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介護保険外サービスは、介護保険サービスのように種類が限られたサービスではないため、戸惑う方が多いかもしれません。ただ、介護保険外サービスが対象としているのは、介護保険サービスでは対応できない分野であるので、うまく利用することで高齢者の在宅生活をより豊かにしてくれます。この記事では、種類や事業所選びのポイント、メリット・デメリットなどの様々な視点で、介護保険外サービスについて解説しています。
目次
介護保険外サービスとは、介護保険サービスの対象外の分野にも対応しているサービスです。介護保険サービスは在宅の日常生活の範囲を対象としていますが、介護保険外サービスは日常生活の範囲外も対象にしています。例えば、訪問介護系サービスにおける両サービスに違いは以下のとおりです。
介護保険サービス | 介護保険外サービス |
・通常の掃除 ・整理整頓 ・利用者の食事の準備・調理 ・薬の受け取り ・玄関掃除(一人暮らしの場合) | ・大掃除 ・模様替え ・利用者家族の食事の準備・調理 ・病院の診察室内での介助 ・庭の草むしりや植木の手入れ |
以上のように、介護保険外サービスは様々な分野に柔軟に対応しているため、高齢者が自分らしく在宅生活を送るうえで欠かせないサービスと言えます。
介護保険外サービスには様々な種類があり、以下のようにサービス内容で分類できます。
また、事業者・団体で以下のように分類できます。
介護保険外サービスの費用については、事業者や内容、地域によるため一概には言えませんが、訪問介護系サービスなら1時間当たり3,000~5,000円です。
それでは、介護保険外サービスを一つひとつ確認していきましょう。
介護保険サービスの通所介護では、介護保険外サービスを提供している事業所もあります。提供している介護保険外サービスは、通所介護に関連した以下のようなサービスです。
利用者家族の帰宅が遅い日や一人暮らしで夕食の準備が難しい方などに適したサービスと言えます。
また、意外に思われるかもしれませんが、宿泊という介護保険外サービスを提供している通所介護事業所もあります。顔見知りのスタッフがいる状況で宿泊できるため、利用者も安心して過ごせるでしょう。
介護保険サービスの訪問介護でも、介護保険外サービスを提供している事業所があります。以下のような介護保険サービスでは対応できない日常生活以外の分野に柔軟に対応します。
以上のようなサービスを日頃から顔見知りのスタッフに依頼できるため、利用者にとって気遣いやストレスもなくサービスを利用できます。その都度ほかの業者へ依頼するのであれば、業者探しや手配の段階で疲れてしまうでしょう。
高齢者の見守りサービスとは、電話や訪問などで一人暮らしの高齢者の健康状態や生活状況を確認するサービスです。実際に顔を見たり声を聴いたりすることで状況を把握できることがメリットです。訪問では消費者被害や生活状況の乱れなども確認できます。サービスや事業者によって異なりますが、頻度は週1回から月1回です。
地方自治体の見守りサービスもありますが、高齢者にとって馴染みが深い郵便局(日本郵便株式会社)も、「郵便局のみまもりサービス」という名称のサービスを提供しています。
緊急通報システムの利用サービスは、機器のボタンを押すだけで事業者が駆け付けてくれるサービスです。機器は事業者が貸し出してくれるので、特別な準備は必要ありません。持病があり一人暮らしに不安を感じている高齢者には、おすすめのサービスです。地方自治体も緊急通報システムの利用サービスを提供しています。
ただ、警備会社のほうがオプションで相談やセンサーによる安否確認などのサービスもあります。複数のサービスでより多角的に一人暮らしの高齢者を守りたい場合に適したサービスです。
配食サービスは、栄養バランスが取れた弁当を毎日配達してくれるサービスです。事業者によって弁当の価格が異なるため、利用者の経済状況にあわせて業者を選択できる点もメリットです。手渡しが原則であり約束した配達日時に利用者が出られないときは、登録した緊急連絡先に連絡するため、見守りサービスの役割も兼ねています。
地方自治体も配食サービスをしている場合があります。民間事業者よりも安い価格で利用できますが、対象者が限定されていたり利用条件が厳しかったりすることがデメリットです。
訪問理美容サービスは、自宅まで理容師・美容師が訪問し調髪を行います。ヘアカットだけではなくパーマやカラーリングも行っています。髪にかかわるサービスのほかに、フェイシャルエステや化粧、ネイルケア、マッサージなどの、いわゆる介護美容に対応する事業者がいることも特徴です。
「いつまでも美しくいたい」と願う女性の気持ちに応えるサービスであり、生きがいにもつながるため、とても重要なサービスと言えます。なお、自治体によっては要介護の高い方向けの調髪のみサービスもあり、数百円という低価格で利用できます。
介護保険外サービスは地方自治体も行っています。地方自治体サービスは、自治体によって種類が違うことや、誰でも利用できるわけではなく利用対象者が決まっていることが特徴です。利用対象者は、介護保険の介護認定を受けた方と、それ以外の方に大きく分けられます。ここでは、静岡県静岡市の介護保険外サービスについて紹介します。
介護認定を受けた方が利用できるサービスは以下のとおりです。
サービス名 | 対象者 |
高齢者紙おむつ 支給制度 | 要介護4以上の方。紙おむつが必要と認められた要介護1~3の方も対象 |
理容・美容サービス | 要介護3以上・65歳以上の在宅の方で外出して調髪を受けることが難しい方 |
配食型見守りサービス | 介護認定のある方。生活機能の低下している介護認定のない方も含む |
介護認定のない方が利用できるサービスは以下のとおりです。
サービス名 | 対象者 |
ひとり暮らし高齢者等 緊急通報システム | 原則65歳以上の一人暮らしの方で、 生活保護世帯・市民税非課税世帯 |
自動消火器の設置 | 原則65歳以上の一人暮らしの方で、 生活保護世帯・市民税非課税世帯 |
はり・きゅう・マッサージ 施術費助成制度 | 75歳以上が対象。 指定施術者の施術に限る |
シルバーカード | 70歳以上の高齢者。 無料や割引料金で市の施設に入場できる |
介護保険外サービスを提供している事業者を選ぶときのポイントは大きく分けて以下の2点です。
それでは、事業者ごとの介護保険外サービスの特徴を一つ一つ確認していましょう。
市区町村が実施する「高齢者在宅サービス」は、安心して在宅生活を過ごすために必要なサービスです。市区町村が実施しているため、安い価格で利用できるサービスも多いことが特徴です。しかし、利用対象者が決まっているデメリットもあります。傾向としては介護が必要な方や経済状況の苦しい方が利用しやすくなっています。
市区町村が中心に実施する「介護予防・日常生活支援総合事業」は、地域の高齢者ができるだけ元気に在宅生活を過ごせるように支援する事業です。介護予防・日常生活支援総合事業は、市区町村が中心になり、地域にあった様々なサービスを充実させることを目的にしています。
介護予防・日常生活支援総合事業の一つの一般介護予防事業では、体操教室・交流活動などの介護予防活動や、認知症予防の啓発活動などの様々な事業者が行っています。種類が多く無料で利用できるサービスがほとんどであるため、どれを利用するか悩んでしまうかもしれません。もし悩むようであれば地域高齢者の相談窓口である地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。
介護サービス事業者による介護保険外サービスは、日頃介護保険サービスを利用して顔馴染みのスタッフからサービスを受けられることが特徴のサービスです。顔馴染みのスタッフであるため、気遣いなく安心してサービスを利用できます。ただ、介護保険外サービスを関連事業者に任せる介護サービス事業者もあります。初めから介護保険外サービスの利用を考えているなら、両サービスに対応している介護サービス事業者にお願いすると、利用者も混乱しなくてよいでしょう。
社会福祉協議会やシルバー人材センターのサービスは、庭の草むしりや植木の手入れ、大掃除などに対応しているサービスです。金額的にも安く利用できるため、年金生活の高齢者にとっては利用しやすいサービスと言えるでしょう。ただ、地域のよってサービス内容が異なるため、どのような分野に対応しているか利用前にしっかり確認することが必要です。
民間企業の介護サービスや高齢者支援サービスは、様々な分野に対応しているサービスです。一般の方も利用する家事代行や大掃除、庭整備などのサービスを含むため、利用したいサービスがきっと見つかるでしょう。ただ、便利であるためについ利用しすぎてしまうことに注意してください。介護保険サービスのように費用の1~3割負担ではなく、金額どおり全額を支払うため、必要なサービスかどうかしっかり見極めることが重要です。
介護保険外サービスの利用には以下のようなメリットがあります。
一つひとつ確認していきましょう。
メリットの一つ目は充実した幅広いサービスを受けられることです。介護保険サービスのように利用対象者や利用条件が決まっているわけではなく、お金さえ支払えばどのようなサービスも利用できるからです。介護保険外サービスは介護保険サービスでは対応できない範囲も対応していて、一般の方が利用する家事代行のようなサービスも含めると、その範囲はどこまでも広がっていきます。介護保険外サービスをうまく利用して充実したシニアライフを楽しみましょう。
メリットの二つ目は質が高く新しいサービスが増加していることです。なぜなら、規制がほぼなく事業者間の競争が適切に行われているからです。介護保険サービスのような条件がないため、事業者はサービスの質で勝負しています。さらに、サービスを利用してもらえるように、かゆい所に手が届くような新しいサービスが次々と生まれているのです。
また、サービスの内容以外では、サービスの選択方法も新しくなってきています。例えば「くらしのマーケット」のようにインターネットでサービスを購入する方法も生まれています。質が高く新しいサービスがさらに増加すれば、今まで以上に高齢者のニーズに対応できるようになるでしょう。
介護保険外サービスの利用には以下のようなデメリットがあります。
一つひとつ確認していきましょう。
デメリットの一つ目は金銭的負担が大きいことです。なぜなら、費用の全額を原則負担しなければならないからです。市区町村が提供するものもありますが、民間企業が提供する介護保険外サービスの利用料は、全額を原則負担する必要があります。そのため、介護保険サービスのように利用していては、かなりの金額的負担になってしまいます。質が高く幅広いサービスを受けられますが、金額的負担が大きいというデメリットも踏まえて利用するようにしましょう。
デメリットの二つ目は不要なサービスが提供される可能性もあることです。なぜなら、介護保険サービスのようにケアマネジャーではなく、利用者自身がサービスの調整をするからです。質が高く幅広いサービスに対応しているため、便利でつい利用しすぎてしまうこともあるでしょう。さらに、事業者の言うままにサービスを利用してしまうことも考えられます。本当に必要なサービスかしっかり見極めて利用するようにしましょう。
同一事業者から介護保険サービスと介護保険外サービスを混ぜて利用することが、制度上で認められています。これを「混合介護」と呼びます。例えば、訪問介護のサービス利用の前後に、同じ訪問介護員から提供される大掃除や庭の草むしりなどの介護保険外サービスを受けることができます。国は、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けるためにも、介護保険外サービスを含めた混合介護の利用が重要であると考えています。
訪問介護の保険外サービスの自費サービス料金は、事業者や内容、地域によって異なるため一概には言えませんが、目安としては1時間当たり3,000~5,000円です。料金体系は以下のようなものが一般的です。
事業者によって料金体系が異なるため利用前にしっかり確認するようにしましょう。
介護保険外サービスは、介護保険サービスではカバーできない分野も対象とする幅広いサービスです。うまく利用することで、高齢者の在宅生活がより豊かになり、家族の介護負担も軽減されます。しかし、その幅広さゆえに、サービスの種類や提供事業者の特徴を把握するのが難しいこともあります。
このような場合は、介護保険サービスを利用している方はケアマネジャーに、利用していない方は地域包括支援センターに相談することが解決策の一つです。専門家のアドバイスを受けることで、自分に合ったサービスを見つけやすくなります。
介護保険外サービスをうまく活用して、高齢者が安心して暮らせる環境を整えましょう。
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