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老人ホームを探すうえで、利用される高齢者に人工透析が必要な場合はどうしたらいいのでしょう。
今回は、人工透析が必要な方の老人ホーム選びについて、ご家族に知っていただきたいポイントを説明します。
そもそも、人工透析とはどのようなものでしょう?
人工透析は、腎臓の機能が低下した場合に、透析器に血液を通すことできれいにする治療法です。
腎臓には以下のような役割があります。
腎臓の機能が著しく低下すると、老廃物や余分な水分が体内にたまってしまいます。その結果、体がむくんだり、吐き気や意識障害・心不全などを起こしたりして、最悪命を落とすことになるのです。
血液透析では、血液を体外に取り出します。腎臓の代わりを担う機械に血液を通すことで、体の中に溜まった老廃物や余分な水分を除去し、きれいな血液を再び体内に戻します。この過程を週に3回、1回につき4時間程度行うのが一般的です。
人工透析が必要となる主な原因には慢性腎不全や急性腎不全があります。日本では2022年末において、約34万人を超える方が人工透析をうけて生活しています。[1]
人工透析には、血液透析と腹膜透析の2種類の方法があります。
それぞれ、簡単に説明しますね。
①血液透析
血液を体の外に出し、透析器を通すことで血液中の老廃物や水分を取り除き、体内に戻す方法です。透析器の中にはダイアライザーというフィルターがあり、外側を透析液、内側を血液が流れる仕組みになっています。ダイアライザーに血液が通り、血液中の老廃物や水分を透析液に吸着させることで、血液をきれいにできるのです。
血液の出し入れには「シャント」と呼ばれる、動脈の一部と静脈の一部をつなぎ合わせ血管を太くしたものを腕につくる必要があります。シャントに2本の針を刺すことで、血液の入口と出口を確保します。
②腹膜透析
お腹の中にある腹膜を通しておこなう透析方法です。
カテーテルと呼ばれる管を使い、お腹の中に透析液を入れます。腹膜には無数の毛細血管が存在しており、透析液を一定時間お腹の中にとどめておくと、血液中の老廃物や水分が透析液に移動します。透析液をカテーテルを通して体の外に捨て、新しい透析液を入れる作業を1日に3〜4回繰り返すことで、血液をきれいにできるのです。
腎臓の機能が著しく低下すると、人工透析が必要になります。
代表的な病気に以下のものがありますので、覚えておきましょう。
慢性腎不全 | 長期にわたり腎機能が徐々に低下する状態。最初は無症状の場合もあるが、夜間の多尿や貧血、だるさ・脱力感、進行すると尿毒症を発症する場合もある。慢性腎不全になる原因として、高血圧や糖尿病があげられる。 |
急性腎障害 | 腎機能が急激に低下して、体の中の水分や塩分バランスが維持できなくなる状態。適切に治療されないと、腎不全におちいり人工透析が必要になる。 |
糖尿病性腎症 | 糖尿病の三大合併症のうちのひとつ。高血糖の状態が続くと、全身の毛細血管に障害が生じる。腎臓にも影響がおよび、タンパク尿を認めるようになり、進行すると末期の腎不全状態になる。 |
慢性糸球体腎炎 | 糸球体は、腎臓の中でも血液をろ過し老廃物を除去するのに重要な役割を担っている。ここに炎症がおきることでタンパク尿や血尿、高血圧などの症状をきたす。診断後、20年ほどで約30%〜40%が慢性腎不全に移行し、人工透析が必要になる。[2] |
腎硬化症 | 高血圧によって腎臓の血管が固くなり、動脈硬化を起こす。動脈硬化で血液の流れが悪くなって腎臓が固くなると、腎機能が低下し、慢性腎不全を引き起こす。 |
これらの病気になると、体の中の老廃物や水分が適切に排出されなくなります。一般的に通常の腎機能を100%としたとき、10%以下になると人工透析の導入や腎移植が必要とされています。[3]
高齢化に伴い、人工透析を受けられる方の年齢も年々上昇しています。2022年の調査で人工透析患者の平均年齢は69.87歳、その中でも最も割合が高いのは、男女とも70〜74歳でした。[4]透析治療を始めた患者の平均年齢も上昇しており、男性で70〜74歳、女性で80〜84歳で最も割合が高くなっています。[5]
高齢者にとって、透析治療は体力的にも精神的にも負担が大きいものです。そのため、適切なケアとサポートが必要になります。
まず、透析治療自体が高齢者の体に与える負担を軽減することです。血液透析は週に数回行われ、1回の治療に数時間かかり、心身に多大なストレスをおよぼすのです。また、高齢者は体力が低下しているため、治療中や治療後の休息を十分に確保することが求められます。透析を行う医療施設までの移動も高齢者にとっては負担になるため、適切な交通手段や支援が必要です。
次に栄養管理です。透析を受けている高齢者は特定の栄養素を制限しなければならない一方で、十分な栄養を摂取して体力を維持する必要があります。栄養士の指導を受けながら、バランスの取れた食事を提供し、食べていただくことが重要です。
そのうえ、心理的なサポートも欠かせません。慢性的な治療の継続や体力の低下により、うつや不安を感じる高齢者も少なくありません。腎不全の症状の1つである体のかゆみで不眠を訴え、精神的に不安定になる高齢者もいらっしゃいます。ご家族や施設スタッフとのコミュニケーションを密にし、精神的安定を提供することが大切です。
最後に、家族の支援も重要です。ご家族が高齢者の状態を理解し、日常生活の中で適切なサポートを提供することで、高齢者の生活の質を向上させることができます。家族自身もケアに関する知識を深め、必要に応じて専門家の助けを借りることが推奨されます。
以上のように、人工透析が必要な高齢者のケアは多岐にわたり、包括的かつ継続的な支援が求められます。
人は加齢とともに、腎臓の機能が自然に低下します。高齢者ではこの低下が顕著にあらわれやすく、腎臓病のリスクが高まるのです。
また若い人同様、高齢者でも腎機能が著しく低下し、体の中の老廃物や水分が適切に外に出せない場合に人工透析の導入が検討されます。
血液透析では、専門の医療施設で行うことから、医療スタッフの見守りのもと安心して透析を実施できます。その一方で、透析のたびに通院する必要があり、移動や通院が困難な高齢者にとっては負担になるでしょう。
一方、腹膜透析は自宅で行える利点があります。血液透析のように、都度通院する必要がなく、透析患者の生活スタイルに合わせやすいです。しかし、透析液の交換などの手技を覚える必要があり、高齢者が自己管理するには難しいことも予測されます。その場合には、家族や介護をする方のサポートが不可欠です。
透析の治療を受けながら生活の質を保つには、4つのケアが重要です。
身体的ケア
高齢者の透析患者は、特定の栄養素の管理が必要になります。栄養士や医師の指導を受けながら、それぞれの患者に合った食事を提供することが必要です。
また、体力や病態に応じての適度な運動も、全身の健康や体力維持には重要といえます。無理のない範囲で継続できるように、サポートすることが大切です。
精神的ケア
透析治療に対する高齢者の不安やストレスを軽減するため、ご家族とのコミュニケーションを十分とることが有効です。趣味などのコミュニティ活動で社会とのつながりを維持することも、孤独感の軽減につながります。
医療的ケア
人工透析と併用する内服治療の管理が必要です。処方されたとおりに内服できているかや、副作用が出ていないかなどのチェックを行います。
さらに、透析患者は感染症へのリスクが高いため、感染対策を念入りに行う必要があります。
生活支援
日常生活の支援が必要な場合には、介護サービスを活用します。
また、人工透析で通院する際は、交通手段を確保したり、送迎サービスの利用を検討したりする必要があります。
自宅で人工透析を行う場合は、透析の機械の管理やトラブルがおこったときの対応も必要です。
人工透析に対応した老人ホームは、透析治療を受けるための通院サポートや、透析に関する専門知識を持った医療スタッフが常駐しています。
しかし、通院介助に必要な職員の確保や、人工透析の知識が乏しいことから、受け入れが困難な施設もあることは事実です。入所が可能な老人ホームは限られる可能性が高いですが、施設内に人工透析対応可能な医療施設を持つ老人ホームもありますので、検討する際には視野にいれるといいでしょう。
人工透析に対応した老人ホームの特徴として、以下のものがあげられます。
この条件を満たす老人ホームであれば、高齢者が安心して透析治療を受けることができるでしょう。
人工透析は、治療のスケジュールが決まっています。老人ホームは治療の日程に合わせて、柔軟な対応が求められます。
また、人工透析を行う高齢者は合併症を発症する可能性があることから、医療体制の整っている老人ホームへの入所が理想的です。さらに、透析施設とは別の医療施設への通院がある場合などは、老人ホームと連携を取りながら高齢者の健康管理をする必要があります。
高齢者によっては、もともとの病気や加齢による体力低下などの理由から、身体介護を必要とする場合も考えられます。施設を利用される高齢者の状態に応じて、臨機応変な対応が可能な施設を選ぶと良いでしょう。
人工透析を行うには、医療施設に併設されている老人ホームでない限り、通院する必要があります。
医療施設や老人ホームで行っている送迎サービスがあれば、そちらを利用するのも一つの手でしょう。送迎サービスは、老人ホームと医療施設の間を専用の車で送り迎えしてくれるものです。送迎は、医療施設や老人ホームの職員が直接行うことが多いので、介助が必要な高齢者でも安心して利用できます。送迎サービスは、対象となるエリアが限られていることがありますので、利用する際には確認が必要です。
そのようなサービスがない場合には、タクシーの利用も考えましょう。タクシー会社によっては、車いすやストレッチャーに寝たまま乗車できる介護タクシーを持つところもあります。ただし、費用が高額になりがちです。
地方自治体によっては、人工透析を行う方に対して通院に伴う経費の補助金を出しているところもあるようです。ご自身のお住まいの地域の制度を確認するのをおすすめします。
ここでは、血液透析をはじめた透析患者さんの食事療法について説明します。
まず、タンパク質の制限が必要です。タンパク質を大量に摂取すると、タンパク質を代謝する際に老廃物がたまり、腎臓に大きく負担がかかります。結果、腎機能をさらに悪化させてしまうのです。
タンパク質の摂取を制限すると、カロリーの摂取量が減ります。しかし、カロリー不足になると自分の筋肉(タンパク質)を分解してカロリーを消費するので、これも腎機能の悪化につながります。そのため、炭水化物や脂質からカロリーを摂取する必要があるのです。
さらに、腎機能が低下すると、塩分の排出ができなくなります。塩分を制限することで、血圧を下げ、腎障害の進行を抑える効果があるだけでなく、むくみや心不全の予防にもつながります。
カリウム(K)やリン(P)といったミネラル分も制限が必要になるので気を付けましょう。
透析にかかる費用には主に医療費、薬剤費、通院費が含まれますが、決して安いものではありません。
ここでは、透析治療に関する費用や出費を軽減させるポイントについて説明します。
血液透析は年間約480万円、腹膜透析だと年間約360万〜600万円かかり、どちらも高額といえるでしょう。[6]
また、腎臓の病気以外に他の病気を持っている場合、さらにその医療費もかかることになります。
透析治療の出費は、公的制度を利用することで減らせます。透析治療は、始めたら一生継続していかなければならないものですので、該当するものがあるか必ず確認しましょう。
身体障害者手帳
市区町村の障害福祉担当に申請書と診断書・意見書を申請すると1〜2か月で交付されます。腎臓機能障害の等級は1級・3級・4級があり、人工透析治療をおこなっていると1級になります。
身体障害者手帳を取得することで、障害者医療費助成制度の利用や公共交通機関の割引、自立支援医療(更生医療)の給付をうけられますが、所得によって制限がありますので注意が必要です。
特定疾病療養受療制度
こちらは人工透析治療の自己負担限度額が月額1万円(所得に応じては月額2万円)になる制度です。手続きの方法は加入している保険によって異なりますが、特定疾病認定申請書・意見書と保険証があれば申請可能です。手続きをした月の1日から使用できます。入院をした際の食事代には使用することができません(自己負担)。
障害者自立支援医療制度(更生医療)
人工透析治療を行っている患者さんは、自立支援医療制度の更生医療の対象になります。所得に応じてひと月あたりの負担上限額が設定されていますが、月額のすべての医療費が上限額に満たない場合は1割負担となります。
この制度は、指定された医療機関でのみ利用でき、申請はお住まいの市町村の担当窓口で行うことが可能です。申請書類は自治体によって異なることがありますので、あらかじめ問い合わせておくと良いでしょう。
障害年金
国民年金や厚生年金などの年金加入者が、65歳を迎える前に病気などで一定の障害を受けた場合に、受け取れる年金のことをいいます。人工透析治療を受けている方は2級に相当します。
障害の原因となった病気の初診日に年金に加入しており、一定期間の保険料の滞納がないことが給付の条件です。手続きは加入している年金によって異なるため、確認をしておきましょう。
老人ホームを選ぶ際には、実際に施設を訪問し、透析治療を受けるための環境や設備を確認することが重要です。事前に、ホームページやパンフレットなどで利用料金や施設内の雰囲気を確認できると、なお良いでしょう。
ここでは、施設を訪問する際に確認するべき項目についてお話します。
透析治療を受ける高齢者の施設入所に向けて、老人ホームを訪問(見学)するときに確認すべき項目として、以下のものがあげられます。
透析治療をおこなう医療施設を併設しているか、していなければ医療施設までの移動手段はどうするのか
まずは、透析治療ができる医療施設を併設しているかの確認が必要です。近くに医療施設がない場合には、老人ホームから医療施設までの移動手段を確認します。老人ホームや医療施設によっては、送迎サービスを行っているところもあります。送迎サービスがない際は、タクシーの利用を検討しましょう。
入所する高齢者に認知症がある場合は、透析中の見守りが必要になります。付き添いは老人ホームで対応するのか、家族が対応するのかを事前に確認しておきましょう。
シャントやチューブなどの管理ができるか
血液透析に使用するシャントは、日常生活での管理が欠かせません。
シャントと反対の腕で血圧測定・採血を行っているか、シャント感染を予防しているかなど、施設職員が適切に管理できるかを確認します。
腹膜透析をしている高齢者の場合は、透析に使用するカテーテルからの感染や透析液の管理を行う必要があります。老人ホームの看護師だけでなく、介護職員も正しい知識をもって対応できるかをチェックしましょう。
水分や食事制限に適切に対応できるか
透析患者は前述の通り、水分や食事の制限を余儀なくされます。塩分や水分管理を可能な老人ホームは多いですが、タンパク質やミネラルを適切に管理できるところはあまり多くないといえます。
透析患者にとって、水分や食事の管理は生きていくうえで重要です。見学の際に、どこまで管理ができるのかをしっかりと確認しましょう。
合併症や体調不良時の対応ができるか
透析患者は、透析中や透析直後に以下の合併症をおこしやすいとされています。
合併症やその他の体調不良時に、スムーズに医療施設への受診ができるかを確認しましょう。
また、老人ホームと連携している嘱託医と透析をしている医療施設が異なる場合には、連携がとれているかもあわせてチェックする必要があります。
終末期ケア・看取りケアに対応しているか
最期まで老人ホームで暮らすことを希望していれば、施設訪問の際にあらかじめ確認しておきましょう。なぜなら、すべての老人ホームが終末期ケアや看取りケアの対応をしているわけではないからです。
あわせて、老人ホームでの看取りケアの流れを確認し、可能であれば入所するご本人と今後のことを話し合えるといいですね。
老人ホーム選びは、入所の条件や費用面などを調べたり、施設に直接問い合わせたり、ご家族にとって大きな負担となります。
そんなときは、介護施設をサポートしてくれるサイトを利用することで問題解決ができます。静岡老人ホーム紹介タウンYAYAでは、利用者様のニーズに合わせた施設のご提案が可能です。YAYAに相談すれば最適な老人ホームがスムーズに見つかり、ご家族の負担を軽減することでしょう。
また、YAYAの相談員は介護福祉士などの専門資格を保有するプロフェッショナルばかりです。ぜひ安心してご相談ください。
参考文献
[1]一般社団法人日本透析医学会>2022年度末の慢性透析患者に関する集計 第1章 2022年慢性透析療法の現況>P477
[2]系統看護学講座専門分野Ⅱ 腎・泌尿器 成人看護学8:2018年,株式会社医学書院,河瀬博史,第5章疾病の理解 C糸球体腎炎 ③慢性糸球体腎炎,P133
[3]一般社団法人日本腎臓学会>腎不全 治療選択とその実際(2023年版)>P7
[4]一般社団法人日本透析医学会>2022年度末の慢性透析患者に関する集計 第1章 2022年慢性透析療法の動態>P482
[5]一般社団法人日本透析医学会>2022年度末の慢性透析患者に関する集計 第1章 2022年慢性透析療法の動態>P487
[6]医療法人社団東山会 調布東山病院>年間いくら?人工透析にかかる費用と助成制度
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