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「遠方に住む一人暮らしの親が心配」「親が元気なうちから準備できることは何かある?」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。遠距離介護は、一緒に暮らして行う介護と比較して負担が少ない反面、緊急時対応などの不安が募る傾向にあります。親の介護がいつ必要になるかは誰にも分かりません。介護について正しい知識を持ち準備することで、急に介護が必要になった時にもスムーズな対応が可能です。今回は、遠距離介護の事前準備と成功の秘訣について詳しくご紹介します。
目次
遠距離介護とは、離れて暮らす親が自立した生活を送れるようにサポートすることです。
親には親の生活や人間関係があり、それらをすべて断ち切って新しい土地で生活をさせるのは、親にとって幸せな状態か分かりません。日常生活を無理なく行えているのであれば、遠距離から親の生活をサポートする遠距離介護を選ぶことができます。遠距離介護は、親にとっての幸せ、そして心配する子の気持ちの両方を尊重した介護ともいえるでしょう。
遠距離介護は決して珍しい介護の方法ではありません。令和元年国民生活基礎調査によれば、主な介護者を別居する家族だと答えた方は13.6%でした。つまり、介護を必要としている人の8人に1人は遠距離介護を受けていると考えられます。
もっとも多いのが同居している配偶者で23.8%、次に多いのは同居している子で20.7%でした。別居している家族が介護をするのは3番目に多く、事業者(12.1%)よりも多く、よくある介護の手段であることが分かります。
※厚生労働省.「令和元年国民生活基礎調査」(参照 2022-12-26)
遠距離介護は、直接顔を合わせない分、お互いのストレスも少なく、環境の変化もありません。また独居や高齢者世帯のみが利用できる介護サービスを使えるメリットもあります。一方、緊急時に駆けつけられない、帰省のために費用がかさむなどのデメリットは避けられません。ここでは遠距離介護のメリットとデメリットについてご紹介します。
遠距離介護では、親との間に適度な距離があるためストレスが軽減されます。同居の場合は、身体的な疲労に加えて精神的なストレスを抱えている介護者も少なくありません。最悪の場合は、「介護うつ」になってしまうケースもあるのです。
遠距離介護では、適度な距離があることで介護者の精神的・肉体的ストレスは軽減されます。また気軽に相談できる家族や友人がいれば、介護者の精神的なストレスは更に減らせるでしょう。
遠距離介護では、親も子も転居しなくてよいのも大きなメリットです。親は慣れ親しんだ自宅で生活できて、子も引っ越しや介護離職をしなくてすみます。
高齢者は環境の変化に弱く、引っ越しが原因で認知症が進行してしまうリスクも指摘されています。子が介護離職を避けられるのもメリットです。遠距離介護は、現在の生活スタイルを維持できるメリットがあります。
家族と同居している高齢者に比べて、介護保険サービスを利用しやすいこともメリットです。
独居や高齢者世帯の場合、生活状況が考慮され、ヘルパーによる掃除や調理のサービスを受けられます。また特別養護老人ホームなどの介護施設への入所も優先されることがあります。「介護できる家族と同居している高齢者よりも優先度が高い」と見なされる場合があるのです。
介護施設への待機者は非常に多く、入所までに数年間待つことも珍しくありません。介護施設への入所を早めるために、遠距離介護は有利になることがあります。
離れた場所に住んでいるため、緊急時に短時間で駆けつけることはできません。普段から、こまめに親とコミュニケーションをとり、様子を把握しておくことが重要です。
高齢者の体調は、急変しやすいものです。ケアマネジャーと相談し、緊急時に対応できる体制を作っておくことも欠かせません。訪問看護や定期巡回型サービスなど、緊急時に備える介護サービスを利用すると安心感があります。
また親の友人や近隣の地域住民とコミュニケーションをとり、万一の時には協力してもらえる関係づくりをしておくことも重要です。
遠距離介護では、費用負担が大きくなることもデメリットです。帰省には新幹線や高速バス、飛行機などを使用するため交通費がかさんでしまいます。
またケアマネジャーや介護事業所に連絡するための電話代なども必要です。普段から親を見守ってくれる友人や近隣の地域住民へのお土産代などの負担もあります。
通信費については、無料通話アプリなどを使用することで削減可能です。交通費の割引サービスについては、後ほど詳しく説明します。
遠距離介護では親の顔を常に見られない分、心配ごとも多いものです。しかし事前に確認や準備をすることで、不安な点を解消できることもあります。また見守りサービスなどを活用すれば、介護負担を減らすことも可能です。ここでは、遠距離介護を始める前に準備しておくべきことを6つご紹介します。
介護が必要になった場合に備えて、親の希望を聞いておきましょう。認知症や脳疾患などが原因で、希望を確認できなくなるかもしれないからです。親が望んでいない形で介護をしても、意に添わずうまくいかないケースもあります。「どこで介護を受けたいか」「誰に介護してほしいか」など、重要なことは事前に確認しておきたいところです。
親は「子どもに迷惑を掛けたくない」と考える傾向にあり、話を切り出しにくいものです。こちらから話を聞いてあげることで、話しやすい雰囲気を作れます。直接話しにくいと感じる場合には、エンディングノートやスマートフォンのアプリを使用する方法もあります。最近では様々なツールが開発されているので、活用してみるのもいいでしょう。
親の生活リズムについて確認していく上で、実際に親がどんなことで困っているかが分かります。
何の前置きもなく親に「どんなことで困っているの?」と聞いても、すぐには教えてくれないかもしれません。親は子に心配をかけたくない思いから、素直に話してくれないものです。しかし1日の過ごし方なら、比較的聞き出しやすいのではないでしょうか。その中から、困っていることを聞き出せるかもしれません。
困りごとの一例は、以下の通りです。
何かできることがあれば、さりげなくサポートしてあげるのがよいでしょう。早めにサポートすることで、親の活動をより長く継続させられる可能性も高くなります。
特に友人との交流や趣味活動などは重要です。外部との交流が少なくなると、運動機能の低下や認知症になってしまうリスクも上昇します。まずは親の生活リズムを把握し、困りごとなどを見つけてみましょう。
遠距離介護において、親の人間関係を把握することも重要です。気になることや親が体調を崩した場合など、普段から交流している人が知らせてくれるからです。
友人や地域、趣味のサークルなどの中で、特に仲の良い人と連絡先を交換しておくと安心です。親は「なぜ友人の連絡先を聞くの?」と不思議に思うかもしれません。「何かあった時に連絡を取りたいから」と正直に伝えれば、きっと分かってもらえるはずです。遠距離介護において、協力してくれる周囲の人たちは重要です。親がどんな人たちと交流しているのか確認しておくことをお勧めします。
介護が必要になってくると、基本的には親の資金を介護費用に充てることになります。事前に親の経済状況を聞いておくと、「どのような介護サービスを使うのか」「施設入所にいくらまで使えるか」などを検討する際の目安になります。
確認しておきたい具体的な内容は、以下の通りです。
認知症が進行してくると、高齢者をターゲットにした詐欺や悪徳商法などのトラブルに巻き込まれる可能性も出てきます。実印や権利証など、重要なものがどこに保管されているかも把握しておきたいところです。
しかし、親子間であってもお金の話はハードルが高く、焦って聞き出そうとして関係が悪化しても本末転倒です。親と介護の話ができるようになってから、焦らずに確認していくのがよいでしょう。
「ICT機器」とは電気ポットや冷蔵庫などの家電製品に通信装置が設置されており、親が使用した履歴を子が持つスマートフォンなどへ知らせてくれるものです。また家電が長期間使用されない場合にも、異常事態として知らせてくれます。また「緊急通報システム」は、親の体調不良や火災発生などの急変時に、警備会社が駆けつけてくれるシステムです。
以上の見守りサービスを活用すれば、連絡をしなくても親が元気に生活しているのを確認できます。また自治体によっては、見守りサービスを無料で使用できたり補助があったりするので、地域包括支援センターや役所の窓口へ相談されることをお勧めします。
介護の必要性を感じ始めたら、周辺の介護サービス事業所や介護施設について把握しておくことは重要です。介護サービスや介護施設の特徴は多種多様で、すぐに全てを把握するのは難しいからです。
デイサービスやヘルパー、弁当の宅配サービスなど、どんなサービスがあるのかを確認しておくことで、いざという時にも慌てずに対応できます。また認知症の進行など、独居生活が難しい場合に備えて、介護施設についても情報を集めておきたいところです。
以上の把握に有効なのは、地域包括支援センターへの相談です。親の介護が必要になる前でも、無料で相談を聞いてくれます。また各自治体が発行している「介護保険のしおり」には、利用可能な介護サービスや介護保険の仕組みが分かりやすく記載されています。役所の窓口で無料配布していますので、目を通しておくのも有効な手段です。介護についての予備知識を持つことで、どのように親を介護していくかのイメージをしやすくなります。
介護保険サービスを利用しても、それだけで全てをカバーするのは難しいケースもあります。ここでは、遠距離介護の成功に欠かせない秘訣4つを紹介します。
できれば毎週介護をしたいと思っても、遠距離の場合は交通費が大きな負担になることもあるでしょう。航空各社では介護帰省割引制度を実施し、親や祖父母の介護のための航空機の利用に関しては料金が割引になることがあります。また、鉄道でも早めの予約で料金が割引になるサービスを実施しているので、帰省する日を決めたら早めに予約をすることができるでしょう。
遠距離介護では家族が近くで見守れないため、介護サービスを受けていない時間帯は不安を感じがちです。介護保険サービスだけで生活全般をサポートできるわけではありません。
介護保険サービス以外にも、高齢者向け民間サービスはあります。高齢者が持つ困りごとを手助けしてくれるサービスです。具体的には、以下のものがあります。
見守りサービス | 高齢者の体調不良など異変が起きた場合には、 警備会社などが駆けつけてくれる。 24時間365日対応可能。 |
配食サービス | お弁当を自宅へ配達してくれるサービス。 業者によっては、高齢者の顔を見て手渡すなど安否確認も行ってくれる。 |
家事代行サービス | 庭の草むしりや物置小屋の整理など、 介護保険のヘルパーが対応できないことも依頼可能。 |
介護保険サービスでカバーできない部分は、以上の高齢者向けサービスで対応できます。自治体によっては、費用の一部について補助を受けられる場合があります。詳細については、地域包括支援センターやケアマネジャーに問い合わせましょう。
介護リフォームとは、生活環境を整えるために行う住宅改修のことです。介護保険が適用されるので、20万円を上限として費用の1〜3割負担でリフォームできます。ただし事前と事後に市役所への届け出が必要です。
対象となる工事の例は、以下の通りです。
● 手すりの取り付け
● 段差や傾斜の解消
● 滑りにくい床材への変更など
● 和式から洋式トイレへの取り替えなど
日本の住宅洋式は段差が多く、下肢筋力が低下した高齢者には転倒するリスクが高いのです。手すりの取り付けや段差解消により転倒リスクを減らすことは、安心して遠距離介護をする上では欠かせません。
介護リフォームを受けるためには、介護認定を受けていることが前提になります。所定の手続きを行わなければ、補助は受けられません。リフォームを行う前に、必ずケアマネジャーや市役所へ確認されることをお勧めします。
介護休暇や介護休業制度は、家族を介護するために休みを取れる公的制度です。
遠距離介護では、親の病院受診などで会社を休まなければならない場合もあります。「たびたび会社へ休みを申請するのは気が引ける」と感じる人もいるかもしれません。そんな場合に、介護休暇や介護休業制度を活用することで介護の時間を作れるのです。
「介護休暇」と「介護休業」は、どちらも似た性質をもっていますが、内容が少し異なります。2つの制度について、以下に詳しく紹介します。
介護休暇 | 介護休業 | |
制度を利用できる対象者 | 入社6か月以上が経過し、 要介護状態の家族を介護している労働者 | 入社1年以上が経過し、 取得予定日から「93日+6か月」を経過しても 契約期間が満了しない労働者 |
取得できる休日の日数 | 対象家族1人につき、1年度に5日まで | 対象家族1人につき通算93日 (最大3回まで分割可能) |
申請方法 | 口頭もしくは書面にて当日申請が可能 (会社の規定による) | 休業開始日の2週間前までに 会社へ書面等で申請 |
賃金・給付金の有無 | 公的な支援はない | 介護休業給付金制度あり (一定の要件を満たす場合、 休業開始時賃金日額×支給日数×67%が 支給される) |
役所や銀行の手続きなど、1日で対応できる用事への対応は介護休暇が適しています。また親の状態が変わった時や入院してしまった場合などは、介護休業の取得が適しているでしょう。
ケースに応じて2つの制度を使い分けて、柔軟に対応することが遠距離介護成功の秘訣です。
遠距離介護が必要になったら、まずは介護保険サービスを受けられるようにしましょう。介護保険サービスを利用するには、介護保険(介護認定)の申請が必要です。
介護保険サービスとは、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるために受けられるサービスのことです。デイサービスに通って入浴や食事の支援を受けたり、ヘルパーに自宅を訪問してもらい調理や掃除などをしてもらったりします。
介護が必要な高齢者は、費用の一部を負担することでサービスを利用できます。
介護保険サービスを受けるためには、まず介護保険の申請を行う必要があります。最寄りの地域包括支援センターまたは、役所の高齢者福祉窓口で手続きが可能です。
必要な書類は、以下の通りです。
申請後、役所の職員が心身の状態を調べるために訪問します。要介護認定の結果が通知されるまでの目安は約1か月です。要介護認定の結果、要介護1〜5もしくは要支援1.2と認定された場合は介護サービスを受けられます。
要介護1~5と認定され自宅での介護を希望する場合は、居宅介護支援事業者に連絡しケアマネジャーの担当依頼をします。居宅介護支援事業者とは、ケアマネジャーを配置しているサービス事業者のことです。また要支援1.2の判定が出た場合は、そのまま地域包括支援センターのケアマネジャーが担当となります。
ケアマネジャーは介護保険のプロフェッショナルであり、介護に関する相談を聞いてくれたり必要な介護サービスの調整をしてくれたりします。ちなみにケアマネジャーの担当料金は、介護保険制度で負担されるので無料です。
介護サービスを利用するため、ケアマネジャーに介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらいます。ケアプランとは、利用者が自分らしく生活するための計画書です。
具体的な内容は、以下の通りです。
ケアプランは自分で作ることもできますが、専門的知識が必要なので通常はケアマネジャーへ依頼します。ケアプラン作成料も、介護保険制度で負担されるので無料です。
遠距離介護における帰省頻度は、人それぞれです。「親がどれくらい自分のことができるか」「介護サービスを含め、周囲に協力してくれる人が居るか」などで大きく変わってきます。
毎週帰省する人もいれば、月に1回や2〜3ヵ月に1回の人もいます。帰省した時に大きな買い物や粗大ごみの処分など、親だけではできない用事を済ます人も多いようです。
親が入院した場合などは、帰省の頻度を増やして対応しなければなりません。状態の変わり目は、介護負担が大きくなりがちです。
介護者ひとりに負担が集中するのを避けるため、兄弟姉妹がいる場合には役割を分担して対応するのがよいでしょう。前章で紹介した「介護休暇や介護休業制度」を活用するのも有効です。誰がどのような介護をするのか、親族間で話し合い役割分担を決めておきましょう。
遠距離介護は、親御さんのことを思う気持ちが強ければ強いほど、心身にかかる負担も大きくなりがちです。離れて暮らすことで、毎日が心配の連続で、遠くからの介護に限界を感じる瞬間もあるかもしれません。そうした時、どれほど頑張っても自分だけではどうにもならないと感じることがあるでしょう。
そんなときは、無理をせずに老人ホーム探しを考えてみてはいかがでしょうか。親御さんが安心して過ごせる場所を提供し、専門スタッフが24時間体制でケアを行ってくれる環境は、あなたの心の負担を軽減する助けになります。また、介護から少し解放されることで、親御さんとの時間をより穏やかに、そして大切に過ごせるようになるでしょう。
あなたの悩みや不安を一人で抱え込まず、専門家の力を借りることも選択肢の一つです。親御さんのため、そしてあなた自身のために、老人ホームという新しい選択肢を前向きに検討してみてください。
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