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高齢になると、老化と共に嚥下機能が低下し、食事中にむせることも少なくありません。高齢のご家族がいる方は、ご家族が食事でむせて肺炎になってしまわないか、不安を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、誤嚥性肺炎の症状や予防・治療方法について解説していきます。誤嚥性肺炎に対して知識を深めたい方は、本記事をお読みいただければと思います。
目次
誤嚥性肺炎とは、咳の反射や物を飲み込む嚥下機能が低下することで、食物や唾液に含まれる細菌が気管に入って肺炎を起こす疾患を指します。嚥下機能が低下している高齢者や脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患を有する方に発症しやすく、重症化すると命にかかわる場合もあります。高齢者や全身状態が不良な方では、口腔内のケアが不十分で細菌が多く増殖していることがあり、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
誤嚥性肺炎の症状について説明します。基本的には通常の肺炎と同様、発熱や咳、痰がらみといった症状が出現します。ただ、唾液の垂れ込みなどで軽度の誤嚥性肺炎をきたしていることもあり、その場合は咳や痰がらみといった典型的な症状をきたさず、何となく活気がない、ぼーっとしている、食欲が低下するなど、肺炎とはわかりにくい症状しか出現しないこともあります。
誤嚥性肺炎の予防方法について説明します。予防方法としては、以下の4つが挙げられます。
・口腔内を清潔にする
・食後はすぐに横にならず、身体をしばらく起こしておく
・リハビリで嚥下機能を高める
・咳反射が起こりやすい薬を使用する
では上記について、それぞれ説明していきます。
予防方法として、まず口腔内を清潔にすることが重要です。誤嚥性肺炎は、嚥下機能低下により、細菌を含んだ食物や唾液が気管に垂れ込むことで発症しますが、口腔内を清潔にすることで気管に垂れ込む細菌の量を少なくすることができます。歯ブラシ等を用いて、定期的に口腔ケアを行いましょう。
続いて、食後はすぐに横にならず、身体をしばらく起こしておくことも予防法として重要です。口から入った食事は胃から十二指腸、小腸へと流れていきますが、食直後は大部分の食物が胃に残っています。そのため、食後すぐに横になると、胃の中にある食物が食道や口腔内に逆流し、その一部が気管に入ってしまうことがあります。食物の逆流により誤嚥性肺炎を起こしてしまうことがあるため、食後90分程度は横になるのを避けましょう。
身体をしばらく起こしておくのが難しい場合、身体の左側を下にして横になると良いでしょう。身体の右側を下にして寝ると、食道と胃の位置関係から食物が胃から食道に逆流しやすくなるため、できれば避けた方が良いです。
リハビリによる訓練で嚥下に必要な筋肉を鍛え、嚥下機能を高めることも予防法として有用です。嚥下障害のリハビリ法としては食物を用いる直接訓練と、食物を用いない間接訓練がありますが、基本的には間接訓練の方が取り組みやすいでしょう。間接訓練の具体的な方法としては、アイスマッサージやブローイング訓練、咳訓練などがあります。
アイスマッサージとは、凍らせた綿棒に水をつけ、その綿棒で舌や口腔内を刺激して飲み込む反射を促す訓練法です。ブローイング訓練とは、ストローを用いて水の中に空気を入れてブクブクさせる訓練法です。
咳訓練とは、息をしっかり吸った後、意識的に咳をしてもらい、咳反射を促して誤嚥を予防する訓練法です。
咳反射を促す薬もいくつか存在するため、そのような薬を使用するのも有用です。血圧を下げる薬であるアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬や、パーキンソン病の薬であるアマンタジンは咳反射を促す効果もあると言われています。高血圧やパーキンソン病などの基礎疾患がある方で、誤嚥性肺炎のリスクがある場合はこのような薬の使用を考慮しても良いでしょう。
誤嚥性肺炎の治療の基本は、誤嚥の原因となる食事を止め、肺炎に対して抗生剤を投与することです。食事を継続すると、さらなる誤嚥を招くことがあり、それにより肺炎が悪化します。そのため、肺炎が落ち着くまでは食事を止め、点滴治療を行います。抗生剤に関しても、内服よりは点滴から投与した方が良いでしょう。また、誤嚥の再発を防ぐため、先に述べた口腔内ケアや嚥下のリハビリも重要になります。
誤嚥性肺炎の程度にもよりますが、一度誤嚥性肺炎をきたした方は治癒しても再発しやすく、肺炎が重篤化してしまう場合があります。また、背景に嚥下機能低下があるため、食事も十分に摂取できないこともあり、余命は長くないことが多いです。誤嚥性肺炎をきたした方のうち、半数以上が1年以内に亡くなっていたという報告もあります。
誤嚥性肺炎が治るかどうかについでですが、肺炎自体は食事を止めて抗生剤治療を行えば、一時的に治癒します。ただ、持病や加齢による嚥下機能の低下が背景にある場合、誤嚥を繰り返す可能性があり、いったん治癒しても再発することがしばしばあります。そのため、慢性的に誤嚥性肺炎をきたしてしまう方が一定の割合でいます。
誤嚥性肺炎の予防には食事時に唾液や食物が気管に入るのを予防することが重要です。そのため、口腔内ケアや嚥下リハビリのみならず、誤嚥しにくい調理形態も大事になってきます。嚥下しやすいよう、ペースト状の食べ物を提供したり、水分はトロミをつけて飲みやすくしたりすると良いです。ゼリー食なども、誤嚥性肺炎対策としておススメです。誤嚥性肺炎の対策を検討している方は、一度お試しいただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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