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【電動カートの基礎知識】特徴や選び方を解説

2024年8月30日
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
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高齢者の自動車事故が後を絶たない昨今、運転に不安を感じる高齢ドライバーが免許証を返納するケースが増えています。しかし、車の運転を辞めたことで行動範囲が狭まり、身心機能の低下を招いているケースも少なくありません。そこで注目したいのが「電動カート」です。今回は、電動カートに関する以下の情報についてご紹介していきます。

  • 電動カートとは
  • 電動カートの特徴
  • 電動カートのメリット
  • 電動カート選びのポイント

この記事を読めば、より豊かな生活を送るための電動カートの選び方が分かります。

電動カートとは

電動カートとは、バッテリー(電気)を動力源にして三輪や四輪で動く1人乗り用の乗り物です。手元にあるアクセルレバーやスティックレバーを操作することでモーターが動き、前後左右に方向転換ができるようになっています。そのため狭い屋内スペースや外出先での長時間にわたる移動も可能です。また時速6Km以下の速度制限を設けているため、安心して乗車できます。

歩行能力が低下している方や自走式車椅子の操作が難しい方に向いています。なお、電動カートは介護保険制度上「車椅子」の分類にカテゴリ分けされています。バッテリーで動作する「電動車椅子」と共に保険給付の対象となり、要介護2以上の認定があればレンタル利用することも可能です。また、道路交通法上は「身障者用車椅子」と定義されており、「歩行者」として取り扱われます。以上のことから、今回の記事では「電動車椅子」についても電動カートの一部としてご紹介していきます。

電動カートの特徴

電動カートは、操作方法や対象となる方により下記の3つの種類に分類されています。

  • 自操用ハンドル型
  • 自操用標準型・簡易型
  • 介助用簡易型

ここでは、電動カートの特徴について種類別にご紹介します。

自操用ハンドル型

高齢者向けの電動カートと聞いて、最もイメージする方が多いタイプがこちら。シニアカーとも呼ばれ、三輪もしくは四輪でスクーターのようなハンドルが付いた乗り物です。スクーターのようにアクセルレバーを回して操作します。重量が約80キロあるため、凹凸した道路などでも安定した移動が可能です。また車両前方にカゴを搭載しているものが多いため、買い物での利用にも便利です。認知症がなく、「屋内は何とか歩くことができるけど長距離を歩いて外出するのが難しい」という方に向いています。

自操用標準型・簡易型

いわゆる電動車椅子で、身体障がいをお持ちの方が良く使用しているタイプです。車椅子に電動の動力源と操作用のスティックが付いた形になっています。標準型は初めから動力部を内蔵した設計であるのに対し、簡易型は通常の車椅子に動力装置を後付けしたものという違いがあります。利用者自身がジョイスティックレバーを操作して前後左右に移動でき、片手の指先のみでも操作が可能です。片麻痺がある方や障がいにより手の力が弱い方でも操作が可能です。タイヤが太いタイプであれば、屋外でも安心して使用できます。また、簡易型は軽量で折り畳みができるため持ち運びにも便利です。

介助用簡易型

通常の車椅子に動作を補助する電動ユニットを取り付けたタイプです。使用者が自分で操作するためのレバーはありません。電動ユニットは介助者が車椅子を押したときの動きに連動して作動し、軽い力で車椅子を操作できるようにアシストします。介助者がいる前提で作られた車椅子であり、介護度が高く自分では操作ができない方に向いています。電動アシスト自転車のように操作をサポートしてくれるため、坂道など介助に力が必要な場所を移動する際に便利です。

電動カートのメリット

電動カートには、手動型の車椅子にはないメリットがあります。主なメリットが下記の3つです。

  • 自力で移動ができる
  • 付き添いの介助の負担軽減
  • 免許不要で操作が可能

この章では、電動カートのメリットについてご紹介します。

自力で移動ができる

バッテリーを搭載しているため、力が弱い方でも楽に移動することができます。また、段差や坂道など普通の車椅子では自力操作が困難な場所や、通院や買い物などで外出の際にも便利です。

付き添いの介助の負担軽減

利用者自身の意思や都合で自立した移動や外出が可能になるため、介助する家族や友人などの手を借りなければならない場面が減ります。また利用者の活動範囲が広がることで、生活にハリが生まれ、生きる喜びにもつながります。

免許不要で操作が可能

電動カートは、道路交通法において歩行者の扱いとなっています。自動車のような運転免許がないので、免許を返納した人でも公道を移動できるので、活動範囲が広がります。活動範囲が広がることで、生活にハリが生まれ、生きる喜びにもつながります。また、操作を行わない時には電動カートが勝手に進まないようタイヤにロックがかかる機能も搭載しているため、安全性にも優れています。

電動カート選びのポイント

電動カートは、運転免許が不要なうえに操作が簡単で自力で移動が可能です。さらには付き添いの方の負担も軽減できる非常に便利な乗り物です。しかし注意を怠ると大変危険な目に遭遇することもあります。電動カートを安全に使用するためには、以下の3つのポイントを意識して選びましょう。

  • 利用者の体に合う
  • 自宅周辺環境を確認
  • バッテリーの交換タイミングを確認

この章では、電動カートを正しく選ぶためのポイントについてご紹介します。

利用者の身体に合う

電動カートは、利用者の心身状態に合わせたものを選ぶことが重要です。例えば、電動カートに座った際に座った姿勢をちゃんと維持できるかどうか確認します。長時間座っても疲れにくい機種を選びましょう。また、電動カートに乗ると立った時よりも視認できる範囲が狭まるので、無理なく周囲を見回して安全確認を確実に行えることも重要です。さらには、電動カートの操作にはそれなりの判断力と対応力が必要です。認知症によって的確な操作ができない場合は付き添いの介助者が必要になるので、介助用簡易型から商品を選択することになります。

自宅周辺環境を確認

主に使用する場所の周辺環境を確認し、状況に合わせたものを選びます。屋内の場合には狭いスペースでも方向転換できるのか、屋外の場合には坂道や段差などで使用できるのかをチェックします。通院や買い物の外出に使用する場合は、電動カートでも進入が可能であるのかを事前に下見しておくことも重要です。

バッテリーの交換タイミングを確認

電動カートは、搭載されたバッテリーを動力源としてモーターを動かします。当然ながらバッテリーが切れれば動かなくなるので、交換や充電のタイミングには特に注意が必要です。搭載されているバッテリーには寿命があります。メーカーによって性能は異なるものの、バッテリーの寿命は約1年〜3年、充電回数にして約400回程度と言われています。充電は1回あたり約3時間〜4時間で満充電になります。走行距離は自操用ハンドル型で約20km〜30km、自操用標準型および簡易型で約10km〜20km、介助用簡易型で約10kmが目安です。走行環境や使用環境・気温によってバッテリーの持ち時間や劣化の進み具合が変化することも覚えておきましょう。

より快適な生活をするために

車椅子の女性と介護士

ここまでは、電動カートを使用するメリットや選び方のポイントについて下記の通りご紹介してきました。

  • 電動カートとはバッテリー(電気)を動力源にして三輪や四輪で動く1人乗り用の電動の乗り物で、電動車椅子に分類されている
  • 電動カートは、「自操用ハンドル型」「自操用標準型・簡易型」「介助用簡易型」の3種類がある
  • 電動カートのメリットは「自力で移動ができる」「介助の負担軽減」「免許不要」
  • 電動カート選びのポイントは、「利用者の体に合う物を選ぶ」「行動範囲の環境を確認する」「バッテリー交換のタイミングを確認しておく」

これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。

著者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

監修者プロフィール

竹花 渉(介護福祉士)
竹花 渉(介護福祉士)
富士宮市生まれ。大学を卒業後、地元静岡県に戻り介護事業会社に就職。グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、デイサービス等の現場経験を経て介護福祉士を取得。富士市内のデイサービスの管理者としても従事してきた。現場業務のみならず売上管理や様々なケースのお客様対応、スタッフとのコミュニケーションなどを経験し、施設運営のノウハウを身につけてきた。

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