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訪問介護で介護ヘルパーに頼めること、頼めないこと|車椅子・入浴・薬編

2024年7月24日
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
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自宅にヘルパーが訪問し、必要な身体介護や家事援助を行う訪問介護。実は訪問介護のヘルパーは、頼んだことを何でもやってくれるわけではありません。それでは、どのような介助を頼むことができ、どのような介助は頼めないのでしょうか。

今回は、訪問介護の介護ヘルパーに頼むことができるのか判断が難しいサービス内容について詳しくご紹介していきます。

介護ヘルパーに頼めること頼めないこと

訪問介護のヘルパーができる仕事内容は、介護保険制度にて明確に決められています。提供が認められている介護の種類は以下の2つです。

  • 身体介護(入浴、食事摂取、排泄、家屋内の移動などの介助)
  • 家事援助(日常の範囲内の調理や掃除、買い物、薬の受け取りなど)

例え介護保険制度提供が認められている場合であっても、訪問してきたヘルパーにその場で仕事内容を頼んでやってもらうわけではありません。仕事の具体的な内容は、ケアマネジャーのケアプランに基づいて事前に打ち合わせを行い、ヘルパー事業所が作成する支援計画書に同意することで決まります。ここからは、実際に「これってヘルパーに頼めるの?」と事業所にお問い合わせが多いサービス内容について事例と共にご紹介していきます。

ベッドから車椅子への移乗介助は頼めるのか

ベッドから車椅子への移乗介助は、頼むことができます。

ベッドから車椅子への移乗は、利用者の食事や排せつ・入浴に関する介助を実施するために目的の場所に移動する際に必要です。目的とする介助のために移乗介助をする必要があることが支援計画に記載されていれば、問題なく実施することが可能です。ただし、移乗介助の必要性が支援計画に記載されていない場合は頼むことができないので注意しましょう。

車椅子のタイヤの空気入れは頼めるか

車椅子のタイヤに空気を入れることは、頼むことができます。

車椅子のタイヤに空気を入れることは身体介護でも家事援助でもありません。しかし、実際に車椅子のタイヤに空気が入ってなければ車椅子の操作に支障が出ます。一見すると対象外と思われがちですが、安全に車椅子を使用するために必要な行為ですので、実施することが認められています。

ただし、車椅子のタイヤに空気を入れることはあくまで他の介助の一環として行われるものです。車椅子のタイヤに空気を入れてもらう目的でヘルパーを依頼することはできないし、パンク修理を依頼することもできません。空気詰めは家族が準備し、事前にヘルパーに置き場所を伝え、必要時に速やかに使用できるようにしておきましょう。

銭湯での入浴介助は頼めるか

銭湯での入浴介助は、頼むことができます。
ただし、銭湯で入浴介助をするためには次の条件を満たす必要があります。

  • 自宅に浴室がない・壊れている等の事情で自宅での入浴が不可能であること
  • 通所系サービス(デイサービスやデイケア)や訪問入浴介護の利用ができない合理的な理由があること
  • 銭湯の管理者、銭湯を利用している他の客からヘルパーが同行することに同意を得ていること
  • 万が一銭湯で入浴している際に事故が起こった場合の対応を事前に協議していること
  • 保険者(利用者の住所地にある市町村役場の介護保険担当課)が認めていること

銭湯での入浴介助は、例えば自宅に浴室があるのに「温泉に入りたいから」といった単に趣味の範囲で入浴を楽しむことが目的である場合は実施できません。また、自宅での入浴が難しいのであれば設備が整ったデイサービスや訪問入浴介護のサービスを利用するのが基本です。これらのサービスを利用できないとケアマネや保険者が認める場合に限り可能になります。さらに、銭湯で入浴介助をする際は当然他の来客があることも想定されるため、支援計画を話し合う段階で銭湯の管理者に了解を取っておく必要があります。プライバシー保護の観点から、その場で利用する他の利用客にも説明し了承を得ておきましょう。自宅での介護ではないため、事前に緊急時対応について協議しておき、万が一のことにも備えておくことも条件のひとつです。

同居家族がいても入浴介助を頼めるか

同居家族がいる中での入浴介助は、頼むことができます。

同居家族がいる場合は特別な場合を除いて家事援助を頼むことはできませんが、入浴介助については同居家族の有無を問わずに頼むことができます。ただし、ケアマネジャーが作成するケアプランに入浴介助の必要性が記載されており、かつ予めヘルパー事業所が作成する支援計画書に入浴介助が位置づけられている場合に限ります。支援計画書に記載がない状態では頼むことができないので注意しましょう。

トイレの介助は頼めるか

トイレの介助は、頼むことができます。

入浴介助と同様、トイレの介助は同居家族の有無を問わずに頼むことができます。ただし、ケアマネジャーが作成するケアプランにトイレ介助の必要性が記載されており、かつ予めヘルパー事業所が作成する支援計画書にトイレ介助が位置づけられている場合に限ります。支援計画書に記載がない状態では頼むことができないので注意しましょう。

処方箋を預けて薬の受け取りを頼めるか

処方箋を預けて薬の受け取りを頼むことは、可能です。

ヘルパーが薬を受け取る支援は家事援助に分類されているので、基本的には独居の方が対象になります。他の支援内容と同様にケアマネジャーがケアプランに位置づけ、ケアプランに基づいてヘルパーの支援計画書に薬の受け取りに関する支援が記載されている場合に限ります。

ただし、受け取った薬を薬カレンダーにセットしたり一回分の薬を本人が飲みやすいように仕分けたりする行為は医療行為に当たるので、頼むことはできません。あくまで処方箋を薬剤師に渡し、薬を受け取って代金を支払った上で持ち帰るという部分に限定されています。

薬の封を開け、口に入れて飲ませることは頼めるか

薬の封を開けて口の中に入れて薬を飲ませる介助は、頼むことができます。

他の身体介護と同様に、ケアマネジャーがケアプランに位置づけ、ケアプランに基づいてヘルパーの支援計画書に服薬介助に関する支援が記載されている場合に限ります。なお、ヘルパーが服薬介助を実施できる条件は計画書への記載以外に以下のすべての条件を満たしている必要があります。

  • 薬が一包化されている場合
  • 対象となる患者の病状が安定している場合
  • 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師または看護師による連続的な容態の経過観察が必要でない場合
  • 服薬の支援に特別な知識や手技が必要ない場合

なお、錠剤がPTPシートに包装されているままの状態の場合やバラバラの袋に入っている薬をピックアップして取り出す場合は、医療行為に該当します。ヘルパーが実施することは認められていません。あくまで飲ませる薬が一包化されている場合に限られるので注意しましょう。なお、軟膏の塗布・湿布の貼付・坐薬挿入・点眼は原則として医療行為にあたらないとされていますのでヘルパーが実施可能です。

床ずれに薬を塗ることは頼めるか

床ずれに薬を塗ることは、頼むことはできません。

床ずれに薬を塗る行為は医療行為に該当するため、例え正式に依頼されたとしてもヘルパーが実施することはできません。必要な場合はケアマネジャーに相談し、受診や訪問看護の導入など別の方法で支援する方法を検討しましょう。

遠慮せずに気軽に頼もう

ここまでは、訪問介護でヘルパーに頼める内容についてご紹介してきました。

  • ベッドから車椅子への移乗介助 → 〇
  • 車椅子のタイヤの空気入れ → 〇
  • 銭湯での入浴介助 → 〇 ※条件あり
  • 同居家族がいる場合の入浴介助 → 〇
  • トイレ介助 → 〇
  • 薬の受け取り → 〇 ※条件あり
  • 服薬介助 → 〇 ※条件あり
  • 床ずれの処置 → ×

この他にも、ヘルパーができることはたくさんありますので、気軽に担当のケアマネジャーやヘルパーの責任者(サービス提供責任者)に相談してみることをおすすめします。

多くのサポートを提供してくれる介護ヘルパーは、ご家族の負担を軽減し、大切な方が安全かつ安心して生活できるように手助けします。しかし、どんなに頼りになる介護ヘルパーでも、自宅でのケアには限界があるかもしれません。

特に、長時間の見守りが必要な場合や、医療的なケアが必要な場合には、在宅介護だけでは対応が難しいこともあります。無理をせず、大切なご家族のためにも老人ホームへの入居を検討してみてください。老人ホームでは、専門的なケアや24時間体制の見守りが提供されるため、安心して生活していただける環境が整っています。

家族の皆様にとって、老人ホームへの入居を決断することは大変なことだと思います。様々な不安や心配があるでしょう。しかし、その不安を一人で抱え込まずに、プロのサポートを受けることができます。静岡老人ホーム紹介タウンYAYAでは、資格を持った専任のコンサルタントが無料で相談に乗り、皆様の心配事や疑問を一緒に解決していきます。

介護の負担を減らし、ご家族が安心して過ごせる環境を整えるために、私たちが全力でサポートいたします。どんな些細なことでもご相談いただければ、親身になって対応いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。大切な家族のために、最善の選択を一緒に見つけていきましょう。

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著者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

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