歯が悪くなる原因としては、虫歯や歯周病などです。とくに注意が必要なのは歯周病のほうでしょう。厚生労働省が発表する「全国抜歯原因調査」の2018年の調査結果によると、虫歯の割合は29%だったのに対し、歯周病は37%でした。歯周病は年齢が上がるほど割合が高くなりやすく注意が必要です。直接的な原因は歯磨きの問題で、毎日歯を正しく磨くようにしましょう。歯磨きだけでは取り除けない歯垢は歯石に変化するため、歯医者さんで定期的に取り除いてもらうと、歯周病予防になります。また、高齢者の食事量が減る原因として、咀嚼力の低下もあるでしょう。咀嚼とは、食べ物を噛む動作のことです。食べ物を噛むだけと思われますが、実際には食べ物を認知して噛み砕き、飲み込んで食道へと送り出す複雑な動作が必要です。高齢の場合は、顎の筋肉量が低下して、長く噛むのが辛くなる場合があるでしょう。

嚥下障害

嚥下障害も、高齢者の食べる量が減る原因のひとつです。咀嚼力の低下とも関係しており、嚥下は食べ物を飲み込むまでの動作を示します。嚥下障害が起こるのは、さまざまな原因が関係します。舌の動き、咀嚼力、唾液量の減少、喉の筋肉量低下などです。嚥下障害がおきている場合は、いろいろなサインが現れるため確認してみましょう。たとえば、汁物が多い食べ物でむせやすくなった、滑舌が悪くなった場合です。汁物でむせやすいのは、食べ物の水分や唾液などが気道に入り込んでしまうためです。また、舌の動きが悪くなると、発音しづらい音が出てきます。嚥下障害が起こる原因は、ほかにも薬物や病気の影響もあります。何が原因か明らかにするため、専門家に相談するといいでしょう。

活動量の減少

高齢者の活動量の低下自体も、食事の量が減る原因のひとつです。活動量が少なければ消費カロリーが少なく、お腹が空きにくくなって食事量が低下します。とくに活動量が低下しやすいのは、過去の怪我や病気が原因になりやすいでしょう。怪我や病気になると安静が必要で、安静により筋肉量が低下しやすいためです。筋肉量が低下すれば、体を動かすのが大変に感じやすく、活動量が下がってしまいます。また、加齢により骨密度の低下も注意が必要です。とくに女性の場合は、閉経によりエストロゲンの分泌量が減り、骨量減少しやすいでしょう。場合によっては、軟骨が変形して痛みがあるため、活動量が低下する場合があります。

高齢者に必要な食事量の目安

高齢の家族の食事量が気になるなら、本当に食事量が減っているか調べてみましょう。食事量が減っているかは、高齢者に必要な食事量と比較するとわかります。高齢者に必要な食事量の目安は、厚生労働省が発表する「日本人の食事摂取基準」が役立ちます。65~74歳までの高齢者が1日に必要とするエネルギー量は、身体活動レベルにより3段階で判断可能です。

男性の場合は以下のカロリーです。
● 活動レベル1:2,050キロカロリー
● 活動レベル2:2,400キロカロリー
● 活動レベル3:2,750キロカロリー

女性の場合は以下のカロリーを目安にしましょう。
● 活動レベル1:1,550キロカロリー
● 活動レベル2:1,850キロカロリー
● 活動レベル3:2,100キロカロリー

また、75歳以上の高齢者は、活動レベル1と2のみです。
● 男性活動レベル1:1,800キロカロリー
● 男性活動レベル2:2,100キロカロリー
● 女性活動レベル1:1,400キロカロリー
● 女性活動レベル2:1,650キロカロリー

食が細くなっている際 低栄養のリスク

高齢者が食が細くなり、低栄養状態になると、体全体にさまざまな健康リスクが生じます。代表的な問題として、低栄養により免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、皮膚に傷ができやすくなる褥瘡(じょくそう)が発生しやすくなります。また、傷ができても治りにくく、創傷治癒が遅れることがよく見られます。これらの問題は日常生活の質を大きく低下させ、長期的な健康に深刻な影響を与える可能性があります。

さらに、低栄養によって筋肉量や骨量が減少すると、転倒や骨折のリスクが増加します。高齢者にとって、転倒や骨折はその後の生活に大きな影響を及ぼし、回復に時間がかかることが多いため、これらのリスクを防ぐことが重要です。また、筋肉量の減少は「サルコペニア」という筋力低下を引き起こし、活動量がさらに減ることで食欲も落ち、悪循環に陥ることが懸念されます。サルコペニアの進行は、単に筋肉が減るだけでなく、歩行や立ち上がりが困難になり、自立した生活が難しくなることもあります。

このような悪循環は、フレイルと呼ばれる状態へと進行しやすくなります。フレイルとは、老化に伴う全身の機能低下を指し、特に要介護状態の一歩手前とされる段階です。フレイルが進行すると、日常的な生活動作が困難になり、さらに認知機能が低下することで、介護が必要になるリスクが高まります。特に認知機能の低下が加わると、フレイルの進行はより急速になりやすく、身体的だけでなく精神的な衰えも進むことがあります。

このため、高齢者の食事量や栄養状態を維持することは、単に健康維持のためだけでなく、転倒予防や生活の質の向上、さらには認知機能の維持にとっても極めて重要です。食欲が低下している場合には、栄養価の高い食事を提供することや、食べやすい形状や味付けに工夫することが求められます。

高齢者の食欲低下への対応方法

高齢の家族の食事量が減っている場合には、さまざまな工夫を試して、食欲を引き出す方法を探ることが大切です。まず、誰かと一緒に食事をすることが効果的な場合があります。食事を共にすることで会話が生まれ、食事自体が楽しい時間になり、自然と食欲が増すことが期待できます。孤食による食欲低下はよく見られる問題なので、家族や介護者が一緒に食べることで、食事への意欲を取り戻す手助けになるでしょう。

また、食事の量が多く感じられる場合には、料理を小分けにして出すことも有効です。一度にたくさんの量を目の前にすると、圧倒されてしまい食欲がさらに低下してしまうことがあります。小分けにすることで、食べやすさが増し、少しずつでも食事量を増やすことができるかもしれません。見た目にも配慮し、色とりどりの食材や器を使うと、視覚的に楽しむ要素が加わり、食べることへの意欲を引き出すことができます。

さらに、料理の香りを活用することもおすすめです。食欲は視覚や味覚だけでなく、嗅覚にも大きく影響されます。香りのよいスープや焼き物の香ばしい匂いなどは、食欲をそそり、自然と食べる気持ちを刺激します。また、香りの強いハーブやスパイスを使うことで、味に変化を加え、飽きがちな食事に新鮮さを与えることができます。特に、普段の食事に飽きてしまった場合、少し風味を変えることで興味を持ってもらうことができるでしょう。

これらの工夫を取り入れることで、高齢者の食事量を増やし、栄養不足を防ぐことが可能です。大切なのは、無理に食べさせるのではなく、食事を楽しく、気持ちよく摂取できるようにサポートすることです。

高齢者の食事について

高齢者の食事量低下について理解を深めたい場合は、「食事バランスガイド」を参考にするのも有効です。このガイドは、1日にどのような食品をバランスよく摂取すべきかを視覚的に理解できるよう、イラストを使って解説しています。主食(ご飯やパンなど)、副菜(野菜や海藻類)、主菜(肉や魚、豆類)、牛乳・乳製品、果物の5つのグループに分け、それぞれがどのくらいの量必要かがわかりやすく示されています。

このガイドの大きな特徴は、「コマ」の形をしたイラストを使って、食事バランスの重要性を視覚的に捉えられることです。コマの回転を維持するには、すべての栄養素をバランスよく摂取する必要があるというコンセプトで、どの栄養素も偏らずに取ることが大切だと教えてくれます。特に高齢者は、食事の量が減りがちで特定の栄養素が不足しやすいため、このガイドを参考にすれば、毎日の食事にどのような食品を取り入れるべきかが一目でわかります。

例えば、主食はエネルギーの源として重要ですが、副菜で摂取する野菜や海藻はビタミンやミネラルを補う役割を果たし、主菜のたんぱく質は筋力維持に役立ちます。牛乳や乳製品はカルシウムを補給し、果物はビタミンや食物繊維を豊富に含んでいるため、全体的なバランスを考慮することが高齢者の健康維持に大変重要です。

このように、視覚的なツールを利用することで、毎日の食事が偏らないよう工夫しやすくなります。ぜひ「食事バランスガイド」を日々の献立作りに役立てて、高齢者が栄養不足に陥らないようにサポートしてみてください。

高齢者が食事を食べない時 食事自慢の施設を検討してみよう

介護を続ける中で、家族の食が細くなり、栄養が足りているのか不安になることはありませんか?愛する人に健康でいてほしい、栄養のある美味しい食事を摂らせたいという気持ちは強くなりますよね。しかし、毎日の食事作りや栄養管理は、介護者にとって非常に大きな負担です。どんなに工夫をしても、家族が食べてくれない姿を見て、焦りや無力感を感じることも少なくないでしょう。

そのようなときは、食事に特化した介護施設を利用するという選択肢を検討してみてください。食事自慢の施設では、栄養バランスに配慮した上で、見た目の美しさや味わいも重視し、食事が楽しみになるような工夫を凝らしています。食べることへの喜びが増し、日常生活に活力を与える可能性もあります。食事を楽しむ時間は、健康だけでなく、精神的な幸福感にもつながる重要な要素です。

家での食事に限界を感じ、家族の食が細くなってきたときは、無理をせず施設の力を借りることも大切です。専門スタッフのサポートを受けながら、家族が美味しい食事を楽しむことができる環境は、あなた自身の負担を軽減し、介護の質を向上させるでしょう。家族が安心して食事を楽しめる場所が、介護者にとっても大きな支えとなります。

食事にこだわった施設を探したい場合は、ぜひ「静岡老人ホーム紹介タウンYAYA」をご活用ください。見学や相談はいつでも受け付けております。私たちは、大切なご家族が安心して生活できる環境を提供し、介護者の負担を少しでも軽減するために全力でサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

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著者プロフィール

奥川 敦史(認知症介護実践者研修修了)
奥川 敦史(認知症介護実践者研修修了)
静岡市駿河区生まれ。2003年より介護事業運営会社にて訪問入浴の現場業務に関わる傍ら、新規事業所開設の申請や品質管理業務といった運営本部の業務に関わる。その後もグループホーム、デイサービス、サ高住の施設長といった現場業務の他、人事、総務など老人ホーム運営業務全般に携わってきた。また、運営本部の入居相談窓口担当としてのキャリアも長く、様々なケースの相談事例に対応してきた。趣味は家族での動物園巡り。

監修者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

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