静岡県の老人ホーム・介護施設情報サイト

ホーム >  介護お役立ち情報 >  介護用品 > 介護保険でレンタルできる福祉用具 転倒リスクを軽減できるスロープ

介護お役立ち情報

介護保険でレンタルできる福祉用具 転倒リスクを軽減できるスロープ

2024年8月12日
花井 敦由奈(介護福祉士)
カテゴリー:
介護お役立ち情報

スロープはどんな状態のときに使うべきか

スロープは、段差を解消するために使用する福祉用具です。板状の用具を地面と段の上に架けて使用します。段差があると、車椅子を使用している方が通行できないため、そうした事態を回避するために用いられます。

また、車椅子を使用していなくても、足腰の弱っている高齢者は使用すべき用具です。足腰の筋肉が衰えていると、健常者には問題のない段差でもつまづいてしまい、転倒してしまうおそれがあるからです。自宅に段差がある、段差のある場所へよく足を運ぶ、といったケースでもスロープはよく用いられています。

スロープはどんな悩みを解決することができるのか

段差による通行の不便さ

車椅子を使用している方の場合、段差があるとそこから先へ進めません。5~10cm程度の段差であっても、車椅子の車輪で乗り越えるのは困難です。しかし、スロープがあれば、段差を解消できるため通行の不便さを改善できます。スロープを設置すれば、介護を必要とする方の行動範囲を広げられるメリットもあります。たとえば、玄関の土間と上り框のあいだにスロープを設置すれば、自由に外との行き来が可能となるのです。気分転換に少し庭へ出る、新聞をとりにいくといったことも可能です。

転倒のリスク

わずかな段差であっても、車椅子で乗り越えようとすると、転倒してしまうリスクがあります。周りに介護者がいればまだしも、誰もいないときに転倒してしまうと、ケガを負ったまま放置されてしまうおそれもあるのです。スロープの使用により、こうしたリスクを回避できます。もちろん、スロープを設置したからといって、転倒のリスクを完全になくすことは難しいでしょう。しかし、スロープの使用により車椅子や歩行器での行き来がしやすくなり、転倒リスクを軽減できるのも事実です。

介護者の負担

スロープの使用により、介護者の負担を軽減できます。車椅子を1人で操作できない要介護者の場合、外出時には介護者が車椅子を操作するケースがほとんどです。平坦な道なら問題ありませんが、小さな段差がある場所を通行する場合には、車椅子を強く押す必要があり、体力を消耗してしまいます。

たとえば、自宅の玄関アプローチが5段程度の階段だった場合、介護者は一度要介護者を車椅子から下ろし、抱えて家に入らなくてはなりません。誰か協力してくれる方がいればまだしも、そうでないのなら1人で要介護者を抱えなくてはならないのです。

このようなケースでも、スロープを設置していれば1人の介護者だけで問題なく対処できます。要介護者を車椅子に乗せたままスロープをのぼり、自宅に入れるからです。余計な体力を消耗しないため、介護者の身体的負担を軽減できます。

スロープの利用時における注意点

表面が滑る可能性がある

福祉用具としてのスロープには、さまざまな製品があります。製品によって、使用されている素材が異なり、表面の滑りやすさが異なります。多くのスロープは、表面に滑りにくい加工を施していますが、中にはそれでも滑りやすいものがあるため、注意が必要です。特に、屋外用スロープは耐久性が求められるため、アルミやステンレスなど、金属素材を用いたものが多くを占めています。表面に滑り止め加工を施していない場合、雨天時には濡れて滑りやすくなるため注意しなくてはなりません。表面が滑りやすいと、車椅子でスムーズに通れないだけでなく、介護者が転倒してしまうリスクもあります。一方、屋内用スロープの多くは、ゴム製や樹脂製など滑りにくい素材を使用したものが多くを占めていますが、できれば事前に確認することをおすすめします。

耐久性を確認する

前述したように、スロープに使用されている素材はさまざまです。ゴムや樹脂、金属、木製などがあり、それぞれ耐久性が異なります。使用環境によっては、耐久性が低下し、思わぬ事故につながるおそれがあるため注意が必要です。特に、屋外で使用するスロープは、できるだけ耐久性の高い素材でできたものを選ぶべきです。該当するのは、金属やカーボンなどです。一方、ゴムや樹脂でできたスロープは、紫外線や外気の影響で劣化しやすい傾向があるため、注意が必要です。また、木製のスロープは水や湿気に弱いため、屋外での使用には向きません。そのため、木製スロープは雨に濡れない屋内での使用が一般的です。

歩行器や多点杖には向かない

高齢者や要介護者の歩行をサポートしてくれる歩行器ですが、スロープで使用するのには適しません。スロープの上を歩行器で歩いてしまうと、体と用具が斜めになってしまい、前後へ転倒してしまうおそれがあるからです。多点杖を使用しているケースでも同様に、リスクが伴うため注意しましょう。歩行器や多点杖を使用している方の場合は、スロープではなく式台、玄関台のほうが安全です。歩行器と多点杖、車椅子どれも使用するのなら、スロープと式台・玄関台どちらも用意しておくと便利です。

スロープの種類と選び方

レールタイプ

レールタイプのスロープは、車椅子の車輪が通るレールを設置していることが特徴です。スロープの表面に2本のレールが敷かれ、車椅子の車輪はその上を通過します。レールタイプのスロープは、1本ずつにわかれているものがほとんどであるため、運びやすいのも特徴です。1人で設置しやすいため、介護者の負担も軽減できるでしょう。軽量設計のものが多く、取っ手が備わったものも多いため持ち運びしやすい特徴もあります。

一枚板タイプ

スロープが一枚の板でできているタイプです。安定感があり、電動三輪車やワゴンなどにも対応できます。一枚板であるため、介護者が車椅子を押しながら一緒にスロープをのぼれるのもメリットといえるでしょう。1人で車椅子を操作できず、常に介護者に押してもらわなければならない方に向いています。また、電動三輪車や四輪車を普段から使用している方にも適したタイプです。

選ぶときのポイント

素材も重要ですが、それ以上に長さを重視して選びましょう。段差が大きければ大きいほど、長めのスロープにしないと傾斜がきつくなり、要介護者の転倒リスク、介護者の身体的負担が高まります。使用場所や用途に応じ、スロープの長さを決めましょう。

まとめ

スロープがあれば、介護が必要な方は転倒リスクを軽減でき、行動範囲も広げられます。今まで以上に快適な暮らしを実現できるため、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。また、ここでお伝えしたように、スロープの導入は介護者の身体的な負担軽減も実現します。要介護者と介護者、どちらにもメリットがあるため、導入をおすすめします。

著者プロフィール

花井 敦由奈(介護福祉士)
花井 敦由奈(介護福祉士)
静岡市駿河区生まれ。大学卒業後、地元の介護事業会社に就職。小規模多機能型居宅介護、デイサービス、訪問介護の現場に従事し、介護福祉士の資格を取得する。訪問介護ではサービス提供責任者として様々な在宅介護の現場を経験。お客様やご家族様とコミュニケーションを図りながらニーズを探り、ケアマネジャーと連携を取りながら様々なケースに対応してきた。

監修者プロフィール

増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
増田 高茂(社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者)
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。

関連記事