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入院や体調不良で長期ベッドでの生活を送ると、廃用症候群になる可能性が高まります。廃用症候群の症状や予防方法を知ることで、廃用症候群の早期発見・予防ができます。
今回は、長年介護施設で高齢者の方と接した経験も踏まえ、廃用症候群について詳しく解説します。
目次
廃用症候群とは、体を動かしたり使わなくなったりすることで体の機能が低下する病気です。廃用症候群の多くの場合は、ケガや病気によって長期的に安静状態を続けた結果として引き起こされます。
また、急性期を過ぎたお年寄りが、歩けるようになって家に帰った後、大事をとって安静を意識した自宅療養を続けるうちに寝たきりになることもよくあります。
原因として挙げられるのが、長期の入院です。長期入院すると筋力や体力が衰えてしまい、今まで通り体を動かせません。その結果、行動範囲が狭くなる、意欲をなくすといったことが起きてしまいます。
また、周りの人が過度に介護をしてしまうと本人が体を動かす機会を奪われてしまい、それが廃用症候群を引き起こす原因となることもあります。
廃用症候群の症状は、身体のあらゆるところに現れます。1つの病気ではなく、複合して同時に進行してくるため、心身に重大な影響を与えます。代表的な廃用症候群の症状として、意欲の低下・呼吸機能の低下・筋力の低下・腸の低下・褥瘡の発生・関節の拘縮・骨粗鬆症があります。
高齢になると、若いころのように体を動かせなくなります。行動範囲が狭くなると、自宅で過ごす時間が長くなります。自宅で何もせず座って過ごす時間が多くなり、あらゆることに関心をなくしてしまうのです。また、自分で何かをしようとしても、周りの人がさせてくれないケースも見受けられます。「高齢だから危ない」と決めつけてしまい、高齢者のやる気、意欲を削いでしまいます。
寝たきりの高齢者によく見られる症状です。寝たきり状態や寝たまま過ごすことの多い方の場合、呼吸筋と呼ばれる筋力の低下を招いてしまいます。その結果、肺活量が低下し、呼吸機能全体の低下につながってしまうのです。また、背臥位のまま過ごす時間が多い方では、細気管支の低いところへ粘液が溜まってしまい、細菌感染を引き起こすおそれがあるといわれています。
廃用症候群の症状で、もっとも広く知られている症状です。安静にして過ごす日々が長くなると、筋委縮が起きてしまい筋肉がやせ細ってしまいます。筋肉がやせ細ってしまうと、当然これまでのように筋力を使えません。筋肉は、日ごろから使っていないと簡単に衰えてしまいます。高齢者に限らず、若い方でも運動習慣をやめてしまうと、すぐに筋肉が衰え筋力が低下してしまいます。高齢者は、こうした症状がより顕著に現れてしまうでしょう。
胃腸の働きが少なくなると、腸の機能低下につながります。胃腸の働きが少なくなる原因として考えられるのは、食事量の減少です。また、嚥下障害の方では固形物でなくペースト状の食事を主にとるため、胃腸の働きが弱くなってしまいます。胃腸の機能が低下してしまうと、便秘になりやすいです。その結果、腸内にガスが溜まってしまったり、急な腹痛を生じたりしてしまいます。健康面を考えた場合、便秘は早期の改善が望ましいため、きちんと対策しなくてはなりません。
褥瘡とは、要するに床ずれのことです。寝たまま生活する日々が長くなると、床ずれを起こし皮膚がダメージを受けてしまいます。何の問題もなく体を動かせる方ならともかく、体力の衰えが顕著な高齢者の場合、寝返りを打てない可能性もあります。そのため、1日中ほとんど同じ姿勢のまま過ごしてしまい、褥瘡が発生する可能性が高まります。
寝たきりで筋力が低下すると、関節の可動域が狭くなります。さらに寝たきりの期間が長く続き、関節を動かさないでいると、関節が縮んで固まる「拘縮」になりやすくなる為、注意が必要です。 拘縮になると、関節の運動に必要な筋肉まで萎縮し、歩くのが困難になってしまいます。すると、体が自由に動かない為、日常生活に支障をきたしてしまいます。
骨粗鬆症とは、骨の量が減って弱くなり、骨折しやすくなる病気です。骨のカルシウム量が減少してもろくなることで、些細な衝撃でも骨折してしまうリスクがあります。高齢者の場合、トータルでの食事量の低下により、カルシウムの摂取量も低下してしまいます。その結果、カルシウム不足となり、骨粗鬆症を発症してしまうのです。また、運動不足も骨粗鬆症の原因となることがあるため、注意が必要です。
廃用症候群には、はっきりとした診断基準はありません。 家族が廃用症候群を疑うきっかけの多くは、できていたことができなくなったり、体を動かいしにくそうしていたりする様子に気づいたときです。 廃用症候群は医師や理学療法士の評価によって診断されます。 評価の着眼点としては運動機能の低下や、自律神経、精神障害などで、実際に体を動かしてみて筋緊張や委縮、可動域などを評価していきます。機能面だけではく、それに対する患者さんの反応も診断の判断基準になります。
廃用症候群の直接的な治療というのは難しく、予防をするのが大切です。 必要以上に安静状態を長くしたり、治療のために体を固定する時間を長くしたりすることで廃用症候群は進行していきます。できる限り離床を心がけ運動するのが良いでしょう。
寝たきりになることで精神的にも身体的にも弱体化していくため、常に心身機能を活性化させる必要があります。
また、人と触れ合うことや会話をすることで精神的な刺激を与えることも大切です。
寝たきりになると上を向いて寝ている状態が続きます。長時間上を向いていると人は考え事をしてしまいます。治療中の寝たきりの状態というのはどうしてもネガティブ思考になりがちです。早期離床を目指し、ご家族などと関わることで認知症予防にもなるため人との関りは廃用症候群の予防として重要な役割を果たします。
廃用症候群の直接的な治療は難しいのですが、実際にどのような治療が効果的で実践していく必要があるのかを解説していきます。
廃用症候群の方は、日常生活を見直すことが大切です。廃用症候群の方の生活は悪循環になっていることが多い傾向にあります。まずはこの悪循環を断ち切ることが廃用症候群の予防や治療に必要です。
日常生活を見直さなければ状態は悪くなっていく一方です。しかし、改善すれば必ず良くなっていきます。
規則正しい食生活、運動習慣、睡眠を獲得することで身体的にも精神的にも安定し改善に向かいます。 具体的には朝決まった時間に起き、日光を浴びることがおススメです。朝に日光を浴びることで体内時計がリセットされます。また、睡眠を促すメラトニンが約14時間後に分泌されるので、朝起きて日光を浴びることは夜間の睡眠にもつながり規則正しい生活の第一歩となります。
日中は運動の習慣をつけリハビリに取り組むことで、空腹感を得て、安定した食生活が送れるようになります。
しかし、夕食の食べ方には注意が必要です。寝る3時間前には食べ終わりましょう。食べすぎや寝る前に食べ、消化しきれずに眠ると消化によって睡眠の質が落ちます。睡眠の質が落ちることで日中の疲労感にもつながるため悪循環を生みます。
また、一日の中で自分がリラックスできることを積極的に取り入れていくことも大切です。いい香りを嗅ぐ、落ち着ける音楽を聴く、マッサージをしてもらうなど、リラックスは精神的な安定を生みます。
まずは『見直す』ということと、『実践する』という第一歩が大切になります。
廃用症候群の治療で薬物療法を使うことがあります。具体的には認知症患者の治療に似ている傾向があります。 認知症の方は神経伝達物質が不足しています。そのため、神経回路からうまく情報を伝達できるような役割の薬が処方されます。廃用症候群は体を使わなくなることで脳も衰えていく病気です。その薬には脳が働き続けるきっかけとある効果があるため、やる気スイッチが入り、実際の行動を促すことが期待できます。
廃用症候群の方は悪循環に陥っていることが多いため、薬を使ってでも気持ちを奮い立たせることが必要になる場合があります。
また、痛み止めも一部効果が期待できると言われています。廃用症候群の方はうつ状態に近い方もいます。うつ病になるとセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンなどのモノアミンという物質が減少しやる気が出なくなります。また、モノアミンは気分を上げるだけでなく、痛みの緩和にも関わっていると言われています。モノアミンの中のノルアドレナリンが放出されることで痛みが緩和される作用があるとされています。
廃用症候群とは治療によって使わなくなった身体的機能が衰え、精神的にも衰えていく病気です。
各治療部位の機能的なリハビリはもちろん必要です。特に筋力の衰えは日常動作を億劫にしますし、消費エネルギーも減少します。簡単にできる体操は上記イラストでもご紹介しているようにちょっとした時間あればできることです。時間があまり取れない方でもすぐにできる為、積極的に取り入れていきましょう。
もちろん治療部位のリハビルだけでなく廃用症候群に対するリハビリも、同時に必要になります。
廃用症候群のリハビリの考え方で最も必要なのは早期リハビリの開始です。
廃用症候群というのは悪循環に陥りがちなので放っておくと状態は悪化する一方です。安静にしていて治ることはありません。特に高齢者が廃用症候群になると精神的にはもちろん、運動機能や呼吸器系や循環器系にまで影響を及ぼす可能性があります。つまり、元も状態に戻すのに多くの時間が必要になるということです。
また、リハビリで大切ことは継続でもあります。廃用症候群の治療は主に習慣を変えることです。食事、睡眠などはもちろんリハビリも習慣化していくことで改善に向かっていきます。なので、継続できるための環境を整えることも必要になってきます。
リハビリを支える家族は、自発的にリハビリに取り組んでもらえるよう寄り添う心構えが大切になります。自発的に取り組めるようになったら継続は容易になってきます。やりたくないという意志に対して家族が無理にリハビリを進めるのは逆効果です。どんどんモチベーションが落ちていきます。その際には、専門の医師や看護師、理学療法士に相談するのが良いです。
廃用症候群の高齢者の方のほとんどが低栄養状態と言われています。
廃用症候群の治療には離床し行動を促していく必要がありますが、体にエネルギーがない状態ではそれも難くなります。栄養のバランスが整った食事を摂ることが必要ですが、特に筋肉の元となるタンパク質を多く含む食品を摂取することがおすすめです。肉や大豆、乳製品に多く含まれています。筋肉が生成されることでえ体を動かす意欲に繋がります。
もし、食事が食べられないのであれば、まずはその原因を探る必要があります。
食形態なのか、姿勢なのか、嗜好なのか。原因を解決しない限りは栄養を経口で摂取することは難しくなります。「食べたい」と思える環境を探すことが大切です。
原因を探るポイントとしては消化機能の低下の場合、便の観察が重要です。便秘や下痢は食形態を考え直す必要がありますし、咀嚼や嚥下機能の低下の場合は口腔マッサージや入歯などが必要になる場合もあります。
また、中には食べることができているのに低栄養状態の方もいます。その場合は、消化器官や栄養の質や吸収に問題がある場合があります。
患者さんの状態を十分に観察してバランスの良い食事を摂るには何が必要なのかを個別に考えていくことが大切です。
廃用症候群の方は低栄養状態になりがちなため、食事による予防法も効果的です。体を動かす意欲を湧かせるためにも主食、主菜、副菜を基本に栄養バランスが整った食事、とくに筋肉の材料になるたんぱく質を豊富に含む食品を摂るとよいでしょう。具体的には、肉類や大豆類、乳製品などにたんぱく質が含まれます。
過度に介護をするのは、本人の行動意欲を失わせてしまうおそれがあり、筋力の低下を招くリスクもあります。できることはなるべく本人に任せ、過度な介護は控えましょう。自分で体を起こせるのなら、1日の中で何度か体を起こし、座って過ごす時間を増やしてください。
しかし、介護を家庭で続けることが難しくなってきた場合は、介護施設への入居を検討することも重要です。介護施設では、専門のスタッフが24時間体制でサポートを行い、適切なケアを提供しています。入居者は、他の入居者と交流を深めながら、日常生活を送ることができ、心身ともに安定した環境で過ごすことができます。
例えば、介護付き有料老人ホームは、介護が必要な高齢者に適した環境を提供しています。専門的なケアプランに基づいた支援により、自立を促しながら、生活の質を向上させることができます。また、施設では定期的にレクリエーションやリハビリテーションが行われており、入居者が積極的に参加できるプログラムが用意されています。
静岡老人ホーム紹介タウンYAYAでは、各種介護施設の見学や相談を随時受け付けております。どの施設がご家族のニーズに最も適しているかを一緒に考え、最適な選択ができるようサポートいたします。入居を検討される際には、どうぞお気軽にお問い合わせください。
大切なご家族が安心して生活できるよう、私たちのサポートをぜひご活用ください。心からお待ちしております。
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