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胃ろうと老人ホーム:家族が知っておくべきポイントと選び方

2024年6月17日
朝日けい(看護師・保健師)
カテゴリー:
介護お役立ち情報

「老人ホームはどうやって決めたらいいの?」

「老人ホームではどんなことをサポートしてくれるの?」

数ある老人ホームの中で、どの施設を選択すればよいのか悩んでいませんか。

中でも医療的ケアが必要な「胃ろう」がある場合、対応してくれる施設があるのか心配な方もいるでしょう。 今回は「胃ろうと老人ホーム」をテーマに、胃ろうがある場合の老人ホームの選び方のポイントをお伝えします。

胃ろうとは?

胃ろうとはどんなものかご存じでしょうか。中には「お腹に穴をあけるもの」という怖いイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

胃ろうは、口から食事ができない場合に、お腹にカテーテルを通して直接胃に栄養を送る方法です。 

胃ろうを作るには手術が必要ですが、長期的に口から食事が摂れない方の栄養補給の方法として、高齢者や神経筋疾患患者に広く導入されています。

手術による感染リスクや合併症のデメリットもありますが、安定した栄養補給が可能であることや誤嚥のリスク軽減というメリットがあります。

まずは胃ろうがどのようなものなのか、詳しくお伝えしますね。

胃ろうの定義と目的

胃ろうとは、お腹に小さな穴をあけ、そこからカテーテルを通して直接胃に栄養を補給する方法です。長期的に口から食事ができない場合の栄養補給を目的としています。

胃ろうには種類があり、胃ろうの胃の中に入れる部分は「バルーン型」と「バンパー型」、お腹の外に出る部分は「ボタン型」と「チューブ型」のそれぞれ2種類ずつです。

どのタイプの胃ろうを使用するのか、患者さんの状態から判断し選択します。

胃ろうの適用対象

胃ろうの適用対象となるのは「口から食事ができない場合」や「誤嚥を繰り返す場合またはリスクが高い場合」とされていますが、具体的には下記の状態が挙げられます。

●脳血管障害・認知症などにより自発的な経口摂取が困難

●神経筋疾患(ALSやパーキンソン病)などにより摂食嚥下が不能または困難

●食事はできるが誤嚥を繰り返す

●咽喉頭がんや食道がん、胃がんなどによる食物通過障害    など

胃ろうのメリットとデメリット

胃ろうを導入する前に、メリットとデメリットを知っておきましょう。

●メリット

・胃ろうがあっても口からの食事は可能であり、食べるリハビリや言語訓練を行うことができる

・免疫細胞が多く存在する消化器官の働きを維持することができる

・胃ろうの部分は衣服で隠れるので目立たず、そのまま入浴ができる

●デメリット

・胃ろうを作る手術による合併症や感染のリスクがあること

・皮膚のトラブルを防止するため、お腹の穴をあけた部分のスキンケアが必要になること

・バンパー型の胃ろうの場合、半年に1回程度のカテーテルの交換のため通院が必要になること

メリットとデメリットをしっかりと理解した上で選択しましょう。心配なことは医療者に聞いてくださいね。

胃ろうを導入する際の注意点と準備

胃ろうの導入は、医師との十分な相談の上で決めることが重要です。

近年「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング〈ACP〉)」の取り組みが広まっています。もしものときのために本人が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療者と共有することをすすめる指針です。

胃ろう導入後はこれまでの生活とは変化するため、ご本人だけでなくご家族も含めて相談の上、選択しましょう。

導入を決定したら、胃ろうに必要な物品の準備やケアの方法の説明を受け、今後の生活に備えます。 では、胃ろうを導入する際のポイントについて具体的にお伝えしますね。

医師との相談と合意形成

前述した人生会議(ACP)は、ご本人・ご家族・医療者やケアスタッフが共同して進めていきます。ご本人の意思疎通が困難な場合、これまでのご本人の価値観や生活歴に思いを馳せてみると良いでしょう。

胃ろう導入の場合、どのような情報を共有して進めると良いでしょうか。下記の項目が挙げられます。

・胃ろうの必要性

・胃ろうのための手術内容と合併症のリスク

・胃ろうメリット、デメリット

・本人の胃ろうへの思い、恐怖や不安について

・介護者の不安や生活環境

医師から胃ろう導入についての情報提供を受けた上で、ご本人やご家族が不安に思っていることを伝えましょう。

医師と十分に相談し今後の生活についての不安を軽減すること、そして納得した上で進めることが大切です。

胃ろう導入前の準備事項

導入前に、胃ろうに必要な物品やケアの方法の説明を受け、家族もケアの基本を理解しておくことが大切です。

準備として、下記の点を理解しておくと良いでしょう。

●注入する栄養剤の種類(液体・半固形・ミキサー食など)

●注入に使用する物品(注入用のバッグやボトル・シリンジ・チューブなど)

●注入方法(注入時の姿勢や注入速度など)

●日常管理(胃ろう周囲のスキンケア・入浴・口腔ケアなど)

●トラブルへの対応(栄養剤の漏れ・抜去・嘔吐した場合など)

事前に知っておくことで疑問が出てくるかもしれません。疑問は医療者やケアスタッフに聞き、解決しておくと安心ですね。

導入後の生活の変化とケア

胃ろう導入後は、「食事の管理」と「日常生活のケア」が必要となります。

「食事の管理」では安全に胃ろうからの栄養補給を行うために、いつもの様子と変わりないかの確認や食事時のポジショニング、栄養剤の注入速度などに気を配りましょう。

「日常生活のケア」では、胃ろう周囲のスキンケアを行います。発赤や湿潤などのトラブルが現れた場合は医師への報告や、悪化防止のためフィルムで保護を行うケースもあります。入浴で皮膚の清潔を保つことも大切です。

また、口から食事を摂っていなくても、歯ブラシやスポンジブラシを使用して口腔ケアを行うことにより感染症のリスクを軽減することができます。

老人ホームに入居する場合、高齢者にとって快適な生活環境となるように、施設と家族が連携してケアに関する情報を共有することが大切です。

老人ホームでの胃ろう対応

胃ろうに対応している施設には、介護付き有料老人ホームやグループホームがあります。

これらは施設によって医療スタッフの配置やケアの内容が異なりますが、胃ろう対応可能な施設では専門的な知識を持った看護師と介護職員が協働し、胃ろうの管理や日常生活のケアを行います。

胃ろうケアの内容としては「カテーテルの管理」「栄養剤の投与」「感染症の予防」が挙げられます。具体的な内容は後述しますね。

また、胃ろうのある高齢者へのQOLの維持や向上について配慮してもらえる環境であることも大切だと考えます。利用者や家族の価値観や思いを聴き、希望に沿いながら支援やケアをしてくれる施設を選択したいですね。

参考:特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関するモデル事業の概要

胃ろう対応の施設の種類

介護付き有料老人ホームやグループホームの施設は胃ろう対応が可能ですが、すべての施設で対応できるわけではありません。しかし、2012年の法改正で必要な研修を受けた介護職員でも胃ろうの対応が可能になり、胃ろう対応可能施設は増加傾向にあります。

胃ろう対応が可能であるとともに、施設の雰囲気や生活環境なども合わせて情報収集してみましょう。

静岡県内では胃ろうケア対応が可能な介護付き有料老人ホーム住宅型有料老人ホームがあります。どのような施設なのかぜひ調べてみてくださいね。

静岡県内で胃ろうケア対応が可能な施設一覧

胃ろうケアの具体的な内容

胃ろうケアの具体的な内容についてお伝えします。

●カテーテルの管理:胃ろうカテーテルの抜去や漏れ、周囲の皮膚トラブルはないかの確認や必要時には主治医に報告、指示に従って対応します。

●栄養剤の注入:利用者に適した栄養剤や注入の準備を行い、注入します。安全な注入のためポジショニングや様子の観察を行います。栄養剤の注入といっても食事と同じです。高齢者の気持ちに配慮した声かえも大切にしたいですね。

●感染症予防:誤嚥による肺炎を発症するリスクを最小限にするために、注入時のポジショニングを行うとともに口腔ケアで口腔内の清潔を保持します。入浴で皮膚の清潔を保つことも感染症を予防することにつながります。

胃ろうケアスタッフの専門性

以前、胃ろうケアは看護師だけが可能な医療行為でした。しかし近年の胃ろうの普及に伴い、2012年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行され、必要な研修を受けた介護職員も胃ろうケアの対応が可能になりました。

ただし、介護施設で働くスタッフが胃ろうケアに携わるには条件があります。

・介護福祉士:介護福祉士養成施設にて「医療的ケア」を受講し、実務研修を終了していれば経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)業務が可能

・介護職員:喀痰吸引等研修を受講し、都道府県知事の認定を受けたのち、認定特定行為業務従事者認定証」の交付が必要

専門性を持ったスタッフが在中していることは、施設で安心して生活できるポイントの一つですね。介護スタッフも研修を受けることで胃ろうケアが可能となり、胃ろう対応可能な施設の選択肢も広がったと考えられます。

胃ろう対応の老人ホームを選ぶポイント

老人ホームを選ぶときには、下記のポイントを確認してみましょう。

気になることは事前に情報収集をしておくと安心につながります。

・医療体制の確認

・胃ろうケアの経験と実績

・入居者へのサポート体制

・家族との連携と情報共有

老人ホームでの胃ろう対応は、「登録事業者」として各都道府県に登録されている施設である必要があります。胃ろう対応が可能かとともに、実績があるかということも調べておくと良いでしょう。

また、常駐しているスタッフとしっかりとコミュニケーションがとれることも大切です。

日常生活の大半を過ごすので、ご本人やご家族の想いを尊重したケアを実施してくれるところを選択できると良いですね。 では、前述のポイントを踏まえて具体的な確認事項をお伝えします。

医療体制の確認

胃ろうケアが必要な方で「トラブルがあったらどうしよう」という不安がある方もいるでしょう。

老人ホームでのトラブル対応とともに、「施設内に医師が常駐しているのか」「提携病院との連携がとれているか」を確認しておくと安心です。

また、胃ろうケアの担当は「看護師」なのか「資格を持った介護職員なのか」を確かめておくのも良いでしょう。

胃ろうケアの経験と実績

胃ろうケアの実績が豊富な施設を選び、具体的なケアの事例を確認することが重要です。

例えば、「栄養剤や注入の準備はどのようにしているのか」「食事時間はどのようなスタッフ体制なのか」「胃ろうトラブルがあった場合どのように対応しているのか」などを確認しておくと、実際にどのような対応がされているのかがわかるでしょう。

入居者へのサポート体制

入居者の健康やQOLの維持につながるサポートとともに、実際に施設でどのような胃ろうケアが行われているのか確認しておきましょう。

・定期的な健康チェックやリハビリの提供があるか

・口腔ケアがしっかり行われているか

・身体の清潔が保たれるよう気を配られているか

・栄養剤が適切に選択されているか

胃ろうのある方は口から食事を摂ることが少ないため、唾液の分泌量が低下し、口腔内が不潔になりやすい状態になります。口腔内の清潔は肺炎のリスクを下げる効果があるため、口から食事ができなくても口腔ケアをしっかり行うことが大切です。

また、胃ろうがあっても入浴は可能です。皮膚トラブルを避けるためにもスキンケアが丁寧に行われているかも確認しておきましょう。

さらに、栄養状態が維持できるようなサポートも大切です。どのような栄養剤が使用されているのか、栄養状態や消化能力によって適切に栄養剤の選択がされているのかを確認しておくと安心ですね。

家族との連携と情報共有

胃ろうのある高齢者が施設でどのように過ごしているのか、心配なご家族もいらっしゃるでしょう。日ごろから家族との連携やコミュニケーションを大切にしている施設はご家族の安心感にもつながります。変わったことがあった場合はもちろん、施設スタッフからの定期的な報告・面談の有無や面会のしやすさなどを確認しておくと良いでしょう。

胃ろう対応老人ホームの費用と支援制度

胃ろうケアには基本的な介護費用に加え、医療ケアの費用がかかります。

「どのくらいの費用がかかるの?」と心配ですよね。

具体的な費用は施設ごとに異なるため、見積もりを取って比較することが重要です。

また、公的支援制度を利用することで経済的負担を軽減することができます。

胃ろうケアにかかる費用や公的制度とその利用方法についてお伝えしますね。

胃ろうケアにかかる費用

胃ろうケアには、基本的な介護費用に加え、「胃ろうの交換にかかる費用」や「胃ろうの栄養剤にかかる費用」などの医療ケアの費用がかかります。

「こんなにかかるの?」と思う方もいるかもしれません。ですが、胃ろうケアにかかる費用を軽減するための公的支援制度があります。知っておくと安心です。

公的支援制度とその利用方法

経済的な負担は、生活にも大きく影響しまよね。介護保険や医療費助成制度を利用することで、経済的な負担を軽減することが期待できます。

「胃ろうの交換にかかる費用」は、医療保険の対象です。自己負担割合に応じて、金額の1~3割の支払いが必要です。

「胃ろうの栄養剤にかかる費用」については、栄養剤の種類によって異なる場合があります。医薬品扱いのもので病院にて処方される場合は1~3割負担ですが、施設で注文される場合は食費扱いになるため実費となるケースもあります。

下記に、胃ろうに対する経済的負担を軽減するための制度と申請先を記載しました。参考にしてみてくださいね。

●高額療養費制度:医療機関や薬局で支払う医療費が1か月の上限額を超えた場合に、超えた分の費用の返金がある制度〈申請:加入している公的医療保険制度による〉

●医療費控除:同一世帯・同じ医療保険で1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合に所得の控除を受けられる制度〈申請:所轄の税務署に確定申告を行う〉

●高額医療・高額介護合算療養費制度:世帯単位で1年間に医療保険・介護保険で支払った合計金額が負担限度額を超えた場合に、超えた分の費用が支給される制度〈申請:お住まいの自治体〉

●高額介護サービス費:1カ月に支払った介護保険サービス費用が負担限度額を超えた場合に、超えた分が支給される制度〈申請:お住まいの自治体〉

●特定入居者介護サービス費:所得が低い方に対して、介護保険施設での居住費・食費の支払いに上限額を設け、超えた分の費用が介護保険から給付される制度(本人を含む世帯全員が市町村民税非課税であることが要件)〈申請:お住まいの自治体〉

●利用者負担軽減制度:社会福祉法人が運営する特養などに入居する際に、一定の低所得者を対象に費用が軽減される制度(5つの要件を満たし、利用者負担などを総合して生計が困難と自治体に認められた方が対象)〈申請:お住まいの自治体〉

所得に応じて費用の負担額が異なる制度もあります。どの制度が利用できるかわからない場合は、お住まいの自治体に問い合わせてみましょう。

まとめ

高齢者やご家族の希望や思いに沿った老人ホームを選ぶことで、胃ろうを導入していても高齢者が安心して生活できる環境を整えることができます。また、家族も胃ろうケアに積極的に関わることで、「胃ろうがあっても、普段と変わらない生活ができる」という高齢者の意欲やQOLを高めることができるでしょう。

胃ろうケアにおける家族の役割

「胃ろうに触るのが怖い」「どうやってケアをしたら良いかわからない」というご家族もいらっしゃるでしょう。ですが、ご家族も胃ろうケアに積極的に関わることで、高齢者の意欲やQOLを高めることができます。心配なことやわからないことは医療ケアスタッフに相談し、胃ろうケアに関わってみてくださいね。

適切な老人ホーム選びの重要性

1人ひとり、希望や思いは異なります。胃ろうケアとともに個別に適したケアを行ってくれる施設を選ぶことで、高齢者やご家族が安心して生活することができるでしょう。

YAYAでは、専門員が無料で胃ろう対応が可能な静岡県内の老人ホーム探しをお手伝いすることができます。ぜひご相談ください。

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安心して生活を送るために

老人ホーム選びは、高齢者とそのご家族が安心して生活を送るための重要なステップです。

ご家族と施設が協力し、高齢者の想いに沿ったケアの提供を大切にしたいですね。

高齢者とご家族がお互いに穏やかな生活が送れるよう、今の想いや今後の希望についてお話しておくのも良いでしょう。

今回の記事が老人ホーム選びについて悩んでいる方の参考になれば幸いです。

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著者プロフィール

朝日けい(看護師・保健師)
朝日けい(看護師・保健師)
看護大学卒業後、総合病院やクリニック、保育園看護師を経験。現在は訪問診療クリニックに在籍。多職種と連携し、地域で療養している患者様の生活をサポートしている。

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