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家族が認知症と診断されたら、まずは介護保険の利用を検討することになります。制度を利用する際は必ず要介護認定を受ける必要があるのですが、どうすれば手続きできるのか分からず不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、今回は認知症と診断されたときに行いたい要介護認定の手続きや介護保険サービスの内容についてご紹介していきます。この記事を読めば、介護保険制度の概要が分かります。ぜひ、最後までご覧ください。
目次
認知症の診断を受けて介護サービスの必要性が出たら、まずは「要介護認定」の手続きを行いましょう。要介護認定はお住いの市区町村にある介護保険課などの担当窓口か、中学校区単位で設置されている地域包括支援センターで受け付けています。
要介護認定を受けるうえで特に知っておいていただきたい点が、以下の2つです。
この章では、要介護認定の基礎となる部分についてご紹介してきます。
要介護認定は「自立(非該当)」「要支援1・2」「要介護1~5」に分かれています。「自立(非該当)」は介護保険制度の対象外という意味の判定で、一部のサービスを除いて介護保険制度を利用することはできません。要支援と要介護のポイントは以下の4つです。
要支援の認定を受けた方は、「介護予防サービス」を利用します。在宅で要介護状態にならないようにすることを目的としたサービスです。
一方で、要介護1~5の認定を受けた方は「介護サービス」を利用することができます。介護サービスは在宅の要介護者向けの「居宅サービス」、施設に入所していただいて介護やリハビリを行う「施設サービス」、居住する地域の強みを活かしたきめ細やかな支援を実施する「地域密着型サービス」と多種多様です。
要介護認定のもう一つの特徴は、要介護度によって保険適用となる料金の上限が変わるということです。介護保険制度には要介護度の区分ごとに「区分支給限度基準額(以下、支給限度額)」が定められています。支給限度額の範囲内であれば利用者の自己負担割合(1~3割で、本人の収入等によって定められる)に応じて介護サービス利用料が割引されるという仕組みになっています。なお支給限度額を超えた場合は保険適用外となり、超過した分が全額自己負担(10割負担)となって利用料が非常に高額になってしまいます。
【要介護度別 区分支給限度基準額】
介護度 | 利用限度額 |
要支援1 | 50,320円 |
要支援2 | 105,310円 |
要介護1 | 167,650円 |
要介護2 | 197,050円 |
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
例えば要介護1の方の場合、介護保険サービスを16,765単位分利用した時の自己負担額が最大16,765円で済むという計算になります(自己負担割合1割・1単位=10円の地域の場合)。ただし同じ条件の人が20,000単位分の介護保険サービスを使うと、支給限度額を大きく超過するため、自己負担額は49,115円にまで膨れ上がってしまいます。
このことから、通常はケアマネジャーと相談しながら区分支給限度額の範囲内で収まるよう、利用する介護保険サービスの種類や回数を調整するのが一般的です。
認知症になった時には要介護認定の申請をおすすめするとご紹介しましたが、実は申請にはメリットとデメリットがあります。特に申請直後から介護サービスを利用したいと考えている場合は、思わぬ高額請求トラブルを回避するためにも要介護認定の特徴を正しく理解しておくことが必要です。
【要介護認定のメリット・デメリット】
メリット | デメリット |
要介護認定は申請日に遡って有効となるため、 結果が出る前から介護保険サービスを 利用することができる | 医師の診察を 受ける必要がある |
要介護認定の結果によっては「障害者控除」や 「医療費控除」の対象となる | 結果が出るまで 時間がかかる |
認定を受けたとしても社会的なデメリットはない (例:運転免許が無効になる 等) | 思ったよりも軽い(重い) 認定結果が出る可能性がある |
要介護認定は役所に申請書類を提出した日に遡って適用されるため、要介護度が確定する前でも介護保険サービスを利用することが可能です。また、自治体によって詳細は異なるものの要介護度のレベルによっては「障害者控除」の対象となり、また介護保険制度の医療系サービスは「医療費控除」の対象ともなっているため、確定申告の際に申告することで所得控除を受けることができるようになります。
さらに言えば、単に要介護認定を受けたことを理由に運転免許が無効になるなどの社会的なデメリットもありません。中には自分で車を運転してデイケアに通っている人もいるくらいなので、気兼ねなく申請することが可能です。
介護認定を受けるためには医師の診察が必要です。認定の際、担当する医師が自治体に対して「主治医意見書」を提出する必要があるからです。普段医師にかかっていない場合も必ず受診先を決めて一度は受診することを求められるので、覚えておきましょう。
また、申請してから結果が出るまでは通常1~1.5ヶ月ほどかかります。結果が出てから介護サービスを利用したいと考えている場合は、思いのほか待たされる場合があるので注意が必要です。
最も注意するべきデメリットは、予測した要介護度と実際の認定結果が異なる場合があることです。仮に認定結果を待たずに介護保険サービスを利用している場合、予測よりも軽度と判定された場合は思わぬ高額請求となるリスクがあります。また、通所系のサービスは要介護度が高ければ高いほど1回当たりの料金が高くなるので、介護度が重度であればあるほどよいというものでもありません。
特に申請と同時に介護保険サービスを利用したいと考えている場合は、ケアプラン作成を依頼するケアマネジャーさんとよく相談し、デメリットやリスクを把握したうえで手続きを進めることが非常に重要になります。
要介護認定を受けることができるのは、次のいずれかの条件に当てはまる場合です。
① 65歳以上で何らかの支援が必要になった者
② 40歳~64歳で健康保険に加入しており厚生労働省が定める16の特定疾病 を原因として何らかの支援が必要になった者
認定がおりるまでの手順は、大きく分けると以下の4段階で説明することができます。
それぞれの段階ごとに手続きの流れをご紹介していきます。
要介護認定を受けるためにまず行うことは、要介護認定の申請です。介護保険を管轄しているのは住民票がある市区町村を管轄している役所です。そのためお住まいの地域の市区町村役場にある介護保険担当窓口に申請書を提出することになります。申請は市区町村役場だけでなく、中学校区単位で設置されている地域包括支援センターでも行うことができるので、地域包括支援センターに行けば介護相談も一緒にできて一石二鳥です。
申請書の様式は窓口で受け取ることもできるので、必要書類を持って窓口に行けばその場で書いて提出することが可能です。自治体のホームページからダウンロードすることが可能な場合もあるので、お好きな方法で大丈夫です。
申請書を提出してからしばらくたつと、市区町村から「認定調査」実施の連絡が来ます。認定調査とは、日常生活における心身状態と介護の必要性について聞き取りを行う調査です。
調査は直接本人と面談して実施する必要があるので、本人にも説明しておきましょう。また、日頃の様子を詳しく聞き取らないと正しい認定結果が出ないため、日頃本人のお世話をしている人が必ず立ち会うようにします。認定調査は全74項目で、調査の際は実際に本人や立ち合い者に質問したり、項目ごとに介助の内容や介助が必要になる頻度について詳しく聞き取ったりします。
【調査項目概要】
第1群 | 身体機能・起居動作 ※麻痺や拘縮(関節可動域の制限)、寝返り、歩行などの基本的な動作や立ち座りの能力に関する評価 | 13項目 |
第2群 | 生活機能 ※日常的な移動の方法や介助内容、排泄や更衣に関する能力や介助の方法などの日常生活維持に必要な能力に関する項目 | 12項目 |
第3群 | 認知機能 ※意志の伝達能力(妥当性は問わない)、短期記憶、年齢や氏名・季節の理解などの基本的な認知機能に関する項目 | 9項目 |
第4群 | 精神・行動障害 ※認知症状などによって起こる「暴力行為」「帰宅願望」「被害妄想」といった行動障害の有無や頻度に関する項目 | 15項目 |
第5群 | 社会生活への適応 ※金銭管理や日常の意思決定(妥当性は問わない)などの地域での社会生活や日常生活を営むために必要な能力に関する項目 | 6項目 |
その他 | 過去14日間に受けた特別な医療について ※医師の指示による点滴治療や褥瘡の処置などの特別な医療行為に関する項目 | 12項目 |
具体的な調査項目の例は以下の通りです。
【調査項目1-1 麻痺等の有無】
・両手を前方および側方に自力で挙上させる。水平まで挙げて静止させることができれば「麻痺なし」。水平まで挙げることができなかったり、挙げた状態で静止させることができなかったりすれば「麻痺あり」。
・椅子に座った状態もしくは仰向けになった状態で両足の膝から下を水平まで自力で挙上させる。水平まで挙げて静止させることができれば「麻痺なし」。水平まで挙げることができなかったり、挙げた状態で静止させることができなかったりすれば「麻痺あり」。足を挙上させる際に太ももから挙上しないと足が上がらない場合も「麻痺あり」。
※例えば脳梗塞の後遺症で痺れがあることのみをもって「麻痺」とするわけではなく、あくまで両手足を既定の高さまで挙げたうえで静止させることができるかで判断する。
【調査項目2-2 移動】
日常生活において、食事や排泄、入浴等で必要な場所に移動する際に見守りや介助が行われているかを聞き取りによって確認する。歩行能力そのものを問うのは別項目であり、この項目ではあくまで移動に関する介助の方法を確認する。
・介助されていない→介助の必要がない。もしくは外出時に限られるなど介助が必要な頻度が少ない状態。
・見守り等→転倒を回避するために常時付き添う必要がある場合や、認知症等によって確認・指示・声かけ等が必要な場合。
・一部介助→介助者が手を添えた体を支える、手引歩行をする、車椅子移動の一部に介助を要する場合等。
・全介助→例えば車椅子を自分で操作できない場合等、移動行為全てに介助を要する場合。ただし、本人が車椅子を操作できるのに介護者の都合で介助している場合は含まない。
【調査項目5-3 日常の意思決定】
日常生活における活動に関して自分で決めているか(何を食べるか、どこに行くか、何をしたいか 等の基本的な事柄)を評価する。意思決定内容の妥当性は問わず、あくまで本人の意思で物事を決めているかどうかで評価する。
・できる→日常的に意思決定ができる。
・特別な場合を除いてできる→ケアプラン作成や治療方針の決定など複雑な内容を決めることはできないが、慣れ親しんだ生活状況の中での基本的な意思決定ができる。
・日常的に困難→慣れ親しんだ日常生活の中でもほとんどできないが、介護を拒否する、2択であれば選択するなどの簡単な無いようであれば決めることができる。
・できない→意思決定が全くできない。もしくは、意思決定ができるかどうか確認できない。
このように、認定調査の内容や項目ごとの定義が全国一律の基準で細かく定められています。調査時の選択基準が独特で、一般の人が感じている内容とは異なる評価になる場合もあることから、事前に調査内容を理解しておくと安心です。
要介護認定の判定は、一次判定と二次判定の2段階に分けて行われます。一次判定では、認定調査を元に機械的に算出される要介護度を算出します。その後二次判定において、最終的に要介護度を決定します。
【判定手順① 一次判定】
まずは認定調査の結果を元に「要介護認定等基準時間(統計データに基づき推計された介護に要する時間)」を算出する専用のコンピュータに入力します。算出された要介護認定基準時間のみで機械的に判断される認定結果が一次判定です。
【要介護度別 要介護認定基準時間】
分類 | 状態 |
非該当 | 要介護認定等基準時間が25分未満と認められる状態 |
要支援1 | 要介護認定等基準時間が25分以上32分未満 又はこれに相当すると認められる状態 |
要支援2 要介護1 | 要介護認定等基準時間が32分以上50分未満 又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護2 | 要介護認定等基準時間が50分以上70分未満 又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護3 | 要介護認定等基準時間が70分以上90分未満 又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護4 | 要介護認定等基準時間が90分以上110分未満 又はこれに相当すると認められる状態 |
要介護5 | 要介護認定等基準時間が110分以上 又はこれに相当すると認められる状態 |
【判定手順② 二次判定】
「一次判定の結果」と要介護認定申請時に申告した医師が作成する「主治医意見書」が揃ったら、二次判定に進みます。二次判定では、市区町村が設置する「介護認定審査会」で複数の有識者や学識経験者が直接審査したうえ、最終的な要介護度を決めます。
認定結果は、申請書に記載された住所に郵送で届きます。本人の手に渡ると紛失する可能性があるなどの理由で住所以外の送付先を希望する場合は、申請するときに忘れず申告するようにして下さい。
要介護認定の結果は、申請をしてから原則30日以内に結果を通知しなければならないと介護保険制度で定められています。しかし、実情としては1.5~2ヶ月ほどかかる場合があります。最終的に保険対象外になって自己負担額が増えるリスクはあるものの、結果が出る前でも申請さえしてあれば介護保険サービスを利用することが可能です。介護が大変で認定結果を待っていられない場合は、速やかに地域包括支援センターに相談することをおすすめします。
要介護認定の調査を受ける際、正しく対応しないと実態に沿った結果が出ない可能性があります。例えば、「普段は杖がないと歩けないのに、何にも掴まらずに歩いてみせる」「認知症による症状で介護の手間があるのに、本人が調査員に対して『あれもできる、これもできる』と事実と異なる説明をしてしまう」といった場合にです。次の点に注意し、認定調査に臨みましょう。
この章では、調査を受ける時のポイントについてご紹介します。
調査員から認知症による困りごとを理解してもらうためには、普段の様子と実際の介護の手間や頻度を具体的にメモしておくことが重要です。
認知症の方の場合、悪いところをみせたくないという想いから、調査員に対して事実と異なる話をして取り繕ってしまうことがあるからです。また、認知症による困りごとを家族が本人の目の前で説明すると、プライドを傷つけてしまうことも考えられます。
認知症の症状による介護の手間は、実際の言動や発生頻度によって評価します。事前に普段の様子や介護の手間を具体的な行動の様子や発生の頻度と共にメモしておくことで、分かりやすく調査員に伝えることができます。また、もし本人の目の前で説明することがはばかられる場合は、そのままメモを調査員に渡す方法でも充分に伝えることができます。
万が一認知症の本人が「自分は何でもない」と主張した場合、介護者である家族からの情報がないと適切に評価されず、軽度判定されてしまいます。メモを上手に活用することが、正しい結果を得るためのポイントです。
先ほどもご紹介したとおり、特に認知症の方の中には他人に自分のことをよく見せようとしてしまう方がいます。このような場合、認知症の方本人のみの調査では、正しい調査結果を得ることができません。
調査員の方は初対面になるので、本人とのやり取りだけで認知症の症状を理解することは非常に困難です。必ず家族の中で本人の日頃の状態を説明できる方が調査に同席するようにしましょう。
「要介護認定の判定」の章でも触れましたが、要介護認定には「主治医意見書」が必要です。どの医師に書いてもらうかは申請者が決めることができ、申請書に記載する形で市区町村へ報告します。この意見書は「二次判定」の際に結果を左右する重要な指標となるので、どの医師から書いてもらうかが認定結果の分かれ目となります。主治医意見書には、以下の内容が記載されます。
例えば、普段は内科のみ受診し、認知症に関する薬も内科から出してもらっている場合は内科の医師を主治医になります。両変形性膝関節症が要因で要介護状態の方は整形外科、大腸がんが原因で要介護状態の方は消化器科の医師を主治医として申告します。これと同じように、認知症の対応に困って精神科・診療内科・神経科・物忘れ外来などの認知症専門医を受診している場合は、認知症専門医を主治医として申告するようにしましょう。
なぜ要介護認定が必要になっているのか、その原因は何の病気によるものなのかによって意見書を書いてもらう医師を決めることも、正しい認定結果を得るための重要なポイントです。
要介護認定の結果に納得できない場合は、手続きを踏むことによって審査のやり直しを求めることができます。やり直しの請求には、「区分変更申請」と「不服申し立て」の2種類があります。また、場合によっては有効期間満了を待って「更新申請」を実施した方が有利なケースもあります。
具体的な方法とそれぞれのポイントは以下の通りです。
手続きの名称 | 区分変更申請 | 不服申し立て |
申請方法 | 「要介護認定変更申請書」を市区町村の担当窓口に提出 | 「審査請求書」を都道府県ごとに設置の介護保険審査会(市区町村の介護保険担当窓口でも可)に提出 |
請求可能期間 | 定めなし | 要介護認定が通知されてから90日以内 |
概要 | ・認定当初より状態が悪化(改善)した人が対象で、現在の心身状況を改めて調査した上で、再度要介護認定を行う。 ・「不服申し立て」よりは早く再審査の結果が分かる。 ・1回目の要介護認定申請をした日から区分変更申請をするまでの間は1回目の要介護認定の結果で確定する。 | ・「介護認定(主に認定調査)」のプロセスが法令等に従って正しく行われたかどうかを判断する。 ・認定調査や主治医意見書、認定審査会の審議内容を問うものではなく、あくまで審査の手順が正しく行われたかを審査する。 |
デメリット | ・区分変更申請から結果が出るまで1~1.5ヶ月程かかる。 ・変更申請中も介護保険サービスを利用することができるが、予測した介護度と異なる場合は予想外に自己負担が発生する可能性がある | ・不服申し立て自体では介護度の見直しをするわけではない。 ・審査には3ヶ月程度かかり、不当と裁定された場合に改めて再度認定調査から実施されるため、解決するまで相当な日数がかかる |
どちらも要介護認定の結果に不服がある場合に行うことができる手続きですが、「不服申し立て」の場合は相当な日数を要します。早く解決したいのであれば「区分変更申請」を実施する方が妥当です。なお、仮に「区分変更申請」や「不服申し立て」を実施したとしても必ず結果が覆ったり納得する結果になったりするとは限りません。場合によっては1回目の認定よりも軽度で判定される場合や、結果に変わりがないので申請自体を却下される場合もあるので覚えておきましょう。
要介護認定によって利用できるサービスのうち、自宅で生活している方が利用できるサービスを大きく分けると以下の4種類に分類できます。
それぞれのサービスの具体的な内容についてご紹介します。
自宅にいながら利用できる介護保険サービスは、以下の8種類です。
自宅にホームヘルパーが訪問し、排泄・入浴・食事介助などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物代行などの家事援助を行います。家事援助については、同居の家族がいる場合は基本的に利用することができません。「通院等乗降介助」と呼ばれる介護保険対応の介護タクシーも訪問介護の分類です。
自宅に看護師と介護職員が訪問し、ボイラー付きの専用車両と持参した持ち運び式の浴槽を使用して入浴介助を行います。
看護師が自宅を訪問し、医療的ケアや服薬管理・緊急時対応・療養上の相談や指導を行います。リハビリの専門職が自宅を訪問し、リハビリテーションを行うこともできます。利用するためには主治医の指示が必要です。
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリの専門職が自宅を訪問し、リハビリテーションを実施します。訪問リハビリテーションの場合は、主治医から許可を得た後に訪問リハビリテーションの事業所に所属する医師が定期的に診察し、指示を出す必要があります。
夜間(18時~翌朝8時)専門の訪問介護で、定時で訪問して排泄や安否確認などの支援を実施します。例えばベッドから転落して自力で起き上がれなくなった場合など臨時で介護が必要になった時も連絡を受けて駆け付けます。普通の訪問介護と違い、身体介護のみ対応しています。
ホームヘルパーや看護師が配置されており、24時間365日、必要性に合わせて利用者の自宅を訪問し、身体介護・家事援助・医療的ケアなどの対応を行います。
自宅に医師・栄養士・薬剤師・歯科衛生士などが訪問し自宅療養に関する指導や助言を行います。利用には医師の指示が必要です。
自宅をケアマネジャー(介護支援専門員)などが訪問し、利用者に応じたケアプランを作成して介護保険サービスの利用につなげます。要支援の方の場合は地域包括支援センターの職員が対応するため 、ケアマネジャーだけでなく社会福祉士や保健師の資格でケアプランを作成する場合もあります。
自宅から通うことで利用できる通所の介護保険サービスは、以下の7種類です。
施設に通い、入浴・食事・排泄などの身の回りの介護やレクリエーションに関する支援を受けるサービスです。家族の介護負担軽減も事業目的のひとつです。機能訓練も受けることができますが、後述の通所リハビリテーションとは違ってリハビリ専門職の配置が義務付けられていない点には注意が必要です。
施設に通ってリハビリテーションを受けるサービスです。入浴・食事・排泄などの身の回りの介護も受けることができます。リハビリの専門職が配置されており、主治医の指示の下で専門的なリハビリテーションを実施します。
定員19名未満の小規模なデイサービスです。ゆったりとした雰囲気で過ごせるため、大人数が集まる施設は苦手な人にも向いています。
医療的ケアに特化したデイサービスです。常に看護師による支援が必要な難病や認知症患者、重度障害がある要介護者、終末期ケアが必要な方などを対象にしています。医師や訪問看護ステーションなどと連携してサービス提供が実施されます。
認知症の診断を受けている人が利用できる、認知症に特化したデイサービスです。単独タイプや通常のデイサービスに併設されたタイプ、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)に併設されているタイプなどがあります。特にグループホームに併設されているタイプは1回当たりの料金が安いため、毎日定期的に通う必要がある方にも適しています。
一定期間介護施設に入所し、昼夜問わず身体介護や身の回りのお世話を受けることができるサービスです。単独型と、特別養護老人ホームに併設されているタイプがあります。デイサービスは送迎料金が基本料金に含まれている一方で、ショートステイは送迎にかかる費用は別料金となっています。「負担限度額認定制度」の対象の方であれば食費や滞在費の助成を受けることができます。
介護老人保健施設や診療所などの医療機関に併設されているショートステイです。通常のショートステイよりも医療的ケアやリハビリの機能に優れています。「負担限度額認定制度」の対象の方であれば食費や滞在費の助成を受けることができます。
通い・訪問・宿泊を組み合わせて利用できる介護保険サービスは、以下の2種類があります。
通い・訪問・宿泊を組み合わせて利用できる月額制のサービスです。ケアマネジャーも配置されており、利用者のケアプランを担当します。デイサービス・ホームヘルパー・ショートステイ・居宅介護支援(介護予防支援)の機能を持っているため、顔なじみの関係の中で総合的で多様な支援を受けることができるのが特徴です。
小規模多機能型居宅介護にプラスして、さらに訪問看護の機能も担うサービスです。
自宅での介護環境を整えるための介護保険サービスとして、以下の3種類があります。
電動ベッド、車椅子、歩行器などの全13品目から必要な用具を月額制でレンタルできるサービスです。用具の中には要介護度によってレンタルが制限される品目もあります。具体的な対象品目は以下の通りです。
入浴や排泄に関連する用具など、直接人の肌に触れるためレンタル品にはそぐわない全6種類の福祉用具について、購入額の一部を助成する制度です。年間10万円分まで利用することができ、購入費用のうち7~9割(自己負担割合に応じて異なる)がキャッシュバックされる仕組みです。都道府県から指定を受けた店舗での購入のみが対象なので、注意が必要です。具体的な品目は以下の通りです。
規定された全6種類のバリアフリー化工事について、利用者1人当たり最大18万円まで助成を受けることができる仕組みです。基本的に事前申請が必要であり、許可を得てから着工する必要があります。一般の大工さんが行った場合も対象になりますが、申請に不備があった場合は助成を受けられないので注意が必要です。助成対象となる工事は以下の通りです。
認知症により要介護認定を受けた場合、徐々に悪化することで自宅での生活が困難になる可能性があります。入所施設は希望した場合にすぐ入所できるとは限らないので、早めの情報収集と準備が重要です。
入所施設には、大別すると以下の2種類があります。
入所施設の概要について、費用と共にご紹介していきます。
施設名 | 入所対象者 | 特徴 |
特別養護老人ホーム (特養) | 要介護3~5 (例外あり) | 日常生活における介護サービスや 看護ケアを提供する施設 比較的安価な為、地域によっては 入居待機者が多い 終身利用できる |
介護老人保健施設 (老健) | 要介護1~5 | 病院と自宅の中間的な位置づけで、 退院後すぐに在宅生活が難しい方が入居し、 在宅復帰を目指す施設 |
介護医療院 | 要介護1~5 | 介護度が重い方に、 充実した医療的サービスやリハビリを 提供する施設 医師、看護師の人員配置が手厚い 長期療養できる |
認知症の方が利用できる公的施設は、以下の3種類です。
入居対象者は基本的に要介護3以上の方で、日常生活全般の介護や看護の支援を受けることができます。入居者の所得によってさまざまな助成制度があり、安価に利用できることが特徴です。安いだけでなく看取りにも対応終身利用ができるため非常に人気が高く、地域によっては待機者が数百人いる施設もあります。
要介護1以上の方が対象です。退院後すぐに在宅復帰することが難しい方や入所して集中的にリハビリをしたい方が入所できます。3~6ヶ月を目安に入所継続が必要なのか評価し、最終的に在宅復帰を目指すことが目的の施設です。入所期間中は主治医が施設に在籍している医師に変わることも特徴です。
要介護1以上の方が対象の施設です。身体介護に加えて日常的に医療的ケアが必要な人が入所可能な施設で、専門職によるリハビリにも対応しています。医師や看護師の人員配置が手厚いため、特に重度の医療ケアを必要とする入居者が多く、長期療養患者も対応可能です。
施設名 | 入居対象者 | 特徴 |
グループ ホーム | 認知症かつ 要支援2~5 | 認知症高齢者を対象とした施設 家事等を役割分担しながら共同生活を行う |
介護付き有料 老人ホーム | 施設による | 24時間介護スタッフが常駐 日常生活における介護サービスを受けられる |
サービス付き 高齢者向け住宅 | 自立~ 要介護5まで | 自宅とほぼ変わらない生活が出来る施設 有資格者の相談員が常駐し、 安否確認と生活相談サービスを受けられる |
住宅型有料 老人ホーム | 自立~ 要介護5まで | レクリエーションや娯楽の提供 介護保険サービスは別途契約の必要あり |
認知症の方が入居可能な民間施設は、以下の4つです。
認知症の診断を受けた要支援2以上の方が対象の施設です。9人がひとつのグループとなり、料理・買い物・掃除など可能な範囲で役割を持ちながら共同生活をします。継続的な医療的ケアや看取りケアが必要になると退去を求められる場合があるので、事前に確認が必要です。
3種類ある有料老人ホームの中で、唯一「特定施設入居者生活介護」という介護保険事業所の指定を受けたホームです。24時間介護職員が常駐しており、特別養護老人ホームに近い感覚で介護サービスを受けることができます。医療的ケアや看取り対応の可否については施設によって異なります。
介護保険サービス上の施設とは異なる位置づけで、自宅とほぼ変わらない感覚で生活ができる施設です。そのため規則上要介護度による入居の制限はありません。バリアフリーで一定以上の部屋面積が確保されており、有資格者による安否確認や生活相談サービスが付いた施設です。入所すると介護保険制度上は在宅の一人暮らしという扱いになるので、介護が必要になった場合は別途サービス事業所と契約する必要があります。看取りや医療的ケアが必要になると入居継続が困難になる可能性があります。
有料老人ホームの中で、自立の人でも要介護認定の人でもどちらでも入所が可能なタイプのホームで(ただし、施設の方針で要介護認定が付いている人のみ受け入れている場合あり)、「高齢者のための住居」という位置づけです。サービス付き高齢者向け住宅と同様に介護保険サービスが必要になった場合は別途契約する必要があります。具体的な支援内容は施設の方針により大きく異なります。
ここまでご紹介してきた公的施設・民間施設に入居する場合の相場は、下表のとおりです。
施設名 | 初期費用 | 月額費用 |
特別養護老人ホーム(特養) | 0円 | 10~14.5万円※ |
介護老人保健施設(老健) | 0円 | 8~14万円※ |
介護医療院 | 0円 | 9~17万円※ |
グループホーム | 0~数千万円 | 15~20万円 |
介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~30万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数千万円 | 15~30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 10~40万円 |
※負担限度額認定制度の対象になればさらに安くなる。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院などの公的施設は初期費用がかかりません。また、月額費用についても「負担限度額認定制度」を活用することでさらに安くなる可能性があります。看取りまで対応した施設が多いため、一度入居すると安心して過ごすことができます。
一方、民間の施設は施設によって初期費用や月額費用が異なり、費用を抑えたシンプルな施設から富裕層向けまで、多岐にわたります。サービス内容についても費用に比例して充実したものとなり、中には億単位の費用でコンシェルジュまでいるような超高級ホームもあります。
入所施設を費用重視で検討している人は公的施設を、充実したサービスを重視する人は民間施設を選ぶのがよいでしょう。また、公的施設は人気で空きが出るため待機期間が発生し、長期にわたる場合もあります。その場合は公的施設と民間施設両方に申し込み、公的施設の空きが出るまでは民間施設に入所するという対応も可能となっています。
ここまで、認知症になった場合に必要な要介護認定についてお話ししてきました。要介護認定は7段階に分かれ、重度になれば利用できる介護保険サービスの種類や量が増えますが、同時に介護にかかる費用も増える傾向があります。この認定は、適切なサポートを受けるための重要なステップです。
認定を受ける際には、調査員が行う「認定調査」に必ず立ち会い、日常生活の様子や介護の手間、頻度を詳しく伝えることが大切です。もし本人のプライドを傷つけたくない場合は、あらかじめメモを用意し、調査員に渡すことも効果的です。これにより、調査員がより正確な判断を下しやすくなります。
もし審査結果に不満がある場合は、遠慮せずに担当のケアマネジャーと相談し、再申請の手続きを検討することも可能です。正確な認定を受けることで、必要な介護サービスを最大限に活用でき、本人と家族の生活の質を向上させることができます。
要介護認定の結果に満足できない場合でも、必要なサポートを受けるために前向きに取り組むことが大切です。認定後も、必要に応じて再申請や調整を行うことで、安心して介護生活を送ることができるようになります。自分たちの声を大切にし、適切なサポートを求めていきましょう。
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