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認知症の人が忘れる順番について専門家がわかりやすく解説

2024年6月26日
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
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認知症の中で最も困る症状の中に「物忘れ」があります。認知症は、65歳以上の高齢者が要介護状態となる原因の中で第1位となっており、2025年には高齢者の5人に1人が認知症になるだろうと推計されています。実際に物忘れでお困りの方が多い認知症ですが、実は認知症による物忘れは単に加齢による衰えとは異なった特徴があるのはご存じでしょうか。

今回は、認知症による物忘れの進み方や具体的内容について詳しくご紹介していきます。この記事を読めば、認知症と単なる加齢による物忘れの違いを見分けられるようになります。

認知症の進行速度には個人差がある

認知症による物忘れの大きな特徴として、進行速度には個人差が大きいという点が挙げられます。そもそも「認知症」は、様々な病気が原因で脳の一部の機能が失われ、記憶力・見当識(物事に検討を付ける能力)・判断力など日常生活に欠かせない能力が低下した状態を総称して「認知症」と呼んでいます。このため、認知症の進行には原因となる病気だけでなく、その人が置かれた生活環境も大きく影響しています。

例えば認知症となる原因の60~70%を占めるといわれている「アルツハイマー型認知症」は、なだらかな下降曲線を描くように徐々に少しずつ進行し、根本的に症状の悪化を防ぐことが難しい点が特徴です。

一方で脳卒中を主な原因とする「脳血管性認知症」は、脳卒中の発症に応じて段階的に悪化していくものの、認知症の原因となっている脳卒中自体が再発しなければ、それ以上の進行を抑えられる可能性があると言われています。

このように、認知症の進行速度や症状の内容は、もともと認知症を引き起こす原因となっている病気によって異なります。仮に同じ病名であっても、それまでの生活習慣や現在の居住環境によっても個人差が出るということを覚えておきましょう。

認知症の物忘れは、中核症状によって引き起こされる

認知症の症状は、大きく「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2つに分けられます。行動・心理症状はかつて「周辺症状」と呼ばれていたものです。認知症の物忘れは「中核症状」の一つとして挙げられています。

【認知症の症状について】

 中核症状行動・心理症状(BPSD)
主な症状・記憶障害(病的な物忘れ)
・見当識障害(物事に検討を付ける能力の障害)
・失語(言葉の理解力低下)
・失行(物事の行い方や使い方が分からなくなる)
・失認(物を認識する能力の低下)
・実行機能障害(段取りを立てて行動する能力の低下)
・暴力・暴言
・被害妄想
・収集癖
・徘徊
・幻視・幻聴
・昼夜逆転 等
症状の特徴脳の一部の機能が失われたことが直接の原因。認知症の原因を問わず出現しやすく、抑えることは困難。中核症状によって引き起こされる二次的な行動障害。
生活環境や対応する介護者の対応方法などにより改善もするが悪化もする。

この中で認知症の物忘れに関係があるのが、「記憶障害」と「見当識障害」の2つです。

認知症の記憶障害によって忘れる順番6つ

専門的な話をすると、人の記憶には6種類あると言われています。認知症の中核症状による記憶障害は、進行に応じて近い記憶から忘れていく傾向があります。

具体的に記憶の種類と認知症の方が忘れる順番を並べると、以下のようになります。

  1. 即時記憶
  2. 近似記憶
  3. 遠隔記憶
  4. エピソード記憶
  5. 意味記憶
  6. 手続き記憶

まず、それぞれの記憶の具体例についてご紹介していきます。

即時記憶

即時記憶とは、数10秒~1分程度と極めて短い時間の間だけ覚えておくレベルの記憶です。記憶を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・話した会話の内容を忘れ、繰り返し同じことを聞く
・自分で物を置いた後、どこに置いたか分からなくなる
・電話帳を見て電話番号を覚えても、ダイヤルする時点で忘れてしまって電話できない

このようなことが起こります。認知症の極めて初期に発生する症状ですが、人によっては認知症を疑わない場合もあります。

近時記憶

近似記憶とは、数分~数日の間保持される記憶です。一旦忘れたことでも自身の頭にある記憶の中から探し出すことによって思い出すことができるものを言います。
近似記憶を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・数日前に会った人が誰だったか思い出せない
・前日に買い物へ行ってお肉を買ってきたことを忘れ、連日同じものを購入してしまう
・来客応対した後に忘れてしまうため、留守番ができない

即時記憶の場合、物忘れが気になっても「年だから」で納得できる場合もあります。しかし近似記憶の場合は明らかに病的な物忘れが起きている状況で、多くの人が認知症を疑う状態です。一人暮らしに不安を覚える人もいるでしょう。

遠隔記憶

遠隔記憶とは、数日から年単位の記憶です。ただ、前述の近似記憶との時間的な区分けが明確ではありません。認知症を発症する以前のことは覚えているが、認知症になって以降のことは思い出せない状態です。
遠隔記憶を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・高校を卒業して家を出た孫の進路や居所が思い出せない
・買物に出た後、自宅までの帰り道が分からなくなる
・今の年号が「令和」ではなく「平成」と認識している

遠隔記憶まで障害される状態となると、明らかに認知症の症状として認識できるようになります。他人との会話の中で辻褄が合わない部分が出てきて、それを誤魔化すために取り繕うような言動も見られるようになります。

エピソード記憶

エピソード記憶とは、自らの人生の中で経験したことや起きた出来事の記憶のことを言います。記憶の帯から実際の体験に基づく記憶が抜け落ちた状態になっているため、本人も記憶の消失に不安を覚える時期でもありあます。
エピソード記憶を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・数年前に死亡した家族のことを忘れ、今でも存命しているかのごとく話す
・自身の結婚・離婚体験の記憶が抜け落ち、自身には婚姻歴がないと思っている
・結婚して嫁いできたことを忘れ、「この家は自分の家じゃない」と訴える

エピソード記憶が失われるのは、明らかに認知症が進行している状況です。周囲との会話がかみ合わず疎外感を感じたり、自身の記憶や認識が周囲と異なることに対する不安を感じたりします。「精神科」や「心療内科」等の認知症専門医を受診して服薬治療が必要になる場合もあります。

意味記憶

意味記憶とは、言葉の意味や学んできた知識に関する記憶です。思い浮かんだことをうまく言葉にできなくなったり、「あれ」「これ」などの指示語で表現することが多くなったりします。
意味記憶を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・「お風呂に入りましょう」と声をかけられても「風呂に入る」という言葉の意味が分からず混乱する
・「お正月は孫にお年玉をあげる」などの季節的な行事が分からなくなる
・「赤信号=止まれ」「青信号=進め」などの一般的な知識を忘れ運転が困難になる

意味記憶には一般的な社会通念上の常識も含まれます。そのため意味記憶を失うと周囲が対応を迫られるようなことや、意図せず迷惑をかけてしまうような出来事が目立つようになります。すでにかなり認知症が進行した状態と言えるでしょう。

手続き記憶

手続き記憶とは、自身が繰り返し体験したことによって身についた技能や記憶のことを言います。俗に「体が覚えている」と言われる状態です。
手続き記憶を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・自動車運転の仕方が分からなくなる
・排便したあとに水を流すという手順を忘れ、便を片付けるために拾ってゴミ箱に捨てたり、タンスに隠したりする
・自分の名前を言うことはできても書くことができなくなる

手続き記憶が失われると、日常生活を営むことが困難と感じる場面が増えます。施設入所も検討する時期になるでしょう。

認知症の見当識障害によって忘れる順番3つ

「見当識」とは、文字通り物事に検討をつける能力のことを言います。見当識が失われる(忘れる)と、記憶障害との負の相乗効果によって様々な行動・心理症状が引き起こされる原因になってしまいます。

具体的に見当識障害の種類と認知症の方が忘れる順番を並べると、以下のようになります。

  1. 時間の見当識
  2. 場所の見当識
  3. 対人関係の見当識

これらの見当識が失われるとどうなるのか、詳しくご紹介していきましょう。

時間の見当識

時間の見当識とは、時間の感覚のことをいいます。細かく言うと、年齢(人生のタイムライン)・季節・日付・時間の感覚などが含まれます。
時間の見当識を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・真夏なのにセーターを着ている
・真夜中なのに朝だと思って起床し、新聞やテレビを見ている
・ デイサービスの迎えが毎日同じ時間に来るのに、準備できない

時間の見当識は、日常生活上の日課をこなすためにも必要な能力です。ただ、周囲の人の支援や声かけ・工夫があれば、ある程度見当識を失ってしまってもカバーすることができるものでもあります。

場所の見当識

場所の見当識とは、今いる場所や目的地の方角・道順などに関することに見当をつける能力のことを言います。また、建物と風景(景色)の区別もつかなくなるので、「自分がいまどこにいるのか」という感覚を失ってしまいます。
場所の見当識を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・トイレの場所が分からなくなり、便器以外に排泄してしまう
・家までの帰り道が分からなくなり、行方不明になる
・ 今いるのは自分の家なのに、「お邪魔しました」と挨拶して出て行ってしまう

場所の見当識を失って最も困ることは、徘徊行動につながってしまうことです。発見が遅れると行方不明となり命に関わる危険性もあるので、たとえ家の中にいても目を離せず、介護負担を感じる場面が増えるでしょう。

対人関係の見当識

対人関係の見当識とは、知人同士の人間関係や親戚関係、人の顔と名前の記憶などのことを言います。周囲の人とのコミュニケーションや社会的なつながりを失ってしまう原因となります。自分以外の人のことが分からなくなってしまい、最終的には自分の顔が分からなくなる場合もあります。
対人関係の見当識を失っていくと、以下のような症状が表れるようになります。

【具体例】
・友人の顔や名前を忘れる
・介護してくれる家族を「介護士」だと思っている
・鏡に映った自分に話しかけている

対人関係の見当識は、自分以外の人とのコミュニケーションや人間関係を円滑にするために重要な能力です。これが失われると孤独感を感じるようになり、生活の質の低下につながります。

認知症による物忘れと加齢による物忘れの違い

認知症による物忘れと、加齢による物忘れは明確に区別する必要があります。なぜなら、加齢による物忘れは老化による自然なものである一方で、認知症による物忘れは疾病を原因とした病的な物忘れだからです。

認知症による物忘れと加齢による物忘れには、具体的に以下のような違いがあります。

認知症による物忘れ加齢による物忘れ
・記憶の一部が脳から消えた状態
・記憶が抜け落ちているため、「忘れている」ことを自覚していない
・ヒントをもらっても思い出せない
・脳の中にある記憶を呼び出すのに時間がかかる状態
・思い出そうとしてもすぐに思い出せないが、「忘れている」ことは自覚している
・ヒントをもらえば思い出しやすくなる

 例えば、「昨日会ったあの人の名前が思い出せない」のが加齢による年相応の物忘れ。「昨日〇〇さんから『あなたと会った』と言われたよ」と声をかけられても、〇〇さんと会ったこと自体記憶にないことが認知症の物忘れです。

認知症の方が家族の名前を忘れるのに順番はある?

認知症の方(特にアルツハイマー病の場合)は、大変悲しいことですが徐々に人の顔や名前を忘れていってしまいます。これは家族であっても例外ではありません。しかし、いきなり家族全員のことを忘れてしまうわけではありませんので、ご安心ください。

認知症の研究で明らかになっていることに、「認知症になる前のことは覚えていられるのに、発症して以降のことは記憶に残らない傾向がある」という点があります。また、長年筆者が介護の仕事に携わってきて感じてることは、「仲の良し悪しは問わず、印象に残っている人ほど最後まで記憶に残っている」ということです。

• 「毎日介護している施設職員の顔は覚えられないのに、他県にいてほとんど会わない家族の顔はいつまでも覚えている」
• 「毎日オムツ取り替えているのは嫁の私なのに、お手伝いさんって呼ばれた」
• 「あの人、お隣のことはいつも大嫌いっていうのに、いつも挨拶して声をかけている私のことは初対面だと思っているようだ」

など、認知症になる前から知っている人のことや、人間的に嫌いで強く印象に残っている人は比較的覚えているのに、関係が近い人が忘れられてしまう、ということはよくあることです。

今までずっと暮らしてきた大切な家族や友人から、「あなた誰?」と言われたら、どんなにつらく・苦しく感じることでしょう。しかし、我々周囲の人間が忘れてはならないことがあります。もっとも辛く・苦しいのは、大切な思い出を失っていってしまっている認知症の方自身であるということです。

よく「認知症の人は怒られたり叩かれたりしてもすぐ忘れてしまうから、幸せでしょ」という方がいます。しかし、記憶は失っても喜怒哀楽の感情は最後まで残ります。認知症の方の気持ちを理解しようとすること、受け入れてともに寄り添っていくことが非常に重要です。

物忘れの症状が現れたら

今回は、認知症による物忘れの内容や忘れていく順番についてご紹介しました。認知症の中核症状によって、「記憶障害」と「見当識障害」の2種類の物忘れが生じます。「記憶障害」は比較的近い記憶から失われていき、「見当識障害」では徐々に時間・場所・対人関係の認識能力が失われていくことをご紹介しました。また、家族や知人を忘れていくことについては、より印象深い人ほど忘れにくい傾向にあります。

認知症は、早期発見・早期治療により進行を緩やかにすることが可能です。また、専門医やケアマネジャーなどの専門家の介入で認知症に対応した環境を整えることによって、たとえ認知症が進行しても穏やかな日常生活を続けることもできます。物忘れが気になった時は、まずは早めの受診を心がけましょう。

ただし、認知症の介護は自宅では大変な場合が多く、どうしても家族だけでは対応しきれないことがあります。介護をする方に余裕がなければ、認知症の方に寄り添った適切な介護は難しいです。そのため、介護の限界を感じる前に、専門の施設への入居も検討してみてはどうでしょうか。

グループホームは、認知症の高齢者が少人数で共同生活を送りながら、専門スタッフのケアを受ける施設です。家庭的な雰囲気の中で、自立を支援し認知症の進行を緩やかにします。24時間体制で安心して生活できる環境が整っています。入居条件は65歳以上で要支援2以上の認定を受けている方です。見学や相談も随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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著者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

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